two bullets 新戦力

 俺達は建物の中に入った。外観がでかいだけに中も広々とした空間が広がっている。高くて広い空間に天井窓から陽光が降り注ぎ、白いフロアに清潔感が醸成されていた。

「おーい、こっちこっち」

 臼井が大きく手を振って呼んでいた。鮮やかなグリーンの椅子が囲うテーブルに、一条さんと滝本さんもいる。

「良かったぁ。来てくれてありがとう椎堂くん」

 罪悪感すら感じていない満面の笑みが憎たらしい。

「あんなことされたら来ないわけにいかないだろ」

 俺はこの合宿に参加しないはずだった。俺はチームに入ってないし、大会にも出ない。合宿に参加するメリットがないのだ。

 このチームにはただの仲間集めの協力者という立場。それをこの合宿に誘ってきた臼井に話している。その時は電話越しに納得してくれたと思っていたが、ここまで強硬な手段を使ってくるとは夢にも思わず、俺はまんまとここまで連れ去られている。


「もう口頭で伝えた人は伝えたけど、一応紹介しておくね」

 俺への謝罪を簡単に済ませた臼井は、新たなにチームへ加入した選手の紹介を始める。

「こちらが梁間良平くん。ショットガンやサブマシンガンを多用しているわ」

「よろしく」

 筋肉質な体が頼もしさを感じさせる。この男が俺の腕を固め、ワゴン車の中に放り込んだ実行犯だ。

「昨日は悪かったな。これでもあんたのことは尊敬してんだ。失礼なことをした分、ちゃんとチームに還元するぜ」

 チームじゃなくて俺に還元しろよ……。

「でも残念だな。あんたがチームに入ってるって聞いたから、このチームで大会に参加するって決めたのに。なんか騙された気分だ」

「ごめんごめん。でも、ちゃんとこうしてチームに同行してくれてるんだからいいでしょ?」

 臼井は両手を合わせて謝る。

「同行じゃなくて強制送還だけどな」

「夏希ちゃん、今フォローに回ってるんだから水差さないの!」

 臼井は北原の告げ口を止める。

「まあでも、あんたにこうして会えたんだ。色々と教えてもらいたい」

「俺はハンドガンが主体だし、教えられるのはサブマシンガンくらいだ。それに君の方が俺より知ってるんじゃないか?」

「違う違う。武器の使い方じゃなくて、ゲーム中の状況判断の仕方やスマートな身のこなしなんかを教えてもらいたいんだよ。あんたのゲームは最高にクールだからな!」

 なんでこんなに好かれてるんだ。俺は梁間のテンションに戸惑う。


「じゃあ次ね。こちらが新内聡くん。ボルトアクションのライフルとハンドガンを主に使用しているわ」

「ハンドガンとボルトアクションって、接近型と遠距離型ですよね。両方の動きをできるってことですか?」

「その通り! 彼はダブルファンクションができるの。これはチームにとって強みになる」

 臼井はとても嬉しそうに話す。これで人数面での懸念はなくなったわけだし、当然な反応だとは思うが、その中に俺まで加わっていないか気になる。しかし、聞いて勝手に入れられていたらいたで、臼井にみっともなくキレてしまいそうな自分が怖い。


「みなさんのお力になれるよう頑張ります」

 新内は笑ってそう抱負を述べた。新内は美形ではあるが、どこかミステリアスな印象を受ける。少し近づきがたいな。

「えっと私達の方で紹介してないのは、一条君と滝本さん」

 臼井は一条さんと滝本さんを手で差す。

「「よろしくお願いします」」

 臼井に紹介された2人は同時に挨拶する。

「よろしく」

「よろしくお願いします」

「じゃ、簡単に紹介も終わったし、みんな着替えてきて」

「はい」

「じゃ、俺はここで待っておく」

「うん。了解」

 俺は席に座って待つ。

 昨日は何かとバタバタしたせいでここまで来るだけで疲れてしまった。

 俺は椅子の背にもたれかかって大きな窓から見える晴れ晴れとした空を眺める。澄んだ青空は不思議と寒さを感じさせない。疲労感がどっと肩に下りて、睡魔が俺の瞼が閉じていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る