23.憂鬱祭り


 お祭りの前日。放課後、さやかちゃん・南ちゃん・なつかちゃんと明日に向けての心構えの話。


「デートには気合を入れて行くべし」

「しかし、余裕ある感じで」

「頑張ってー」


 駄目だ、全然余裕ない。


 そんな感じで十分程度、話し合いをした。やっぱり、みんな自分のことじゃないけど、いや自分のことじゃないからこそ楽しみらしい。


「あ、くぅちゃん。二日目なら夕方から、うちもお祭り行けそうだから一緒に行ってくれる?」

「もちろんだよー」


 さやかちゃんと約束をし、南ちゃんなつかちゃんと別れ学校を出る。


 そこに面倒そうな顔をした一条先輩と、にこにこ笑顔の光先輩がいた。


「なんで俺が休みの日にこんなことを……」

「えー、いいじゃん。楽しめばいいよ。俺はやらないけど!」


 私達の姿を発見した光先輩はにこにこしながら声をかけてきた。


「こんにちは、明日からお祭りだねぇ、こんな顔してる陽はそのお祭りの手伝いらしいよ」


 なるほど、それでこの何とも言えない顔なんだ。


「あぁ、二人は真っすぐ帰れそうでいいなぁ。俺も帰りたいなぁ、帰っちゃおうかなぁ」

「陽先輩、随分嫌そうですね」


 さやかちゃんがそう聞いた。


「そう。準備はさせられるのに、自分は行って楽しめない可能性があるって考えたら、こうもなるよ」

「それが面白いよねぇ!」


 先輩達の対比がすごい。


「ほら、陽。早く行かないと怒られるよ。行こう行こう」

「あぁ、うん……」


 光先輩に背中を押されて進む一条先輩。ちょっと拒み気味。


「それじゃあ、二人ともまたね。猫ちゃんは年上男性とのデート楽しんでね」


 光先輩はまたそれを言うのか。


「え、猫宮、え⁉」


 驚いている一条先輩をそのまま押していく光先輩。


 私達は手を振って見送った。


 先輩達がいなくなった後、さやかちゃんは私に聞いた。


「宇佐見先輩にも相談したの?」

「何も言ってないのになぜかバレてたんだよね」

「宇佐見先輩って、何でも知ってそうな雰囲気だしてるよね」


 こんな感じで前日を終えたのであった。



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