第24話 対面 その1

柵木重則は新宿にある喫茶店で、昔からお世話になっている鍛治田総務部長が来るのを待っていた。


柵木がオレンジジュースを飲みながら入り口付近を眺めていると、鍛治田が少し急いだ様子で店内に入って来た。


「ごめんね、待たしちゃって」


鍛治田はすぐに柵木のいるテーブルまでやって来て、口を開いた。


「いえ。こちらこそ突然連絡したにもかかわらず、来てくれてありがとうございます」


柵木は一度立ち上がり、鍛治田を出迎えた。


「ニュースを見てからずっと心配していたんだよ。もしかしたら逮捕されたんじゃないかと思って」


鍛治田は柵木と向かい合う形で腰を下ろすと、すぐに闇カジノが摘発されたことを話し始めた。


「あの日はビルのまわりに警察官が複数いることに気がついたんで、ビルには入らずそのままバイトを休んだんです」


「そうか。それで捕まらなかったのか」


二人の前に店員がメニュー表を持ってやって来た。


鍛治田はコーラを注文した。


「その後は、どうしていたの?」


店員がテーブルから離れたのを見て、鍛治田が再び口を開いた。


「スマートフォンの電源を切って、ずっと家にいました。宇留嶋先生の指示で」


「えっ?」


「実はあの日、僕は宇留嶋先生に付き添われてオーナーにバイトを辞めると伝える予定だったんです。警察の存在に気付けたのも、先生が以前会ったことのある警官の顔を覚えていたからなんです」


「重則君が宇留嶋先生に頼んだの?」


「いえ。母が探偵を雇って僕を調べていたんです。それで僕のやっていたことがバレて、宇留嶋先生がやってきたんです」


「そうだったのか」


鍛治田はそう言いながら、ちょっと困った表情を浮かべた。


「じゃあ、この件はもうお父さんも知っているんだね」


「いえ。父はまだ知りません。その前に鍛治田さんから話を聞いておきたいと探偵さんがおっしゃっているので」


柵木がそう言うと、隣のテーブルにいた上井と真石早希が飲み物を持って立ち上がり、こちらのテーブルにやって来た。


「初めまして。日沖探偵事務所の上井と申します。こちらは、同僚の真石です」


「どうも。となり、失礼します」


真石早希はそう言って、鍛治田の隣に座った。


これで鍛治田は壁と彼女に閉じ込められ、出られない形になった。


「鍛治田部長。今日はぜひお聞きしたいことがございます」


上井は楽しそうな表情を浮かべながら鍛治田に言った。

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