詫び石15つ目【クエスト発生:ドラゴンを撃破せよ】

「ふう、ここか」



 ギルドから歩くこと約1時間。

 辿り着いたのは、先にどこまでも闇の広がる大きな洞窟だった。


 抱っこしていたルロちゃんとおんぶしていたアイルちゃんをそれぞれ地面におろすと、彼女たちは驚いた顔で入り口を見上げる。



「で、でかっ……」

「真っ暗ですね……」

「よし。はぐれると危ないから、皆で手を繋ごう」



 俺がそう提案すると、アイルちゃんが「勝手に仕切らないで!」と怒るがしっかり手を握ってくるあたりが本当に可愛い。


 ルロちゃんも慌てた様子で俺たちの空いた片手をそれぞれ握ってくるが、これじゃあただ輪になって3人楽しくキャッキャウフフしてるだけになるね。

 ドジっ子で可愛いな。



「何かあった時のために俺は片手を空けておきたい。ルロちゃんはアイルちゃんと手を繋いでくれるかな?」

「わかりました!」

「いい? あくまでも隊長は私だからね! しっかりついて来てよ! 一瞬でも離れたら許さないから!!」

「わかってる。絶対離れないよ」

「さすがです隊長! 頼りになります!」






 真っ暗な洞窟の中を、俺の発動した光魔法で照らしつつさらに歩くこと約5分――……何やら開けた場所に辿り着いた。


 ピチョンと水の滴る音がやけに大きく響き、アイルちゃんは俺の背中にしがみついて震えている。



「アイルちゃん、大丈夫……? 少し休憩するか?」

「にゃっ、なんか、ヤバい気配がする……っ! 何かいる……!!」

「何か……?」



 言われてみれば変な匂いがするようなしないような……。

 ルロちゃんは何か気づいた? と聞くために彼女を見た時、



「グギュルルルルッ……」



 地鳴りと共に大きな音が反響し鼓膜を揺らした。



「ルロちゃん、お腹すいた? からあげならあるけど食べる?」

「ちち、ちっ、違います……っ! 私のお腹の音じゃありません……っ!」

「だよね! こんな大きい音するわけないもんね! じゃあ、アイルちゃん。お腹がす」

「違うわよバカ! 私もこんなに大きな音しな……じゃなくて! 目の前!!」

「目の前?」



 瞬間――耳をつんざくような咆哮が響き、洞窟内が青白い光に照らされる。

 すると、目の前に体長1700mはあるだろう巨大なドラゴンが出現し、長い尻尾で地面を一度叩きつけると血走った目で俺たちを見下ろした。



「グギュルルルルッ!!」



 ドラゴンが出現しました。

 クエスト:洞窟の主を撃破せよが発生しました。



「腹の音、でか……」

「鳴き声よ鳴き声!!」

「ひーっ!!」



 背中にしがみついてくる2人が可愛い……とか浸っている暇はない。

 俺が構えるよりも早く、ドラゴンは後ろ足で巨体を持ち上げ、前足で俺たちを薙ぎ払うようなポーズをとった。



「2人とも!! 俺から離れないで!!」



 彼女達は俺が命に変えても守る……!!


 ……と、かっこよくキメようとしたのに、ドラゴンはピタリと動きを止めたまま動かない。



「……?」



 いや、ドラゴンだけじゃない。

 首だけで振り返れば、アイルちゃんもルロちゃんも動きが止まっている。


 そして俺は理解した。



「こんな時にラグくならないで……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る