第3話 補給物資、大炎上 赤ちゃんなんか楽しそう


 炎上する輸送船の前で棒立ちになる。無人だから人命救助は考えなくて良い。


「やばいなぁ、これ。熱い!」


 周囲にまで熱波が広がって熱い。少年は車の荷台からライフルと黒いケースを取り出す。


「これ使うの初めてなんだよなぁ、買っておいてよかった」


 ケースからグレネードランチャーを取り出してライフルに付ける。そして2発、消火用CO2弾を持って炎上する輸送船に近づく


「これで消えてくれると良いんだけどな」


 ライフルを構えてランチャーの引き金を引く。シュポン!と軽快な音が鳴って消火弾が飛んでいく。2発目も装填、そして発射。火が弱まっていく。

 ふと赤ちゃんの事が見るとケタケタと笑っていた。可愛いけど笑える状況ではない。


「よし次はカーゴの回収だ。できるだけ回収するぞ」


 ライフルを置いて今度はライフジャケットとフルフェイスの酸素マスクを装着する。赤ちゃんにマスク姿で手を振ったらウケた。いや、笑える状況じゃないんだけどね。腰にロップを巻いて、車のロープ巻上機と繋ぐ。


「じゃあ行ってくるよ」


 波に揉まれながら、浮いているカーゴを目指して泳ぐ。無事掴めたカーゴに金具を引っ掛けて、遠隔操作で車のロープ巻上機を使う。泳がずとも海岸に向けて引っ張られていく。着いたらカーゴを放り出してまた海に向かう。今度は小さなカーゴを二つを回収。また引っ張られて海岸に戻る。


「はぁはぁ…もう無理だな、回収できたのはこの三つだけか、少し休もう」


 少年は輸送船の会社に連絡を入れながら体を休める。スポンサー契約があるから動画にはしないけど、これはだいぶ困った。


「とりあえず回収できた荷物を確認しようか?」


「バブ!」


「君のおもちゃ無事だといいね」


 まずは一番大きいカーゴから確認する。中身はバイクの部品だった。車体は自分で3Dプリンターで印刷して、複雑なモーターとか制御盤は組み込む方式になってる。今は余裕がないけど時間ができたら組み立てよう。次は小さい方の一つ目。これは冷蔵機能がついてる特殊ケースみたいだ。開けるとプシューって空気の抜ける音がした。冷気で冷んやりする。中身はワクチンと注射器がセットになった物が4本。後で打たないといけない。

 最後の一個を開ける。中身は赤ちゃんのおもちゃだった。積み木とぬいぐるみ。ぶっちゃけると食料であって欲しかった。この三つ以外は海に沈んだか、船と一緒に吹き飛んだかだ。


「困ったね。ご飯がないよ。当面は大丈夫だけどちょっとやばいかな」


 よくよく考えたら積み木もその辺の木を切って作ればよかったし、ぬいぐるみは3Dプリンターの軟性モードで印刷すればよかった。

 でも赤ちゃんが来ると分かって、テンション上がって注文してしまった。まぁ仕方ないね。初めての子どもを持ったパパみたいな行動だ。


「初日からキツいね。でもなんとかするからね。大丈夫」


 とりあえず、食料の確保を目指さなければ。赤ちゃんはぬいぐるみを抱きしめて「あう!」って言ってる。嬉しそうだ。少年は疲れながらも微笑みかけた。

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