#03 登校中の事件

 目の前の男は、この人通りが少なく、あまり声も響きにくい林と湖の間の小道で話しかけてきた。指には、【赤い指輪】をつけて、【マスク】をして、【黒フード】をかぶって話しかけてきた。

 完全に不審者だ。


「は?なに言ってるんですか...?」

「いやいや。とぼけないでよ。俺の【能力者かどうか判断できる能力】では君は能力者だとわかっているからね…。」


 なるほど。そんな能力があっても不思議じゃないか。

 でも。そんな能力はこの先必要になる気がする。だけど。能力を真似する。今回は運良く一発成功で、模倣ができた。

 早速、能力を使おうとすると…。


「いま...能力使っただろ!俺の目は誤魔化せないぞ!!」


 うん??? 本当にわからなくなった。相手の話が終わった後、相手の頭の上に【F】とでた。どうして?

 とりあえずなので、相手を喋らせるか。


「...じゃ、俺の能力は何かわかるんだよな?」

「当たり前だろう?」【F】

「じゃあ俺の能力を当ててみろよ。」

「時空関係だろう?」【N】

「いいや。」

「じゃあ、言霊かい?」【N】

「...あぁ。そうだよ。」

「違うだろ!お前の能力はもっと他のものだ!」【T】


 なるほど。多分、嘘か誠か。みたいな能力だろう。英語の宿題でやったことがある。英語の長文を読んだ後、一行くらいの説明を読んで、本文に即していたら【T】を、即していなかったら【F】を。みたいなやつだ。


「ああ。嘘だよ。そして俺は能力者ではない。だが、他の人にはないような才能があるんだ。」

「...?」【T】


 予想通りだ。自分の発言に嘘や本当を混ぜ込むことで、混乱できた。つまり…こいつの能力は、【T or F《嘘か誠か判断する能力》】といったところだろう。そして、必ず相手の発言の一つに本当TFかがついて、本当か嘘かわかるようになっている。


 だが、嘘と本当が混ざっている発言は、混乱する様になっている...気がする。


「じゃ、もういいですか?これから学校なので。」

「いやいや、待ってくれ!」【N】

「...なんですか?」

「君は絶対強い能力を持っているだろう?」【F】

「...なんでそう思うんですか?」

「能力を持っているのに、意気揚々としてない所とか、驕りがないとか...。」【T】

「...そう見えるの?」

「ああ。だから、俺らの組織に入って欲しいいんだ。」【T】


 やはり、能力者は必ず組織に入るというしきたりでもあるのだろうか?だったら、能力者の存在を俺が知らないという点にも繋がる。組織が一般社会から隠していることで俺たち一般人の目につかないようになっている……のか?


「今から、組織に行くのは...。学校もあるし...。」

「じゃ、学校が終わってから来てくれ。」【N】


 そう言って、地図を渡してきた。そして、遠ざかっていった。


「何だったんだ一体……」


 その地図には組織の名前が載っていた。


「『フラッター(FT)』だって。ねぇ。よくわかんないや。」


 そうこぼし、地図を丸め、バックに入れる。幸い、電車通学なので、周りに同じ年代はいなかった。だが...


「やば、電車もうくるじゃん。」


 次の電車が走るまで3分もない。全力疾走。電車まで約150m。急げばまだ間に合う。


「あぶねー!」


 なんとかギリギリ間に合った。そこには同じ学校に向かう人たちが、たくさん乗っていた。その中には...


「おーい。だいじょうぶ?」


 と。声をかけてくれた女の子がいた。

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