第2話 エルフの村に案内されました

「あ、あれ? ここは……」


知らない天井……というより、この場合は知らない青空と表現した方が正しいだろう。


そして何より……


「あの、大丈夫ですか?」


心配そうな表情しながら僕に訊ねる金糸雀色のロングヘアーの女の子が視界に入った。


とりあえず僕はゆっくりと起き上がり辺りを見渡す。

あの神様、何処かの島の海岸に僕を飛ばしたな……転生特典のお陰もあってか、制服は濡れてなかった。


「うん。大丈夫……です。怪我とかもないし……えっと……」


目の前にいる女の子にそう答える僕。


金糸雀色のロングヘアーに、やや吊り目で瞳の色は綺麗な緑色だった。


もしかして、この子が僕が異世界に来て初めて会った人なんじゃないかなと思った。


「私はリディ。リディ・フォールヴァイン。貴方の名前は?」

「僕の名前は水無月燕。燕でいいよ」


お互いに自己紹介をする。

普通なら警戒されてもおかしくないんだけど……今は気にしない事にしよう。


「それじゃあ……その、ツバメって呼んでもいいかしら?」

「うん。構わないけど……?」

「そ、その……ちゃ、ちゃん付けは恥ずかしいから、呼び捨てで呼んでほしいんだけど……」


初対面で同年代の女の子だと思われる彼女を、ちゃん付けで呼ぼうとしたら、恥ずかしいから呼び捨てでいいと言われた。


…個人的に同年代の女の子には、ちゃん付けの方が楽なんだけど。


「と、とりあえず一緒に村に来てよ。お爺ちゃんにツバメの事を話さないといけないし」

「……村?」

「うん! ちょうど朝ご飯もできてると思うから、一緒に食べよ?」


そんなこんなで僕はリディが住んでいるという村に案内されるのであった。





森を歩いて数分。リディの案内で村に到着した僕は彼女の家にお邪魔していた。


「ふむ……なるほどのぅ。異世界から来たと」

「えっ? あの……僕が言うのもなんですが、胡散臭い話だなって思わないんですか?」

「む? ほっほ。その話か。異世界人なら随分と昔じゃが、この世界に来た事があるらしいから聞いても疑いはせんよ」


僕と話してる人物、ブラドさんは自身の髭を軽く撫でながらそう言った。


「それを言うなら、お主もワシらを見てもあまり驚いてはおらんじゃろう」


笑いながら僕にそう言うブラドさん。

そう。僕が案内された村は、エルフ達が住んでいた村だったのだ。


普通の人が異世界に迷い込んだら、戸惑うに違いない。


そう。なら。


「実は僕の知り合いにエルフの人達がいたもので正直あんまり……けど僕の世界だと国家機密扱いなんです。単純に僕の家系がアレだっていう事もあるんですけど」

「ほう。まさか異世界にもエルフ族が存在しているとは……」

「普通の異世界人だったら、エルフは空想上の存在だとか言いますから」


登校中や学校帰りに国家の人間が僕を襲ってきて、返り討ちにしたのが懐かしいなぁ……


「えっと、ツバメの世界に……その……ハーフエルフって居るの?」


そんな事を考えてると、リディが少し言いにくそうに僕に訊いてきた。


「ハーフエルフ? 普通にエルフのみんなと仲良く共存してるよ? それがどうかしたの?」

「その、ツバメは……ハーフエルフは嫌い?」

「僕はそういうハーフエルフに対しての差別とかはないよ? なんだったら元の世界でエルフの友達とハーフエルフの友達も居た訳だし」


そう答えるとリディは、一瞬だけ驚いてたが直ぐに安心したように良かったと呟いていた。


「実はこの子……リディは村で唯一のなの」


僕が首を傾げると、台所に居たエルフの女性……リアスさんがそう言った。


目を凝らしてよく見ると、リディの耳は人間の耳より少し尖っただけだった。逆にブラドさんとリアスさんは耳が長い。


「だから……娘と仲良くしてあげてね?」

「あ、はい。もちろんです……ていうか娘? 妹じゃなく?」

「あら。リディは血の繋がった実の娘よ?」

「……すみません、リアスさんの事をリディのお姉さんかと思ってました」

「あらあら♪ お姉さんだなんて♪」


だって正直、姉妹かと思ってしまうくらい綺麗な人だし。僕の周りの女性はみんなこういう人が多い気がする。


それを言ったら、僕の両親やお爺ちゃんとお婆ちゃんもそうなんだけど。


「さ♪ 朝ご飯にしましょ♪」

「母さん、なんかいつもより機嫌よくない? ねぇ……お爺ちゃんもそう思うでしょ?」

「ほっほほ♪ あんなに機嫌がいいリアスを見てると、死んだ婆さんを思い出すのう。若い頃を思い出すわい」

「……ダメだ。私の話、全然聞いてないし」


そんなこんなで、フォールヴァイン家の朝ご飯を僕も一緒に頂くのであった。

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