平成二十二年

三月 あきづきの独り言

 猫はいい。気まぐれでフワフワで、たまにどうしようもないくらいあざとくて妖艶だ。奴らは人を堕落させるためにこの世界に産み落とされたのではないかというほどに愛しい。ああ、お前は今日も美しい。そう可愛がっている黒猫に手を伸ばした時だった。

「【あきづき】!!すまん、こいつ見ててくれ!!」

聞き慣れたDDG【こんごう】の声が響く。要件は間違いなくSH60-jの【フナダマ】のことであろう。

「そんなのDDHに任せろよ!」

毒づいた所で誰も助けてくれないのがこの世の常だ。そもそも【航空機】の面倒を【こんごう】が見ていること自体が異常なのである。本人たちだって望んで築いた関係じゃない上にお互いにストレスになっているので、これまた救いがない。せめて一分でも一秒でも早くあの二人のしがらみが解けることを願っている。

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