ソロマニア

星埜銀杏

前編、あそこにいこう

 …――ソロマニアな俺の人生総括はソロ旅で決まりだ。


 つまり、


 人生での最後のソロ活動はソロ旅と心に決めたわけだ。


 ソロ旅とは、つまり一人旅だな。


 行き先も決めている。


 色々、悩んだが、その果てに、ここしかないと決めた。


 そんなソロマニアで一匹狼な俺は今まで、ありとあらゆるソロ活動を行ってきた。


 ソロと付くものは、ほぼ網羅してきた。ソロでカラオケ、ソロでの焼き肉、ギターのソロパート演奏(※ギターのソロ演奏とは、もちろん一人でソロパートだけを演奏したわけだ)などなど、思いつく限りのソロ活動を、たった一人でやってきた。


 そうそう。結婚もしていないぞ。


 それも、またソロ活動なのだといえばそうとも言える。


 ただし、


 ソロ旅だけはした事がない。単に機会がなかったのだ。


 ソロ旅をした事がないから言うまでもないのだが、ソロキャンプもした事がない。


 だから、ソロ旅が実現したならば、同時にソロキャンプも体験したい。そんな人生で最後のソロを締めくくるソロ旅。さて、では、一体、どこに行くのかという話になるのだが、キャンプもできるような自然豊かな場所でなければならない。


 遊園地や有名史跡などが在る場所は、極力、避けたい。


 行楽地では、宿泊が、キャンプと言うよりもホテルや旅館となってしまうからだ。


 それではダメなのだ。


 何故ならばソロキャンプも体験せねばならないからだ。


 そして、


 有名史跡などが在る場所は、観光地過ぎて、人が多い。


 せっかくのソロ旅が台無しになってしまう。だからこそ、自然が豊かでありながら、かつ有名にも拘わらず人が少ない穴場こそ最適解。そうやって候補地を色々あげてメモ帳に書き込む。人生で最後のソロ活動であるからこそ慎重になる。


 いく百もの候補地を書き出して、あれも違う、これも違う、と頭を悩ませてみる。


 ううん?


 なかなか、望む、絶好のポイントへとたどり着けない。


 そして缶ビールのステイオンタブを開けて一息入れる。


 シュワシュワとした弾けるような白い泡が飲み口から溢れてきて、慌ててすする。


 喉を鳴らして缶ビールを愉しむ。


 PCをつけてからソロ旅にうってつけの場所が、どこかにないかと検索してみる。


 やはり、遊園地などの行楽地、観光地などが羅列される。そんな場所ではダメなんだよなと後ろ頭をかいて独りごちる。マウスから手を離す。天井で光をたたえる古ぼけた蛍光灯を見つめる。じじっと一瞬だけ明滅してから俺に応える。静かに。


 そうか。


 と、俺の脳裏へと名案が浮かぶ。

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