汚い猫耳の奴隷を押し付けられたので気晴らしに虐待することにした

永遠 虗

虐待…?

前書き

この話のみ猫耳ちゃん視点です。


***


「ちっ。『死の黒猫』…これで三度目だぞ。」


他人事のように感じるようになったのはいつからだろうか。感情に膜を隔てたように、体と心が乖離したと感じるようになったのはいつからだろうか。


明るく笑いが絶えなかった家庭も、商人による詐欺により多大な借金を背負い、幼いながらもあの二人の仲睦まじい関係を壊したくなくて、奴隷になることを望んだ。


後悔なんてしてない。結局あの二人も奴隷になったから。

結局同じ運命を辿る。


私の一人目のご主人様は悲鳴がお好きな方で、鞭打ちや死なない程度の拷問器具を使用したり、開発途中の劇薬を肌に振りかけたりするのが私に対する扱いだった。


そのご主人様は暗殺された。


二人目のご主人様もやはり悲鳴がお好きな方で、特に嬌声が好きだという。所謂快楽拷問と呼ばれる物を沢山施したが、途中から何も反応を示さなくなって飽きたのか、奴隷契約を解除。


その後に屋敷が爆発して死亡。


今回で三人目となる。毎度おなじみの奴隷商人の馬車に揺られながら、また薄暗い牢屋へと入れられ、新しいご主人様との出会いを果たすんだろう。


「言っとくけどな、お前を買った奴らが二人とも死んでるんだ。誰もお前なんか買いはしねぇ。破棄するにもカネがかかるから、オレが勝手に見繕ったやつに引き取らせる。文句は言わせねーよ?」


「…はい。」


そもそも奴隷である私に拒否権などない。ただそこにある現実を受け入れるしかないのだ。現実逃避なんて、随分か前にやり方など忘れてしまった。


…商人様との馬車に揺られる旅。虐待はされず、それなのに食事も最低限与えられる。


何故私なんかにここまでしてくれるのだろうか。


何日かあと、街の外れにある大きな屋敷の前で降ろされた。


商人様がベルを鳴らす。


「ククク…どうした?」


「…昔の恩だ。こいつを引き取って欲しい。」


「おいおい、俺にも生活ってもんがあるんだぜ?そもそも引き取って俺になんのメリットがあるんだ?しかも恩人に頼むような事じゃあ…」


出てきたのは長身痩躯の黒髪の男性。一般的に言えば整った顔立ちをしている。月明かりに照らされている彼はどこか幻想的だった。


顔を顰めながら私を見て、少し悩む素振りを見せたあと…


「いや…引き取ろう。こいつは中々虐待のしがいがあるぜ…?ククク…。」


…ああ。この人もか。


落胆?絶望?いや…虚無。確かに痛いのは嫌だ。でも、それだけ。


「…頼んだよ。」


そう言って商人様は行ってしまった。


「ククク…俺の虐待はされたことないような酷いことされちまうぜ?」


「…お手柔らかにお願いします、ご主人様。」


ご主人様が屋敷の中に入っていくので、その後を追っていく。


「まずはそうだな…お前は今とても汚い。お前は俺の奴隷だ。物だ。そこまではいいな?」


「…はい。」


「俺は手に入れたもの、周りにあるものは綺麗にしないと気がすまねぇんだよ!これから拷問部屋に行くぞ!着いてこい!」


「…はい、ご主人様。」


綺麗にする拷問?この汚い髪を毟られ、肌は削られるんだろうか。


「ククク…俺は先に部屋に入って向こう向いてるからなぁ。服を脱いだら中にある椅子に俺に背を向けて座れよ?」


勿論拒否することなどできない。


「…わかりました。」


服を脱ぐなんて慣れている。薄汚れてくすんだ首の位置に穴を開けただけのボロ布を、すっと脱ぐ。


「…えっと、ご主人様?」


「なんだ?座ったのか?」


「いえ、まだです…その失礼ですが、ここは…」


「熱々!熱湯拷問部屋だが?入口に書いてあっただろう?」


「…そうですか。」


奴隷に落とされる前に入っていた「風呂」に酷似していた。勿論大きさなんて比じゃないが。


「ククク、虐待開始だぜ?お前はこの熱々!熱湯拷問に耐えられるかな?」


一々フルで言うんですね。とは言えなかった。


お湯が私の頭から掛かる。『熱々!』と言うには無理があり、ただひたすらに暖かかった。


ご主人様は何度も浴槽から桶でお湯を掬い、私の髪を手で優しく梳きながら、お湯を流していった。


「ククク…どうだ?この熱々!熱湯拷問は?耐え難いだろう!シャワーのようにたっぷり水が使えるわけでもなく、水圧もない!そして、まだ安心するんじゃあないぞ?」


そう言ってご主人様の手の先に視線を向けると、デフォルメされた熊が可愛らしい文字で『しゃんぷー』と書かれた看板を持っている容器を手に取った。


「ククク…そのくすんだ髪の毛を熱々!熱湯拷問した後の薬液は染みるぜ?」


そう言ってご主人様は手でしゃんぷーを手で広げ、私の髪をわしゃわしゃと洗っていった。


「おい!動くな!お前のケモ耳にシャンプーが入るだろうが!」


とか


「クソ!この汚れ中々取れねぇ…一旦流して仕切り直しだ!」


とか言っていた。


三回ほどしゃんぷーとやらを流したあと、今度は何やら肌触りのいい布(ご主人様曰く『ごしごしたおる』と言うらしい)を使い、壊れ物を扱うかのように丁寧に体を洗っていった。(ご主人様は終始虐待だ、と言っていた)


「ふぅ…よし。ククク、ここでの虐待はここまでにしとこう…。まだ今日の虐待は終わってないからな。覚悟しておけよ。」


そう言ってご主人様は脱衣所からさっさと出ていってしまった。


去り際に渡されたタオルを見る。これで体をしっかり拭けと言って渡されたものだ。目の前の棚には下着類と猫耳がしっかり入るようなフード付きのピンクの寝巻きだった。


ご主人様が言っていた『にゃんこぱじゃま』を着たは言いものの、タオルでは私の長い髪は乾かしきれなかったため、フードを被るのは断念した。


「おい!猫耳!こっちに来い!」


ご主人様が呼んでいるので、声の聞こえる方向へと歩みを進めた。


「…ここに座れ。」


そう言って指さしたのはご主人様の前にある椅子。


意図が読めないが座ることにする。


「ククク…言ったろ?虐待は終わってないんだぜ?爆音!熱風拷問だ!」


そう言ってご主人様はなんかの機械を手に持つ。爆音と言うくらいなのだからうるさいのだろう。


そう思いながらも少し椅子の上で待っていると、少し控えめなヒューンという音がしたと思ったら、少し暖かい風が私の髪に当たった。


「ククク…獣人は音に敏感だからな…。耳に優しいドライヤーを選んでやったぜ?」


そう言って私の髪を撫でる手つきが徐々に揺するように動き、私はしばらくされるがままだった。


…この人は、本気で虐待してると思っているのだろうか。

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