第2話






心臓の疾患が見つかったのは中学に上がってすぐ。体育の授業で倒れたのがきっかけだった。

母は泣いた。父も泣いた。

祖母も祖父も、弟も泣いた。


皆が伝やお金を払っても治療法が見つからず。


私は泣く泣くコールドスリープし、医療の発展を待つために眠りについた筈だ。


それが、いったい、何が。



私に、世界に何が起こったのだろうか。



『あ、起きましたね。これ食べれますか?』


『……あの、状況の説明を…』


『申し訳ありませんが私にその権限はありません』


次に目が覚めた時。私は着物を着させられていた。濃い紺色に鶴の大きな刺繍が施されたとても美しい着物だ。

眠っていた私にメイク?をしていたのかパフを私の顔から話した金髪のお姉さんは笑顔で見たことの無い食事の乗ったプレートを差し出してきた。


身体を起こしてそれを受け取るも、彼女はニコニコ笑って私の後ろに回って髪を弄り出すだけで説明は一切してくれないようだ。



寝起きはあまり食が進まないんだけれども。歯磨きもしたいし顔も洗いたい……いやメイクをされていたようだからそれは良いとしても身支度を整えたいのだけれども。


それらは許されそうになかったので、仕方なしに食事をとる。

一口サイズのパンのようなものを食べると小麦の良い香りと甘い風味が口の中に広がった。見慣れない食べ物だけど出された食事は薄めの味付けでとても美味しい。


「ご馳走様でした」


『ゴチソ、サワァマァ?』


『お食事美味しかったですという意味です』


『そうですか、それは良かったです』


優しい声音だったけれどそれ以上の会話もなく女性は淡々と私を飾り付けていく。

髪を整えてアイメイクを整え。


ーーーーー薄々気がついていた。商品をより良く売るために磨かれているようなことには。


それでも現状が分からないままでは何も出来ず。


恐らく私を飾り付けるのが終わったのだろう。女性が小さな四角い物に何かを言うとシュッと部屋の扉が開いた。




そこには金髪の男性がいた。

彫りの深い、シミひとつない澄んだ青色の瞳の髪をハーフバックにした男性。ベージュのスーツがとても似合う美しい男性。

彼は私を見るなり嬉しそうに破顔した。


『素晴らしい!綺麗な黒髪に、真珠のような肌。若く可愛らしい、キモノも良く似合う!さすがニホン人だ!』


『彼女はhdia@を話すこともできますよお父様』


『そうか!そうか!』


男性の後ろには青い女性。

背筋がすっと冷えていく。



『初めまして私の可愛い黒真珠。今日から私が君のご主人様だよ』


男性はすぐに私が座っているベッドに来て私の横に座り髪をひと房手に取り、愛しそうにそれに口付けした。


こうして私は、事情も状況も把握することなく青い女性により売り飛ばされた。




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