第7話 優秀揃いのグレゴーラクラス、崩壊

〜シィVSノーベンタ〜


「やれやれ……成績三位の俺がこんなカスみたいな奴らを相手にするなんて、こんな馬鹿な話はない」


 ノーベンタはため息を吐きながら、シィの目の前で独り言をつぶやく。


「あら? でしたらグレゴーラ先生の指示をお断りすればよろしいのでは?」


 シィがそう言うと、「チィ、ゴミが、話しかけんじゃねえよ」とノーベンタは舌打ちした。


「それでは、試合開始!」


 審判は叫んだ。


 それに合わせて、シィとノーベンタは同時に魔法を詠唱した。


「中級魔法! サイクロンウインド!」


 シィの手から竜巻が放たれる。


「中級魔法、ストーンウォール」


 ノーベンタとシィを分け隔てるように、岩の壁が地面から現われる。


 そして、シィのサイクロンウインドと激突した。


「そう簡単には破れねえよ」


 ノーベンタは守りの戦いが得意だった。


 ストーンウォールを使用して、相手の攻撃を防ぎきり、最後にスキをついてビッグストーンをぶつける。


 彼の作戦は理にかなっていた。


 がしかし――


「確かに硬い壁、けれども、私の風にはかないませんわ!」


「! なに?!」


 ストーンウォールが削られていた。


 そして削られた破片が風に乗って、ノーベンタの方へ流れていく。


「ぐ……だったら二枚めの壁を! ストーンウォール!」


 さらなる壁があらわれ、破片を防いだ。


 そして段々と風の音が小さくなる。


 サイクロンウインドが消滅したのだろう。


「くだらねえくだらねえくだらねえくだらねえ、こんなやつの試合で二枚もストーンウォールが使わせられるなんて――」


 Gクラス相手に必要以上の力を使う。


 プライドが傷つけられ、ノーベンタの心中はどす黒い感情でいっぱいだった。


「これでチェックメイトですわ!!」


「――は?」


 突然の声に、ノーベンタは我に返った。


 そして、自身の目と耳を疑った。


 なぜなら、シィの声が上から聞こえてきたからだ。


 そして、上を見ると、本当にシィが空を飛んでいたからだ。


「ばっばっばばばばバカな!! 中級魔法フライだと?!」


 中級魔法フライ、中級とは言われているが、魔力コントロールの難しさから、習得難易度の高さは上級以上と言われる魔法だった。


 相手が空にいる以上、壁は役にたたない。


 ノーベンタは急いでビッグストーンの詠唱に入ったが手遅れだった。


「遅いですわ!! サイクロンウインド!!」


「ぎゃああああああああ!!!」


 竜巻が空から放たれ、ノーベンタは渦に巻き込まれ、敗北した。


***


「こりゃどういうことだ! Gクラスが勝ちまくってんじゃん!」


 会場は騒然となる。


 6年1組の圧勝で終わるかと思われたこの対抗戦、しかし、Gクラスの二連勝によって大きく予想を裏切られた。


「Gクラスってこんなにすごい奴らだったのか!?」


「すげえな。ツクモ・イツキってやつが教えただけでこれだけ変われるのか……」


「それに比べて、6年1組は……だっせ!!」


「グレゴーラ、俺たちに対して偉そうな割には、大したことなかったんだな!!」


***


〜グレゴーラ視点〜


「ああああああああーーーーーー!!!! クソクソクソクソクソクソクソクソクソゴミカス共がああああああああああああ!!!!!」


 許せない。何もかもが。


 1敗したときは、1兆歩譲っても、心に余裕はあった。


 なのに何なの、これは、私は悪夢を見てるの?


 2敗、つまり半分も負けた。


 つまり、この先どうあがいても奴らに対して優位に立つことが出来ない。


 そして、私は会場の一番目立つ席――校長が座っているところを見上げる。


 校長は凍りついた目線を、私に向けていた。


 この間まで一緒に笑っていたのが嘘だったみたいに。


「これ以上は……絶対にしくじれない……!」


 10年前の失態を思い出す。


 二度とあんな失敗をしないと誓った。


 私はここで立ち止まるわけには行かない。


 思い描いた理想の世界を作るために……!


「カラズミくぅん、よぉ〜く聞きなさい……」


 第3試合に出るカラズミには絶対に勝ってもらわなくちゃならない。


「は、はい……何でしょう」


 緊張の汗が垂れているカラズミに小さな声で指示した。


「試合が開始したら、魔法を使うフリだけをしなさい」


「え……それはどういう……?」


「観客にばれないように、私が直接魔法を敵に叩き込む」


「は!? そんなのルール違反じゃ――」


「ルールぅ??? 私達グレゴーラクラスのルールはぁ!! 絶対に勝つことでしょう!!! てめえらが役立たず過ぎて信用出来ね―んだよ!!!!」


「ひぃ!! わかりましたぁ!! 従いますから許してください!! グレゴーラ先生ぇ!!」


 そうして、カラズミは泣きべそをかきながら、観客席の前に出た。


***


〜ディアVSカラズミ〜


「……」


「お……お前ら……もう知らないからな……! グレゴーラ先生を怒らせて、タダで済むとは思うなよ!」


「……?」


 カラズミのなにかに怯えたような変な様子に対して、ディアは不思議そうにしていた。


「それでは、試合開始!」


 審判が叫ぶ。


 カラズミは、グレゴーラ先生の指示通り、手を前に突き出し、魔法を詠唱するフリをした。


「ち……中級魔法――」


(いいわよカラズミくん……計画どおりね)


 観客の誰からも見えないようにグレゴーラは詠唱した。


「上級魔法――」


(私レベルの上級魔法なら魔障壁を壊さない程度で、最大最高の痛みを相手に与えられる。かわいいかわいいツクモ先生の生徒――あの銀髪娘を再起不能にしてやるわ……!)


 そうすれば、こちらの圧倒的力を見せつけ、第4試合を棄権に追い込める。


 失墜した信用も取り戻すことが出来、そしてGクラスはまだまだ弱っちいゴミクラスであることを周囲に思い知らせる事ができる。


 完璧なタイミング、理想通りの作戦、うまく行かないはずが無かった。


 がしかし――


「初級魔法ストーンストーンストーンストーンストーンストーンストーンストーンストーン――」


 ディアは超高速でストーンを詠唱した。


 初級魔法について、中級、上級魔法よりも優れている点が実は存在する。


 それは詠唱時間の圧倒的速さだ。


 ディアは手のひら一杯の石を生成して――


「てやあー!」


 長い腕を力いっぱい振り回し、石をカラズミに投げつけた。


 たくさんの石が、カラズミの体中にぶつけられる。


「ぎゃああああああ!!!」


 カラズミは地面に伏して、すぐに起き上がることはなかった。


 決着は一瞬だった。


 その決着した時間は、グレゴーラの魔法の詠唱よりも早く、また、ラクロア魔法学園が始まって以来の歴代最速記録を塗り替えることになった。


「そ……………………そんな…………………………ありえない……………………」


 グレゴーラは、目を見開いたまま、膝から崩れ落ちた。


―――――――――――――――――――


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