魔王辞めて勇者になります

緋彩(Hiiro)

序章 魔王辞めるってよ

第1話 魔王辞めるってよ

魔王……

それは魔族の頂点に立つ王のような存在……

ありとあらゆる国を支配し、自分の物のようにする

悪逆非道の奴の事である……

そんな中今魔王城で魔王「ルシファー」は……


「……あぁぁぁぁ、暇だぁぁぁぁ」


そう、この威厳すら灰になったかの様な奴こそ

かつて、ありとあらゆる国を支配してきた魔王である。


「なぁ、セバスよ……」

「如何なさいましたか?魔王様」


セバス……

魔王ルシファーに仕える執事のような存在

ルシファーの身の回りの生活や後始末をしてくれる

大変優秀な存在なのだ……

多分セバスが居ないと魔王ルシファーはとっくに

存在を消しているだろう


「どうしてここ最近ずっと暇なんだろうな」


そう、この魔王ルシファー……

世界を征服しすぎて何もする事がなく暇をしていたのだ


「……その答えはたったひとつですよ魔王様……」


溜息を零しながらセバスが答えたのだ……


「あっ、溜息ついたなセバス酷いぞ」


溜息を零したことに魔王はツッコミを入れるのだ


「簡単ですよ魔王様……だって」


「魔王様……色々とカンストしてるじゃないですか」


カンスト……

つまり、ゲームで言うところの上限の事だ


「なんだよ、駄目なのかよセバス」

少し不満げに魔王は返した


「いえ、滅相なそんな事は一切ございません」

「ただ……」


セバスが物凄く言いづらそうにしていた


「ただ……なんだよセバス」


早く答えろと言わんばかりの魔王……

ある意味せっかちなのかもしれない


「勇者が討伐どころか魔王様が魔王になって、世界征服してから、治安が悪くなるどころか良くなってるおかげで、人類から慕われてるではありませんか魔王様」


なんと、この魔王ルシファー……

良い奴だったのだ


「だってぇ、世界征服して時分が国を治めれば治安が良くなると思ったんだもん……その結果がぁ、平和に繋がって皆自由に暮らしてるんだもん……」


オネェ口調で魔王ルシファーは返したのだ……

それに対してセバスは


「良い事をして何が不満で暇なのですか魔王様……」

セバスは呆れながら続けてこう言った


「そもそも、魔王様はどうして魔王様になろうと思ったのですか?」


「えっ?どうして魔王になろうと思ったかって?」

そう言うと魔王ルシファーは自慢げに立ち上がり腰に手を当て高らかに言ったのだ


「就職する職業に魔王ってあったからなのだぁ」


自慢げに聴かされたセバスはポカンとしていた

無理もない……

なぜなら魔王は人類がやる就職と同じパターンだったのだから


「だとしたら何故数ある職業の中から魔王を選択なさったのですか?」

普通に考えてこれはおかしい質問だがこう聞くしかないとセバスは思ったのだ


「だってぇ、魔王の時給がそこそこ良かったんだもん、休日休みだったしさぁ」


まさかの魔王ルシファー……

普通の社会人と同じ思考をしていたのだ

なんて現金なヤツなんだろうとセバスは感じた


「の割には下のものに全て任せてたとは流石としか言えませんね魔王様」

なんでこの人を魔王に採用したんだろうと言わんばかりの顔をしているセバス


「でもぉ、面接して採用したのはセバスじゃん」

まるで駄々を捏ねるような様を見せる魔王ルシファー……


「そりゃ、あの時は魔王になってみたいっていう魔王様の言葉を信じて採用したんですよ」


「あぁ、それに関しては感謝してるよセバス……今じゃお金もそこそこ貯まってきたしさ」


「はぁ……」

何度目か忘れたがセバスはまた溜息を零した


「だったら、別の世界を旅しながら魔王様以上に魔王をしている奴を懲らしめる旅に出かけてみては如何でしょう?」


そうそれは普通に考えれば奇妙な提案だが魔王ルシファーは案の定食い付いたのだ


「何それ……面白そうじゃん」

興味津々な魔王ルシファー


「だと思いました……では簡単に説明しますと異世界ゲートを使って別世界に行って勇者になってみては如何でしょうか?」


異世界ゲート……

その名の通り行きたい異世界に連れてってくれる魔法のような魔法なのだ


「勇者か……」

魔王ルシファーは一息置いた

それに対してセバスは流石に不味かったのかと

覚悟しながら待ったのだ


「面白そうじゃん、どうしてもっと早く言ってくれなかったんだセバス」


案の定興味津々……

この魔王大丈夫かと言わんばかりにセバスはそう感じていたのだ


……こうしてなんと前代未聞かもしれない魔王自身が勇者となり様々な世界を旅していく物語が始まったのだ……

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