第43話 無名のダンジョン攻略

寮のすぐ側で発見した洞窟の前にやってきた。

全員フル装備だ。

未来とカレンにも新装備を渡した。

未来はアーチャーなので弓に軽装備となっている。

ちなみに弓は魔弓なので矢は魔力で生成する。


「よし行くぞ! でも、ただの洞穴で野生の熊さんの寝床だったらごめんね。」


若干緊張しつつ中へ侵入した。

何かを越えたような感覚がした。


「外から見たときは真っ暗だったのに中は明るいわね。やはり、自然の洞窟ではないわ。ダンジョン確定よ。」


「それは良かった。正直自信が無かったんだよ。」


「何が出てくるか分からないから警戒して行くわよ。」


「あっ! 俺はダンジョン用のスキル持ってたんだった。ダンジョンと確定したならスキル発動してみるかな。」


【フロア情報】

 場所: 無名のダンジョン 1階層

 フィールド: 洞窟

 探索者: 5名

 宝箱: 0個

 魔物: ダンジョンスライム G 30

     ダンジョンコウモリ G 30

     ゴブリン F- 25

     ウルフ F 20


「このフロアはFランク以下の魔物しかいないからカレンと未来だけで戦ってみて。危ういときは助けるから。それに多少ケガしても3人で治療するから安心して。」


「そこは3人じゃなくプリーストになった私に任せてくださいよ。」>春菜


「そうだね。春菜に任せるよ。カレンは短剣と盾に装備を切り替えて。この狭い洞窟じゃバスターソードは不利だ。未来は常に索敵を忘れないこと。敵の不意打ちに備えること。」


俺は後方から2人の戦いを観察しアドバイスをしている。

ちなみにカレンの装備も俺が作った特別製に変わっている。

暇な愛莉はドロップアイテムを拾い集める係になっていた。


未来は徐々に新しい弓に慣れてきた。

距離があってもあの小さなスライムのコアを撃ち抜けるのは凄い。

職業補正もあるのだろうけど、さすがだ。

1時間ほどでフロア内の魔物が全滅した。


「全滅したから次の階層に降りるよ。」


【フロア情報】

 場所: 無名のダンジョン 2階層

 フィールド: 草原

 探索者: 5名

 宝箱: 2個

 魔物: コボルト F 30

     ホーンラビット F 30

     ホブゴブリン E 20

     ハイコボルト E 20


「ここもEランクまでだから2人で頑張ってみて。連携も意識してみてね。」


「「はい。」」


この階層には宝箱があるようだ。

何気なく誘導して偶然発見したように装ってみた。


「誠司殿! 宝箱だ!!」


期待通りのカレンの反応が嬉しい。


「おお、運が良いな。カレンが見つけたのだからカレンが開けていいよ。」


先に鑑定して罠が無いことは確認している。


「良いのか? 初めて宝箱を開けるから緊張するな。」


「罠は無いから開けても大丈夫だぞ。」


カレンは宝箱に駆け寄り正面からがばっと開けた。


「今回は罠が無いか俺が確認したから良いけど、基本宝箱は後ろから開けるようにね。罠対策のために。」


偉そうに言っているが、これはギルドにあった初心者用のガイドブックに書かれてあったことだ。


「初級ポーションだ! 中身はショボいが開けるときのドキドキがたまらんぞ。」


「もう一つ見つかったら次は未来が開けていいよ。」


「楽しみだわ。」


「右側にまだ魔物が残っているようだ。行ってみよう。」


もちろん、もう一つの宝箱がそっちにあるのだ。

Eランクのホブゴブリンもハイコボルトも瞬殺されていく。


「あった! 今度は私が開けてもいいのよね?」


「OK」


同じ初級ポーションだった。

未来は初めて開けた宝箱なのでポーションは使わず記念にとっておくそうだ。

レベルや熟練度が上がってきているので2階層も1時間あまりで殲滅した。

そのまま3階層へ向かう。


【フロア情報】

 場所: 無名のダンジョン 3階層

 フィールド: 森林

 探索者: 5名

 宝箱: 5個

 魔物: ゴブリン F- ∞

     ホブゴブリン E 50

     ゴブリンファイター E 30

     ゴブリンメイジ D 20

     ゴブリンアーチャー D 20

     ゴブリンシャーマン C 1


3階層に入った途端に複数のゴブリンが向かってきた。

数がやばいので2人では捌ききれないだろう。

メビウスダンジョンのゴブリンラッシュを思い出す。


「愛莉、数を減らすよ。森ごと焼き払ってしまおう。」


全員をパーティに入れて、配分はカレンと未来が50%ずつに設定した。


「久しぶりにやっちゃいますか。ファイアストーム!」


「俺も行くぞ。ファイアストーム!」


「やはり圧倒的だな。あれ程いたゴブリンが一瞬で全滅したぞ。」


「ほんとにレベル差を感じるわ。」


「すぐに2人も強くなるよ。」


殲滅しながら進んでいくと神殿らしき建造物が現れた。

入口から次々とゴブリンが湧き出てくる。


「あそこが発生源のようだね。」


ゴブリンの他にホブゴブリンやゴブリンファイターが混じって現れだした。

建造物の屋根の上にはゴブリンアーチャーが並んで現れ、一斉に矢を放った。

ゴブリンメイジも現れ、ファイアボールを放ってくる。


「防御結界!」


春菜が結界を張ったので、ゴブリンの全ての攻撃を弾き飛ばした。


「ファイアストーム! 終わりが見えないな。」


全滅させても次から次へと神殿から湧き出てくる。


「ファイアストーム! そうね、ちょっと周囲のやつは任せるわ。」


愛莉が神殿入り口の正面に向けて走った。


「ファイアーボール・極!」


炎の玉がどんどん大きくなり、2mを越えの特大のファイアーボールが放たれた。

そのまま真っ直ぐ神殿入り口に吸い込まれて行った。

湧き出てくるゴブリンを巻き込み灰にしながらゆっくりと奥に向かって進んでいく。


「凄いデカいファイアーボールだったね。」


「感心してないで中に進むわよ。」


ゴブリンが湧き出てこなくなったので急いで神殿の中に向かった。

通路には足の踏み場が無いほど魔石やドロップアイテムが転がっていた。

インベントリにアイテムを収納しながら先を急ぐ。

途中、またゴブリンの群れが迫ってきたが、再び放たれた愛莉の特大のファイアーボールの餌食となった。

50mほど通路を進むとT字路となった。

左からは新たなゴブリンの群れが見える。

発生源が近いようだ。

ここも愛莉の特大ファイアボールで蹴散らす。

右奥には宝箱の置かれた部屋があるようだ。


「ゴブリンの発生を抑えてこよう。」


左側に進むと広い部屋に出て、部屋中央の床には巨大な魔法陣が描かれていた。

魔法陣からは続々と新たなゴブリンが召喚されている。

傍らには放心状態のゴブリンシャーマンがいる。

どうやら無意識にゴブリンを召喚しているようだ。


「ウィンドカッター!」


無防備なシャーマンの首を刎ねた。

そして、シャーマンが倒れ、召喚が止まった。

魔法陣の光が消えると部屋の奥の壁に扉が現れた。


「先に進む前に通路の逆方向の様子を見に行こう。」


右側の宝箱部屋へ向かった。


「おお! 宝箱がたくさんあるわ。」


「5つあるから全員で一緒に開けてみよう。じゃあ、行くよ。せーの!」


相変わらずの初級ポーションだった。


「予想はしていたが、またポーションだったね。」


このダンジョンの宝箱中身は全て初級ポーション確定だな。

改めてシャーマンの部屋に戻り奥の扉を開けた。


「誰じゃ! うるさいぞ! って、なんでヒューマンがこんなところにいるのじゃ?」


扉の中の部屋の中央の台座にあるブルーに輝きゆっくりと回転した巨大な正八面体の結晶から声がした。


「入り口はまだ封鎖しておいたはずなのだが。なんで入れたのじゃ?」


だんだん声が小さくなってきた。


「儂を壊すのか? ちょっと待ってくれ。お願いじゃ。待ってくれ。」


「落ち着いて。君はダンジョンコアで合っているのかな?」


「この結晶体がダンジョンコアで、儂はコアに宿った精霊でダンジョンマスターじゃ。」


ダンジョンの奥でオドオドし、命乞いをするダンジョンマスターに出会った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る