第33話 ダンジョン 10階層 その②

『君たちを甘く見過ぎていたようだ。ちょっと難易度あげちゃうぞ。』


キラーシャークが10体、デビルクラーケンが2体、そして一回り大きいキングデビルクラーケンが現れた。

しかも、空中を泳いでいる。


『スキル浮遊と火属性無効を付与したから今度は大変だぞ?』


「ビックウェーブ」


「え? 愛莉、何で水を与えちゃうの? 元気になっちゃうんじゃない??」


「サンダーストーム!!」


群れで襲い掛かろうと陣形を組んで突進してきたキラーシャークに落雷が降り注いだ。

海水によって電気の伝導性を上げ、杖の効果で威力を増した愛莉の雷魔法がキラーシャークたちに襲い掛かり黒焦げにした。

どうだと言わんばかりに愛莉がドヤ顔をしている。


「シャイニングスター」


春菜の光り輝く流星が降り注ぎ、黒焦げのキラーシャークにトドメを刺した。

春菜も明らかに装備の効果で光魔法が強化されている。

その後ろからゆっくりと近づくデビルクラーケン2体とキング。


*鑑定

  種族: キングデビルクラーケン(ネプチューン)

  ランク: A

  スキル: 触手、拘束、毒墨、毒牙、絞め殺す、超再生、統率、覇気、

       火属性無効、浮遊、水魔法、闇魔法

  弱点: なし

  アイテム: 魔石、トライデント(三叉槍)、魚介類、プレミアム箱


「ネームドモンスターだと?」


「え?! 誠司、気を付けて。ランク以上の強さがあるはずだから油断しちゃだめよ。」


キングがビックウェーブを唱えた。

大津波が襲ってくる。

素早く春菜が何重にも結界を張った。


「危なかったわ。あんな波をまともに食らったらめちゃくちゃにされて骨が砕けちゃうよ。」


「サンダーストーム、アブソリュート・ゼロ。」


デビルクラーケン2体の動きが止まった。


「愛莉、春菜。キングは俺に任せてくれ。残り2体を頼む。」


「わかったわ。気を付けてね。」


「プロテクト、パワーブースト、マジックブースト。気を付けてね。」


オリハルコンの剣に魔力を込め、キングに向かって一気に間合いをつめた。

触手が襲ってきたが切り落とし、胴体へと突っ込む。

切り落とした触手はすぐに再生されたが、時間稼ぎはできた。

剣を振り落とそうとしたとき、決まったと思い込んで気が緩んでしまった。

触手に捕まり、絞めつけられる。


「うぎゃあああ。」


体中が悲鳴を上げた。


「ウィンドカッター」

「パーフェクトキュア、パーフェクトヒール」


捕らわれていた触手を愛莉が切り落とし、春菜が回復してくれた。


「だから油断するなと言ったじゃないの! 誠司のバカ!」


「間に合って良かったです。」


「ごめん、ありがとう。向こうはもう終わったのか。じゃあ、こっちを手伝ってくれ。俺一人じゃ難しいようだ。全力で行くぞ。」


俺は武道の極意発動した。

愛莉も魔道の極意を発動した。


瞬間移動でキングの隣に転移し、右目を渾身の力を込めて突き刺した。

そして突き刺した剣に魔力を込めた。


「ギガブレイク!!」


一気に切り上げた。

キングの胴体がパックリと切り裂かれた。

再生されて塞がる前に愛莉と春菜の魔法が炸裂する。


「ギガライトニングストライク!」「ギガライトニングストライク!」

「ホーリーソードストライク!」「ホーリーソードストライク!」

「ギガライトニングストライク!」「ギガライトニングストライク!」

「ホーリーソードストライク!」「ホーリーソードストライク!」


「トドメだ! 雷撃斬!!」


巨大な青白い落雷とともに放たれた斬撃がキングを真っ二つに引き裂き、焼き尽くした。


『ええええっ! 僕の最後の切り札を。。。 僕の負けだよ。』


「さすがにやばかったよ。」


『この後はダンジョン管理人を賭けて僕との戦闘になるんだけど、今すぐやる? 休憩する? 願いがあるんだけど、もし僕が負けてもダンジョンコアを壊すのは勘弁してもらえないかな?』


「その戦闘を断ることは可能かい? ダンジョン管理人に興味ないんだけど。」


『可能不可能で言えば可能だけど、管理人になれるんだよ? 自由に改造したりできるんだよ?』


「俺はここにずっとここに留まる気はないよ。世界中を周っていろいろなところを観て旅したいし。」


『僕としては君たちに勝てる気がしないから戦わなくて良いのは有難いけどね。じゃあ、宝物庫の宝と何か希望があれば叶えるってことでどうかな?』


「OK、それで問題なし。愛莉と春菜もいいよね?」


「「問題なし。」」


「ということで戦闘なしってことで。」


『おや? 君たち、不思議な異空間倉庫を持っているね。しかも不完全だよ。近いうちに消えてしまいそうだよ?』


「えっ?! それはマイルームとインベントリのことだよね。それは本当に困る!」


『それを修正するってことで許してもらえるかな。』


「こちらからお願いしたいくらいだ。よろしくお願いします。」


『交渉成立ってことだね。ふぅ、良かった。殺されずに済んだ。ちょっと時間がかかるから奥の僕の部屋でお茶でも飲みながら待っていてくれ。でも奥の祭壇にあるコアには触れちゃダメだよ。あと向かい側にある部屋が宝物庫だから中の物は持っていっていいよ。』


早速、宝物庫へ向かった。

さすがダンジョンの宝物庫だ。

金銀財宝が溢れていた。

これで当面はお金に不自由しないだろう。

遠慮なく全部インベントリへ収納した。

その中にあったスキルスクロールが気になった。


*鑑定

 古代魔法ロストマジックのスキルスクロール

 効果: 古代魔法を獲得できるスクロール


これは凄い魔法を覚えそうだ。

早速使ってみる。


魔法スキル

 古代魔法: リカバリー(初期状態に戻す)

       リバイバル(死後30分以内のものを蘇生する)

       イレイズ(指定したものを瞬時に消去する)

       リホーム(ホームに指定した場所に瞬時に帰還する)


ヤバそうな魔法ばかりだが、あとで検証することにしよう。


メビウスの部屋へ入るとメビウス商店の猫獣人さんがメイド服を着て迎えてくれた。


「お疲れ様にゃ。どうぞ、座ってにゃ。お茶入れるにゃ。」


「メビウス商店の店員さんだよね?」


「そうにゃ。商店の仕事が無いときはここでメイドをして、メビウス様の身の回りのお世話をしてるにゃ。何か欲しいものがあったのかにゃ?」


「今は特に無いかな。また欲しいものができたらここに来るよ。」


「わかったにゃ。紅茶で良いかにゃ? 待ってるにゃ。」


おいしい紅茶を飲みながら待っているとメビウスが帰ってきた。


『出来たよ。無理やり設定しているから大変だったよ。これで大丈夫なはずだ。ところで君たち異世界人だったんだね。強いのも納得したよ。そうそう、君たちの亜空間倉庫だけどまだ未開放のものがあったから使えるようにしておいたよ。それにマイルーム?だったかな。亜空間から出せるようにしておいたよ。でも、依り代になるものが必要だったからこの家形の木彫りにしておいた。』


「現実世界にマイルームを出せるってことか。」


『でもこの世界には無いテクノロジーで出来ているものがたくさんあったからセキュリティには気を付けてよ。許可した者以外入れないし、一応中の物は外に出せない設定にしておいた。』


「わかった、ありがとう。ということはクラスメイト以外も部屋に招待できるということか。信用できる人以外は許可しないようにしておこう。」


『この異空間を管理している端末みたいなものを持っているかい? そっちが原因のようだから見せてくれ。』


「タブレットPCのことかな? どうぞ。」


『やはりこれ原因だ。どうやら君たちの居た世界で魔石に似たものを苦労して作ったようだね。その魔石風の物を動力源にして空間を維持していたようだ。だが、あと数か月で空になって空間が消滅してしまうとことろだったよ。君の魔力を吸って動くように修正しておくね。寝てるときに回復で余剰になった魔力を使う設定にしておくから安心してくれ。』


「ありがとう。他の人のも直してあげたいから直し方を教えてもらえるかな。」


『構わないよ。君の空間は異常だったけど、他の2人の空間は端末さえ修正すれば大丈夫だ。魔法陣のこことここをこうして、これを追加すれば良いよ。』


そう言いながら愛莉のタブレットを修正した。

それを見ながら春菜のタブレットは俺が修正した。


『そういえば、君たちキングデビルクラーケンからドロップしたプレミアム箱を開けていないだろ? 一応、願った宝が出るようにはしておいたから開けてみてよ。もう一度言うけど、願ってから開けてね。』


インベントリにあったプレミアム箱を3つ取り出した。


「俺は愛莉の闇/火/雷以外の属性を持った杖をコンプリートしたい。」


「さすがコレクターさんね。」


プレミアム箱を開けると渦潮の杖(水)、突風の杖(風)、土石流の杖(土)、氷河の杖(氷)、聖光の杖(光)が現れた。


新たに入手した5本の杖と愛莉の黒炎雷の杖、そして俺のオリハルコンの杖が光った。

合成できるようだ。


「愛莉、黒炎雷の杖を貸してくれ。進化できるみたいだ。」


錬金術を使うと目を開けていられないほど光り輝き、杖が一本に合成された。


*鑑定

 レインボーエレメントステッキ

 INT:+700、AGI:+300、DEX:+300、クリティカルヒット率:2倍

 効果:全属性魔法強化、全属性魔法耐性UP、レインボーストライク、修復


「ありがとう。レインボーだけど7属性じゃなく8属性だね。8色に輝く魔石がきれいだわ。あっ! 黒は輝いていないから7色か。それでレインボーだね。納得したわ。じゃあ、私は誠司に何でも斬れる最強の剣を望むわ。」


愛莉が開けた箱からは神々しく輝いた剣が現れた。


*鑑定

 聖剣エクスカリバー

 STR:+700、AGI:+500、DEX:+500、Luck:+300

 効果:HP/MP自動回復、全属性耐性、全状態異常無効、再生、自動修復、

    ギガホーリースラッシュ、グランドクロス


聖剣だけあって職業を勇者にしなければ装備できなかった。

ずっと剣聖にしていたが、今後は勇者に固定することにする。

俺のメイン武器になった。


「私も2人の足を引っ張らないように最強の武器が欲しいわ。」


*鑑定

 聖女の杖

 INT:+700、AGI:+300、DEX:+300、Luck:+500

 効果:光/水魔法強化、回復効果増大、HP/MP自動回復、結界、聖域、修復


「聖女じゃなくても装備できるみたい。良かった。私は戦闘職じゃないからいつか2人から置いていかれないか心配なの。」


「元々はメイドさんとして雇う予定だったんだけどね。今では大切なサポート役だよ。心配しなくて大丈夫。」


『じゃあ、これをあげるよ。教会で使えば転職できるよ。』


*鑑定

 転職の宝珠

 効果:Lv.50以上の者が教会で使用すると転職できる。

    人生で1度だけしか使用できないので選択は慎重に。


「いろいろありがとう。そろそろ俺たちは地上に戻るよ。」


『戻る前にコアの台座に触れてくれ。そうすれば転移魔法でこの部屋に転移できるようになるから。君とは友達になれそうな気がするんだ。いつでも遊びにきてくれ。大切なことなのでもう一度言うよ。コアを壊さないように! コアが傷つくと僕と一緒にこのダンジョンも消えちゃうから。』


「わかった。ありがとう。じゃあ、また来るね。」


ダンジョンコアの隣には1階層への転送魔法陣があったが、それを使ってしまうと入口の兵士さんに見つかってしまうので以前滅ぼしたオークの集落に転移した。

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