第19話 ダンジョン メビウス

無事ダンジョンに着いた。

昼ごろ街を出だのだが、日が沈む前に到着できた。

ダンジョン入口は兵士が立っていて厳重に守られていた。

ここは攻略中の未開のダンジョンであり、国営らしい。

だから王の許可が無いものは入れない。

知らずに訪れた冒険者が追い返されていた。

俺たちは許可をもらっているから関係ないんだけどね。


「すいません。俺たち王様から許可をもらってここに来たのですが、入ってもいいですか?」


「王の許可だと? あれ? もしかして賢者様でしょうか?」


「はい、賢者とコレクターです。冒険者カードを確認します?」


「確かに王から連絡を受けていた誠司と愛莉様ですね。入場許可が出ているので入って問題ありません。このダンジョンは深夜0時と昼12時に変動します。そのときフロア内にいると外にはじき出されしまうので気を付けてください。階層間にある階段の踊り場が安全エリアになっているので休むときはそこを利用してください。」


ギルドの情報では深夜0時のみだったが増えてしまったようだ。

まだギルドには連絡が行ってないのかな?

それとも秘密にしているのかも?


「わかりました。では行ってきます。」


中に入ると洞窟になっていた。

道幅5m、天井まで5mといったところだろうか。

中は光源が見当たらないにも関わらず、なぜか明るい。

前世の高速道路のトンネルぐらいの明るさだ。


「愛莉、まずは1~2階層間の安全エリアを目指そう。そこでマイルームに入って一休みしようね。必死に自転車こいだから疲れちゃった。」


「了解。私も早くお風呂に入りたいわ。」


早速、魔物が現れた。

お馴染みのスライムだ。


*鑑定

  種族: ダンジョンスライム

  ランク: G

  スキル: 再生、分裂、溶解液、物理攻撃耐性

  弱点: コア、魔石

  アイテム: 魔石、スライム粘液


ダンジョンタイプのスライムらしい。

しかし、コアをひと突きすると弾けて消え、相変わらずの弱さだった。

早速、”スライム粘液”をドロップした。


*鑑定

 名称: スライム粘液

 詳細: ダンジョンスライムから稀にドロップする。

     糊の材料になる。


詳細を確認していると情報が更新された。


*鑑定

 名称: スライム粘液

 詳細: ダンジョンスライムから稀にドロップする。

     糊の材料になる。

     ☆錬成により界面活性剤になる。


神眼が進化し、錬成術の情報を取り込んだようだ。

おそらく、世間には知られていない情報なのだろう。

あまり庶民の生活を確認していないので分からないが、洗剤は高く売れるかもしれない。

フルーツ味ポーションに次ぐ新たな商品を作れそうだ。

今のところ売る予定は無いが。


マップを起動するとダンジョンの魔素の影響なのか周囲100m程度までしか探索できなかった。

残念ながら範囲内には2階への階段は無かった。

予想以上にフロアは広大らしい。

さらにスライムを潰しながら進んで行くと新たな魔物が現れた。


*鑑定

  種族: ダンジョンコウモリ

  ランク: G

  スキル: 飛翔、超音波、吸血エナジードレイン

  弱点: 耳、翼

  アイテム: 魔石、翼、牙


翼を広げると50cm程のコウモリだ。

飛び回っているので狙い辛い。

しかも、群れで襲ってくるので厄介だ。


「ファイアストーム!」


後方からの愛莉の魔法で数十匹のコウモリが消し炭となった。

しかし、ドロップは別物のようで燃えておらず、魔石や翼、牙が床に落ちていた。

ドロップアイテムを拾い集め、インベントリへ収納した。

コウモリのスキル吸血は使えるかもしれない。

早速、剣に付与してみた。

試しにコウモリを斬ってみると吸血が発動し、俺のHP/MPが回復した。

相手にダメージを与えながら回復もできるし、長期戦にはもってこいのスキルが得られた。

ちなみに飛翔は空中でバランスを取るのが難しく、超音波もいまいち使いどころが難しい。

超音波をマップに取り込むと探索範囲が200mにアップした。


目に付いたスライムを突き、飛んでるコウモリを燃やしながら進んで行くとやっとマップに階段が現れた。

急いで階段へ向かった。

下り階段を降りて地下に潜っていくタイプのダンジョンらしい。

階段を降りると踊り場というより中間層と言った感じのホールに着いた。

ここが兵士が話していた安全地帯なのだろう。

これなら複数テントを張ることが可能と思われる。


「愛莉、マイルームで休もう。」


「うん。じゃあ、誠司の部屋に行くわね。」


「おう。もう俺の部屋というか2人の部屋だけどね。」


マイルームに入ると脳内にアナウンスが流れた。


『マイルームの更新が保留になっています。今すぐ更新しますか?』


忘れてた。Lv.40で更新可能になっていたんだった。

更新内容を確認してみようかな。

丁度、愛莉も部屋に訪れた。


「ちょっとルームの更新内容確認するから待っててね。」


「うん。わかった。」


<更新内容>

 ・5LDKまで拡張可能

 ・各部屋の間取り変更および模様替え可能

 ・風呂、キッチン更新可

 ・特別エリア開放

 ・マイルーム設定カスタマイズ可


ん? 特別エリア?


<特別エリア詳細>

 ・格闘場

 ・魔法練習場

 ・草原

 ・農地

 ・森林


「ねえ、愛莉。マイルームの更新で格闘場、魔法練習場、草原、農地、森林エリアが作れるみたいなんだ。どれがいいかな?」


「そうね、農地かな。新鮮な野菜や果物が食べたいっていうのもあるけど、お花を育てたいの。この世界って花を観賞する風習がないでしょ? 街に花屋は無かったし、庭にも花が咲いて無かったわ。私、お花が好きなの。」


「了解。ホームセンターで確か花や野菜の種も確保していたと思うから植えてみよう。風呂も更新できるみたいだな。おっと! 愛莉、温泉風じゃなく、本物の温泉にできるみたいだよ。もちろん、変更と。」


「え! それはすごいじゃない! 早速入ってくるね。」


また一番風呂をとられてしまったか。


「誠司も一緒に入る?♡」


「えっ? いいの?」


「冗談よ! エッチ。」


まあ、揶揄われているのはわかっていたが喜んでしまうのは男の性というものだろう。

キッチンは、本格的なオーブンが装備され、高級システムキッチンといった感じに進化した。

ピザが焼けそうだ。

冷蔵庫風の亜空間倉庫も設置されていて、もちろん収納無制限、時間停止付きだった。

愛莉が俺に断らなくても確保できるように食材、調味料、飲み物を複製し入れておいた。

1時間ほどするとご機嫌の愛莉が風呂から上がってきた。

晩御飯、どうしようかな。

今日は城に戻る予定はないからインベントリにある弁当にしようかな。

インベントリ内に大量に食材が保管されているのだが、城の食事で我慢していたのは俺と愛莉が料理のスキルを持っていながら壊滅的に料理のセンスが無いからだ。

レシピ通りに作ってもおいしくできないのだ。

愛莉は味噌汁しかできないし。

折角更新されたキッチンが宝の持ち腐れ状態だ。

仕方なくインベントリにあった唐揚げ弁当を食べながら愛莉に提案してみる。


「愛莉、相談があるんだ。俺たちには料理人が必要だと思わないか?」


「そうね。食材があってもうまく作れないのはもったいないわね。」


「そこで非戦闘員の料理人の職業を持ったクラスメイトをメイドとして雇おうと思うのだがどうかな? もちろん、愛莉と仲良くできることが条件だけど。」


「正直、私はコミュ障だからどうだろ。誰が料理人なのかわからないから会ってみてダメだったらごめんなさい。」


「それは構わないよ。俺は愛莉が大切だからね。愛莉が我慢するくらいなら食材を無駄にした方がマシだよ。」


「ありがとう。なるべく仲良くするね。でも、誠司と2人だけの生活が終わってしまうのも寂しいかも。」


「え? じゃあ、止めようか?」


「でも、おいしいご飯が食べたい。和食の朝食が食べたい!」


「明日の朝、転移で城に戻って料理人さんに会ってみよう。」


「わかったわ。」


その夜は温泉でポカポカになり、ぐっすり眠れた。



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