第25話 ビャクユ様はいつも眠い

 心宿るもの全ての関心を引き始めたハロウィン収穫祭だが、それでも一切揺らぐことなく過ごし続けるものはいる。

 カンガミ環神は、その最たる一例だ。

 彼らの行いは如何なる時も、自己を優先するマイペース

 巡前前世に抱いた空しさを埋めるように、ひたすらに自らの抱く好きのために動く。

 例えば、ビャクユ様はとにかく寝る。

 白毛の熊ホッキョクグマの姿をしたその巨躯を、いつも力無くだらけさせ、すやすやと寝息を立てている。寝ている時と寝ぼけている時以外の姿を見た者は、いないとまで言われるほどだ。

 その眠気は、ハロウィンの狂騒ですら吹き飛ばすことはできず、あろうことか、軽い寝返りをうった拍子にその場にいた"モール・モース"を押し潰してしまったりもしていた。

 そのような偶発的な助力はあったりはするものの、基本彼のような存在がハロウィンに加わることはなく、それがこの享楽の宴に対して、冷静な視線を向ける機会にもなっている。

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