第9話 鉄屑とまやかし

「孫たちも面白いことを始めたもんだな」

「世界を盛り上げるのはやっぱり、仕事なんかじゃなくお遊び趣味なのよ」

 魔導鎧装ジャッコを駆り、"モール・モース"を蹴散らす石霊種ドワーフ魔女使徒種の老夫婦がいた。

 ふたりは、鍛冶屋ギアスミス魔術屋クラフティストである。

 性質の違いから、お互いを"鉄屑"だ"まやかし"だと罵り合うことの絶えなかった両者が、互いの技術を認め合うきっかけを創ったのが、この夫婦であった。

 ふたりは若かりし頃から、互いの技術に可能性を見出しており、それが原因で周囲から敬遠されるのも気に欠けずに、相反する技術の融合を目指した。

 その果てに創り出されたのが"魔導ロ・エール"。

 万能の"クラフト"が付与された頑強な"鉄鋼ギア"という理想的組成は、ふたりが世界に公表した事によって、生活用品、電子機器、娯楽用品等、あらゆる分野に爆発的に普及してゆく。

 自分達の発想思いつきに、世界が変わりゆく様子を愉しむ。

 それはふたりにとって、"魔導ロ・エール"がもたらす莫大な利益よりも重要なおもむきなのだ。

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