第12話 素敵な名前のプレゼント~たっぷりのコラーゲンと共に~

「あら、魔王ちゃん。【伝説の呪龍】をもう倒しちゃったの? ……流石は私の見込んだ男ね。それじゃ、その証拠……見せてもらっても良いかしら。ああ、誤解しないで、魔王ちゃんの実力を疑ってるわけじゃないから。ただ、手続き上、仕方なく、ね」




「えーと。龍の討伐の証は瞳で良いんだったか?」




「そうよ。コラーゲンたっぷりの瞳よ」




「ほらよ」




 俺は便利アイテムである○次元ポケットから瞳を取り出したかのように見せつつ、【創造】のスキルを発動して龍の瞳をおっさんなお嬢さんに差し出した。




「……オッケー。間違いなく龍の瞳だわ」




 嬉しそうに嗤うおっさんなお嬢さん略しておっさん。




 めっちゃウキウキワクワクしてるぜ、こいつ。


 無事に龍の討伐が認められたらしい。


 あー、これ来るわー。あのイベントくるわー。




「……こうして【伝説の呪龍】を討伐しちゃったら、認定するしかないわね……みんな、あれを」




「へい、姉さん!」




「今回、上の方でいろいろ話が行われたわ。そしていろいろあって、呪龍をぶち殺したった魔王ちゃんに、ギルドの方から特別な褒賞を与えることにしたの。それは――」




 はいきました! ギルドに認められるやーつー!




「SS級の冒険者ランクの贈呈よ! おめでとう、魔王ちゃん。担当受付嬢の私も、鼻が高いわ。高度5万メートルくらい、かしらね」




「おいおい、SS級って……」




「まじかよ、SS級といえばこれまで歴史上に二人しかいないあの……」




「三人目のSS級だとぉ!?」




「だが、呪龍を殺したのであれば、不思議ではねぇ、か」




「確かに、あれはこの世を十万飛んで1億五千回は人類を滅亡させることが出来るほどの危険なモンスターだ」




「おいお前……数、数えられなかったっけ?」




「ん? いや、一応全く数えられないってわけではねぇよ。流石に、金のやり取りをするときに騙されるのは間抜けすぎるからな」




「ま、こんな高額なやり取りすることねぇから知らなくても大丈夫だとは思うがよ。1億五千は10万よりも桁がでけえよ」




「へぇー。そうだったのかい。悪いね、勉強になったよ」




「良いってことよ、困ったときは、助け合い、ってな」




「そうかい、そいつは結構。それじゃあよ、今のお前が一番困ってそうなこと、俺が解決してやるぜ」




「あ? 俺は別に困ってることなんざ……」




「おい、ねーちゃん! 生! 2つでな!」




「はーい、少々お待ちをー」




「……へへ、中々粋なことすんじゃねぇかよ、おまえさんは。だが、やっぱりまだ算数が出来ないようだ?」




「あん? どういうことだい?」




「生一杯なら、釣りが出ちまうってこったよ!」




「はっ、なら次は、あんたが俺におごってくれよ、ハハゥッ! 今日は飲もうぜ、ウェーイ!」




「「ウェーイ!!」」




 そうして、俺はたくさんの冒険者の好奇の視線を受けながら、SS冒険者として認定を受けたのだった、イエイイエイ!




「ところで、魔王ちゃんそっちのメイドちゃんは? クエストを受けた時はいなかったわよね?」




「ああ、奴隷市で買ったんだ。俺はこういういやらしい身体の女スケに、清楚な格好をさせるのが趣味なんだ」




 冒険者風の下種なジョークを好感度が墜ちることを気にせず言ってみた。ジョークジョーク!




「流石はご主人様です」




 おっさんに指をさされた呪龍が、心底俺を見下したような表情で言った。




 俺の言葉を聞いたおっさんが、意味深に微笑み、ねっとりとした視線を俺に向けてから、耳元に囁いてくる。




「あら、そういう趣味なの? じゃ、私のことも買ってみる?」




「あ、いえ。遠慮しておきます」




 俺はそう言い残してから、その場から逃げ出したのだ。


 三十六計逃げるに如かず、だ。







「さて、ギルドのおっさんにも借りを返した。それじゃ後はやり残したこと一つのみだ」




「お茶ですね。スタバにでもいきますか、ご主人様」




「はい、バカ! 君、バカ!」




「は?」




「え、あ、ごめん。言い過ぎたわ。確かに、馬鹿はないわな」




「ですよね。我今めっちゃ傷つきました」




「うん」




「だから、謝罪の気持ちを込めて」




「うん、分かった」




 俺は呪龍が言い終わる前に、彼女の頭を撫でてやった。


 こういう時は頭を撫でれば万事解決だ。よくネット小説で見ていたからな、へへ。


 呪龍は顔を真っ赤にして、俺を上目遣いで見つつ――




「違ぇよ、金だよ、カ・ネ」




 と、俺の手をぴしゃりと跳ねのけた。




「ウソだろ、おい。いろいろウソだろ、ショックすぎんぞ、おい。お前ちょっと前に俺に忠誠誓ったばっかだろ? なんでそんな極悪な態度を取れるんだ?」




「ええ、嘘です。ご主人様。……ほんとは、凄く嬉しかったです」




「勘弁しろよ、おい。なんであんな嘘ついたんだよ」




「照れ隠しです」




「全然可愛くねぇ照れ隠しだな、死ねよ」




「ぐっぎゃー、死ぬー!!」




「あ、やべ(;^_^A 生きろ」




「あー、生き返るわぁー」




 呪龍は無事に生き返ったのだった。




「そういや、お前さ、なんて名前なの?」




 今さらと言えば今更のことを聞いてみた。




「名前はスットロポンコモンサバンソクーボチーコデカンイヤッホースメントマンゾハナクソマン……いえ、これは主なき時の呪われた名。今の我に、名前はありません。ですから、ご主人様。我に名を与えてください」




 そう言って、頭を垂れる呪龍。


 なんかめっちゃ呪文のようなこと言ってたけど……とりあえず無視しとこ! イエイエイーィ!




「……ウロコ、というのはどうだろう? お前の鱗は、キラキラと光って、美しかった」




「ご主人様……、嬉しい!」




 呪龍、いや。ウロコは俺の言葉に頬を赤らめて喜んだ。




「我の鱗をほめていただき、本当に嬉しいです。……でも却下。鱗が綺麗だからウロコ? 君センスねーわぶっちゃけ。他の名前にしたってや」




 ウロコ、じゃなかった呪龍はめっちゃダメ出ししてきた。クッソムカついた。……クッソ?




「あ、じゃあウンコで。お前今からウンコな、ウロコと一文字違いなのも良いよな、うん」




「良いわけねぇだろ、カス。殺すぞ」




 ッペ! と俺の顔面に唾を吐きかけてくるウンコ。……ウンコで良いだろこんな奴。


 その後、ウンコ(仮)は俺の提案する名前をことごとく却下していく。


 ……もう自分で決めりゃいいだろ、このカスやろう……と、俺がうんざりしていると。




「もっとこう……可愛い名前が良いなー、我。ねーねーご主人様、我、可愛いのが良いよー!」




「じゃあ……郷家愛花」




「え? そんな超巨乳ぽいですか、我? そんなに【世界一】とにかく可愛い超巨乳美少女JK【可愛い】ですか? えー、ご主人様我のこと好きすぎじゃない? きっつー(笑)」




「いーよ、じゃ違うのにするよ! 確かにお前には郷家愛花さんの名前はもったいないもんな! ウンコで十分だもんな、やっぱ!」




「だから殺すぞつってんだろカス」




 俺に唾を再度吐きかけるウンコ。


 クソ、殺してやろうかこのカス……!




「あー、じゃあハナ。愛花さんから一文字取って、ハナだ。……これで文句ねーな?」




「……ハナ。素敵な、名前です。……ありがとうございます、ご主人様っ」




 ふぅ、やれやれ。やっと満足いく名前になったらしい。


 そうとう喜んでるぜ、こいつ。


 だが、まぁそれも仕方ない。




 超巨乳美少女JK郷家愛花さんはあまりにも可憐。


 あまりにも巨乳。


 郷家愛花は俺の嫁!




 そう全世界の男性が思っていることは明白。


 そんな人から名前を取ることが出来て喜ばない女の子はいない。




 ……だが? ホントはこんなクソにそんなもったいない名前を与えるはずがない。


 ハナ、という名前はハナクソからとった名前だ。




 ハナクソというのはクソの一種であり、一説ではハナクソが取れるところを鼻、と言うらしい。


 バカウンコなこ呪龍にはふさわしい名前だ、がっはっは!




 ハナクソの喜ぶ顔を見ながら、俺はそう思ったのだった。

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