第5話 スライム、強化!

 やった、レベルアップしたぞ! 死線を乗り越えただけあった!

 俺は叫びたくなるのを抑えて、浮足立つ気持ちのままステータスを開いた。


――


 アルクス・セイラント 17歳 男

 レベル7


 スキル

 <スライム>

 『擬態』……自身の体をレベル2のスライムに変化させることができる。

 『分裂』……擬態した体を分裂させることができる。最大は12。


――


 どこが変わったのかを間違い探しすると、答えはすぐにわかった。


「あ! 『自身の体をスライムに変化』が『自身の体をレベル2のスライムに変化』に変わってる!」


 前回のレベルアップでは『分裂』の方が強化されていたけど、今回は強化されたのは『擬態』の方だった。


「でも、レベル2のスライムってなんだ……?」


 もしかして、スライムの姿にもレベルがあるのか? 今までのスライムがレベル1だとすると、それより強くなっているのかもしれない。


「よし、物は試しだ! やってみるか!」


 早速スライムの姿に『擬態』。道で歩いているスライムに突撃してみた。


「キュッ!!」


 地面を思い切り蹴って、タックル! 野生のスライムの体とぶつかったその時、違和感を覚えた。


 あれ? なんだかさっきのゴブリンとの戦いのときより、体が軽いぞ? それに、タックルの威力が格段に強くなっている!

 その理由は明確。スライムのレベルが上がったからだ。体感的に、5倍くらいは強くなっている気がするぞ!


 すごい! レベルが上がるとこんなに強くなるんだ!


 目に見える大きな進歩に、俺はスライムの姿のままピョンピョンと飛び回った。傍から見たら緑色のゴムボールがバウンドしているようだろう。


 これでモンスターを倒すのがもっと効率的になるぞ! それに、ゴブリンよりも強いモンスターと戦うこともできるようになるかもしれない。

 スライムやゴブリンと言った雑魚モンスターを倒していても、いつかはレベルアップに限界が来る。

 スライムの姿でも強いモンスターと戦えるかもしれないというのは、俺の中で大きな希望となった。


 よーし、せっかく強くなったことだし、また12匹に分裂してレベル上げしちゃいますか!

 分裂!!


「……キュあれ?」


 もう一度、分裂!


 …………。


 あれ!? 分裂できなくなっちゃった!?

 ……待て待て。よく考えたら分裂できなくて当たり前じゃないか。


 『分裂』は本体の俺がダメージを負わない限り、分身が潰されてもなんの問題もない能力になっている。

 しかし、全くデメリットがないわけではない。

 一度分身を潰されてしまった場合、もう一度『分裂』を使うには、ざっくり一晩休むくらいの時間が必要になるのだ。


 さっきのゴブリンとの戦いで、分身たち11体が全て潰されてしまったので、今日はもう分裂することができない。


「そうか……じゃあ今日の訓練はこれで終わりだな」


 人間の姿に戻った俺は、ため息交じりにつぶやいた。さっきまでの喜びようが嘘みたいだ。

 せっかく強くなったんだから、これでどれくらいのモンスターと戦えるのか試してみたかったのに。


 いや、前向きにとらえよう。クエストが始まったころには一体ずつスライムを倒していた俺が、今では12体同時に戦えるようになったんだ。

 おまけに経験値は12倍。単純計算で144倍も効率的にレベル上げができるようになった。

 レベルは1日で4から7まで上がって、スキルも格段にパワーアップした。うん、もう充分じゃないかな。


 帰って休む前に、今日倒した分のスライムの核を集めよう。それから、ゴブリンを倒したから皮をはぐこともできるはずだ。

 クエストの成功報酬は正直言ってあまり高くない。だが、モンスターがドロップしたアイテムはギルドに買い取ってもらうことができる。


 今日はたくさんスライムを倒したから、報酬も弾みそうだ。よし、ギルドに報告をして、早く体を休めよう!

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