第14話 アウトーーーーー!!!

 「たいあっぷ」用の表紙イラストが完成!メインヒロインの水瀬さんがカワイイです。物語もいよいよ後半戦なので、よろしくお願いします!(^^)!

 https://imgur.com/a/US4f0LP



 ****



「お待たせしました…」


 水瀬さんが試着室のカーテンを開き、姿を現す。いくつかのショップをはしごしてはや1時間、これで4度目の衣替えだ。


 「ど、どうですか?似合ってますか?」


 白い純白のワンピースに麦わら帽子。いつか見た夏の日の思い出、いや、海岸線の向こうに見た幻。

 

 日本人離れした美しい容姿を持つ水瀬さんにぴったりの服装だ。


 要するにー、


 「グレイト!とても似合ってるよ水瀬さん。そのまま海に行きたい気分になる!」


 「あまり褒められると恥ずかしいでしゅ…です。でも、嬉しい…」


 「夏は海に行くのもありかもしれないね。リア充と言えば夏!そして海!」


 「いいですね。行ってみたいです」


 はにかみながらほほ笑む水瀬さんはとても幸せそうだ。恐らく、家族以外の誰かと服を階に行くのも久々の経験なのだろう。その姿を見てこちらも楽しくなるぐらいに。


 「ふふふ、楽しい♪」


 俺で良ければ、いつでも付き合ってあげたい。


 (しかし、噂には聞いてたけど女の子って服買うの好きだなぁ)


 そろそろ誉め言葉のストックが尽きてきたかもしれない。これまで彼女がいたことがない非リアには大変な作業だ。


 まだまだ修行が足りないということか。

 

 「リア充の道は遠いぜ…」


 「?どうかしましたか?」


 「いや、何でもないこっちの話。気にしないで」


 「じゃあ、また新しい服を見せるので待ってくださいね」


 「オッケー!楽しみにしてるよ」

 

 水瀬さんの姿が再び試着室に消えるのを確認して、俺はスマホで時刻を確認する。


 11時20分。

 もう少ししたら買い物を切り上げて、パンケーキのお店に行こう。


 そうすれば、水瀬さんの願いは1つを除いて叶う。




 『キスをする』以外は。


 

 ****



 「よかった、うまくいって」


 試着室のカーテンを閉めた後、亜里沙は小声でつぶやきます。誰かと一緒に服を買うのは久々の経験。少し不安もありましたが、矢崎くんのおかげか順調です。


 なによりー、


 (矢崎くんに喜んでもらえて、亜里沙は幸せです)


 これまで矢崎くんには色々な迷惑や負担をかけてしまいました。直接言えば「そんなことないよ!」と否定するでしょうが、亜里沙の中ではしこりとして残っていたのです。これからは、少しずつでもお返しをしたいと思います。


 不意に息切れのような感覚を感じ、胸に手を当てました。


 (最近、矢崎くんのことを考えると胸がドキドキする)


 今まで生きてきて初めての気持ち。

 この気持ちを、直接伝えられたら…


 「水瀬さん、どうかした?」


 「い、いえ。なんでもありません」


 頭を振り、試着用の服をまとめたカゴに手を入れます。


 「えーと、次の服は…あれ、もうこれは着ましたね。楽しすぎて、手あたり次第にカゴに入れちゃいました…」

 

 亜里沙らしからぬ失敗です。やっぱり、浮かれてしまっています。


 「これも、これも着た。もうないのかな」


 ごそごそと探っていると、真新しい感触に触れます。


 新たな服が下の方に埋もれているようです。

 ぷにぷにとしていて柔らかい。

 

 「あった…って…これ…」




 それの正体に気付いた時ー、


 「あわわわわ…!」




 思わず口癖が出てしまいました。

 


 ****



 「遅いな、どうしたんだろ」


 20分ぐらい経っても、水瀬さんは出てこなかった。一般的に女性の着替えは時間がかかるというけれど、その割に試着室から物音は聞こえない。


 さすがに心配になってきた。少しずつ試着室に近づいて、水瀬さんに声をかけようと試みる。


 その時ー、


 「うーん。アタシ好みのものが少ないなぁ」


 背後から、常日頃見知った人の声が聞こえてきた。


 嫌いではないが、今遭遇するのは避けたい人物。

 慌てて建物のの柱の陰に隠れて見ると、思った通りの人物がいた。


 桃倉さんである。


 「とりあえずこれでも試着してみるか」


 シャツとスカートを一着ずつ選んだ桃倉さんが、試着室へと歩いていく。




 まずい。

 このままでは、この前のように爆発する!


 「ごめん水瀬さん、桃倉さんが来てる!」


 「ふぇ!?」


 「申し訳ないんだけど、試着室に隠れさせて欲しい!もう着替えた?」


 「はい。着替えましたけど…その…」


 「試着室はここかなー?」


 「まずい、もうすぐそこまで来てる」


 「わ、分かりました!入ってきてくだしゃい!」


 「ごめん!」


 カーテンを開け、俺は水瀬さんの試着室に入る。それと同時に、桃倉さんも試着室のエリアにやってくる足音が聞こえた。


 「あれ。ここは利用中か。じゃあ、隣使お」


 隣の試着室のカーテンが開かれ、人の気配が聞こえる。


 なんとか逃れられたようだ。

 ギリギリセーフ!


 って待て、まずは水瀬さんに謝らないと。


 「ごめんね。急に…」


 後ろを振り返って声を掛けようとした俺だが、途中でフリーズしてしまう。




 「み、見ないでくだひゃい」


 大胆に露出した白ビキニを身にまとう水瀬さんが、そこにいた。


 大胆に開いた胸元。

 たわわに実った双丘と比して、小さすぎる布面積。

 形のよい鼠径部をぴっちりと覆うパンツ。


 なぜか痴女レベルの姿となっている水瀬さんと、試着室で2人きり。

 

 「恥ずかしくして、死んじゃいます…!」


 アウトーーーーー!!!


 


 

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