第53話:10階層、その2

 どうせ、ここを守るのは僕になるのだろうし……。


 更にダンジョンを深くしていくならともかく、今のところは10階層まで。

 それなら、ここにいるのは僕が一番自然だった。


 ダンジョンを守るダンジョンマスター。

 何もおかしいことはない。

 敢えて言うなら、今までボスより僕の方が弱いことだろう。


 守護者がむしろ守られている。

 そんな僕を守るために遥がいて、それに他のみんなも……。


 でも、今回は遥たちも驚かせたいから、僕一人だ。

 ……さ、さすがに遥たちと戦う、なんてことにならないよね?

 いきなり襲ってきたりしないよね?


 少しだけ不安に思いながら、コメント欄を見る。




:やっぱり伝説の剣だろ

:奏ちゃんとの握手を……

:↑通報しました

:奏ちゃんだからこそできるプレゼントがいいな




「僕だからこそ……か」




 覚悟を決めると僕はダンジョンの作成を進めていった。







「よし、できた……」




 しばらく時間を掛けて、ようやく満足のいく仕上がりになっていた。

 あとはここに遥たちを呼ぶだけ……。


 ただ、僕が呼ぶ前に元気な声が聞こえてくる。




「あーっ、お兄ちゃんがまた新しい部屋を作ってるー!!」




 エリシャが僕の方へ駆け寄ってくる。

 そして、その勢いのまま僕に飛びついてくるので慌ててそれを抱き留めていた。




「わっっとと……。あぶないよ、エリシャ……」


「えへへっ、お兄ちゃんなら抱きしめてくれると思ってたよ……」




 屈託のない笑みを見せてくるエリシャに、僕も頬を綻ばせていた。

 すると、そんな僕たちを見て、遥が苦笑を浮かべながら近づいてくる。




「全く、エリシャは……。仮にもここはダンジョンですから、遊びで来たらダメですよ」

「えっ? ダメなのですか? 私は遊びに来てるけど……」

「秋はもっと緊張感を持ってダンジョンに入ってください! 確かにいつでも壁を壊して脱出できますけど……」

「壁があったら壊す! それが人生でしょ!?」

「あ、あははっ……。全くみんないつも通りなんだから……」




 思わず苦笑を浮かべてしまう。

 ただ、全員揃ったのならちょうど良いきっかけだろう。


 僕は一度息を飲むと、覚悟を決めて話す。




「みんにゃ……」




 改めて話すとものすごく緊張してしまい、思いっきり噛んでしまった。

 そのことが恥ずかしくて、思わず顔を真っ赤にしてしまった。

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