第13話

 次の日の朝にも、父は私の部屋に来た。その日は最初から予備校へ行こうとすら思っていなかった。昨日と同様に、私は黙った。父は言った。

「正直、毎朝お前がそんな状態なのを見に来るのも、こういう話をしなきゃいけないのも、つらいところがあるのだが」と。

 私はようやく声を出した。

「部屋に来なくていいです」

 父は「わかった」と言って出ていった。

 高校生のときか、ら何度も来なくていいと伝えている。勝手に来て勝手に話していくだけじゃないか。私がそれを要求した覚えはない。


 しかし、予備校には連絡すべきだと思った。親に連絡がいくのであればそれは明らかに彼らへの負担であるから、私に対応を求めるのは当然の道理だ。予備校に欠席を伝えるメールを送った。その日も夕食は食べなかった。ただ明日こそは予備校へ行こうと思って、服や鞄の準備をした。


 次の日の朝は酷い雨で、私はそれを理由に部屋から出る意志を放棄した。午後からは嘘のように晴れて、罪悪感を覚えた。予備校への連絡を忘れていたため、昼に電話が掛かってきた。無視して親に連絡が入ると迷惑をかけてしまう。電話をとった。

 担任が連絡事項を伝えてきた。木曜日にクラスチュートリアルという、高校でいうところのホームルームのようなものがあった。主な内容は五月一日の模試に関することだった。三日続けて欠席している私に、どういう状態なのかと聞いた。隠したところでどうにもならない。精神を患っていると言った。担任はそういう事情ならば欠席についてもある程度柔軟に対応すると答えた。「ほかの担当教科の先生たちにだけは話していいかな」とも。そのほか、病院には行っているのか、その都合で欠席することはあるのか、いつ発症したのか等々聞かれ、通話は終わった。「明日は行かなくては」と、私は思った。

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