2021年3月27日(土)『売春から見る社会情勢』

 桜が咲いていた。


 二日連続二日酔いの頭を抱えて街に繰り出したら、気づいた。そういえばもう春だった、と。ついこないだまで撮り溜めた正月特番を見ていたら、もう春になっていた。いつの間にか待ちゆく人々は厚手のコートやらダウンジャケットやらを脱ぎ捨てていた。中には半袖シャツという夏先取りな人もいた。


 春という季節は出会いと別れの季節だと言われている。入学や卒業があるのでそう言われているのだろう。入学はともかく卒業というのは良い文化だと思う。私も社会人から卒業したい。定年がそれに当たるのだろうけど、卒業までだいたい四十年はさすがに長い。院に進まない大学生が思いっきり大学を謳歌したとしても八年が限度だ。五倍は酷い。しかも最近だと卒業までの必要年数が勝手に増えてたりするから、私が卒業する年齢になる頃には卒業という概念がなくなってそうな気さえする。


 あと一週間もしないうちに私が勤める会社にも新社会人が入ってくる。


 そこで私は思った。


 これは一種の売春ではないか、と。


 新社会人という商品が各会社に一定数出荷する。商品は身体的・時間的拘束を強要され、会社にご奉仕することを求められる。嫌よ嫌よも好きのうちと言わんばかりに難題をふっかけられ、アヒンアヒン言わされる。ただ最近は公的機関が圧力が強くなったので、客と商品の間で交わされるハラスメントに対して取り締まりが強くなった。その代わり、商品の保護コストが高くなり、遊郭が抱える嬢(正社員)と立ちんぼ(非正規社員)との格差が生まれてしまった。その格差を是正するために色々やってはいるものの保護コストを下げるために遊郭の嬢が立ちんぼ並に待遇を落とされたりしているらしい。


 まあ、私には難しいことは分からないので解決法などは提示できないが、これだけは言える。


 卒業する頃には老婆となっていそうな人に、生涯現役を語らせても誰が得をするのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る