自動効率化魔法で異世界インフレの旅

瀬斗 結衣

プロローグ

「今日で、このゲームの世界も崩壊するのか」


少し悲しくなる。


俺、九堂クドウ四季シキは趣味でゲームを個人製作している平凡な大学生だ。


崩壊とは、俺の作った放置ゲームがサービス終了するということだ。

その放置ゲームは魔法使いの塔(ST)の事である。


今日の0時にサービスが終了する。

今が、11時45分だから、後15分だ。


「終わる前に、ファンからのメールを確認しておくか」


スマホを出して、メールボックスを開く。

俺は、パソコンでゲームを作るがメールはスマホで確認するようにしている。


メールを見る。


「今回のゲームも最高に面白かったです。ありがとうございました」


「普段、放置ゲーやらないんですが、これは楽しかったです」


など、たくさんのメールが届いた。


当然、嬉しい。俺の作ったゲームをサービス終了までやってくれた人達なので嬉しくて泣きそうになる。


「ん? なんだこれ」


メールボックスの一番上に変なメールが届いている。気になったので開いてみる。


「あなたのゲーム、大変興味深かったです。それで不躾なお願いですがアンケートに答えてください」


アンケートみたいだ。悪いメールじゃないっぽいし、答えてあげるか。

普段だったら、答えないけどこの人も俺のゲームのファンっぽいしな。


「あなたは今回、作ったゲームを面白いと思いますか?」


はい。


「放置ゲーを作った理由は?」


効率化とやりこみでどんどん進められるのと、圧倒的インフレの気持ちよさ。


「最後に、もう一度このゲームを運営(プレイ)したいですか?」


もし叶うとしたらもう一度やってみたい。

これは、本気でそう思う。


「ならば、私の世界に来てください。あなたに最高な体験をプレゼントします」


最後の文面の、下にメールをくれた人の名前が入っている。


by神様より。


それを見た瞬間、地面に魔法陣が現れる。


「うわっ。なんだこれは」


そして、頭の中に声がする。


「あなたに最高な世界をプレゼントします。その世界は、あなたが好きな放置ゲームの世界に似ています。その世界をあなた自身の体でプレイしてください」


異世界という単語に、少し戸惑うが俺は嬉しかった。

数ある放置ゲーをやりこみ、個人制作までした俺が、異世界で放置ゲーを堪能できる。


控えめに言って、最高だ。


「これが本気なら、やり込むしかない。インフレは正義だ」


「あなたを誘ってよかった。あなたこそが私が求めていた人だ。楽しんできてください。私たちはあなたが目指す頂で待ちます」


次の瞬間、目の前が光に包まれ目を閉じる。


そして走馬灯みたいに記憶が自分に流れ込む。序盤は自分の記憶だが後半は知らない人の記憶だ。


だが、この記憶は覚えがある。


俺が作ったゲームのキャラのプロローグだ。


そして、目を開けると森の中で寝転がっている。


「ここが、異世界か。俺の住んでいる所も森の近くだったし、見たことある光景で一安心だな」


あれ?


「声が少し、若返った気がする」


目の前に流れている川で顔を確認すると、俺の高校生くらいの見た目の着物を着ている男が水に映る。


大学生の時から多少、若返ったかな。


身長も縮んでる170無いかも。めっちゃ悲しい。


とりあえず、記憶を整理する。

そして全てを理解した。なぜ、森で寝転がっていたかも。


俺は、家から追放されてここで餓死したようだ。

家は、隠れ里納めている村長の家でお金持ちだったらしいが、魔法の才能が俺に、全くなかったから捨てられたようだった。


「なるほどなるほどってそれ、俺が運営してたSTの設定じゃねえか。神様やべぇな」


それ以外で必要な情報だと。

幼馴染が一人いるくらいか、まぁ隠れ里にいるなら大丈夫だな。


「それよりも、森を抜けるのと、ステータスの確認だな。同時進行でやっていこう」


俺、九堂四季のインフレの旅はこの時から始まった。

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