追放された元賢者、僻地でのんびり村を作る〜E?他国が攻めてきた?E?魔族が攻めてきた?E?国が不景気? 知りませんが一応、御冥福だけお祈りしておきますね〜

@サブまる

対西国戦争篇

第1報 『追放』

「このクソ無能が!! お前のせいで俺がどれだけ頭を下げたと思っている!!」

「本当にすみません!!」


 王立学院を首席で卒業したサーデル・フリルは、頭を下げていた。

 そこに浴びせられる怒号。


「貴様なんぞもうクビだ!! 二度とそのアホズラを見せるな! 永久追放だ!!」


 一兆単位で増減する会計表の一の位の数字を『8』と間違えて『6』にしただけ。ほとんど影響はない。謝ればゆるしてもらえるはずだ。

 そう思っていた矢先の突然のクビ宣告に、フリルは思わず顔を上げた。


「……え? 待ってくださ、」

「ペッ!!」


 上司の口から水飛沫が上がり、飛んできたツバがフリルの顔に直撃する。


「さっさと出ていけ!!」


 これまで必死に働いてきた。このバカ上司の理不尽な要求にも真摯に対応し、押し付けられた仕事も徹夜を惜しまずやってきた。

 全ては祖国のため。


 そう思い、ブラックな環境ながらも誇りを持ってやってきた。それがたった一回の、しかもこんな些細なことで。


 フリルの中で、今まで抑えてきた感情が一気に広がった。


 言ってやる。ここで全部。


「……では、そうさせていただきます」

「いいから早く出ていけ!!」


 言われるがまま、肩を落とし扉に手をかけたフリル。最後に振り返ると、


「あなたが私の手柄を横奪していたのは知ってるんですよ。外交に新人の教育に、公共事業、行政、その他やらなければ国が破綻する雑務、これらは全て私が常日頃になってきた仕事のほんの一部です。これからは私に押し付けていた仕事も自分でしなくてはならなくなりますね。せいぜい頑張ってください」

「………は? お前何を言って………」


 その日見た上司の絶望に染まった顔は、フリルの新たな人生の門出を祝うには申し分ない、最高のものだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る