No.07:「そんなのつまんないじゃん…」


 翌朝。

 学校で朝のSHR前だ。

 アパートから学校まで、30分とかからない。

 電車一本で行けて、とても便利だ。

 8時にアパートを出れば、余裕で間に合う。


「ウッス、翔」


 授業の準備をしていると、さわやかイケメンから声が掛かる。


「智也、おはよう」


 安川智也やすかわともやは僕の一番近い友人だ。

 親友と言ってもいい。

 身長180センチのガッシリした体型。

 バスケ部のパワーフォワードでレギュラーだ。

 切れ長の奥二重、スポーツマンらしいショートヘアのイケメン。

 性格も優しく、空気が読める。

 そりゃあもう、女子からモテることモテること。


「翔、数学の宿題やってきたか?」


「え、そんなのあったっけ?」


「やっぱり聞いてなかったんだな。章末の問題やってこいって、先生授業の最後に言ってたろ?」


「マジで?」


 言ってたっけ?

 全然記憶にないんだけど。


「もーしょうがないなー。翔、あたしのノート見せてあげてもいいけど?」


 横から快活な女子の声が割り込んでくる。


 上原亜美うえはらあみ

 ショートカットの活発女子だ。

 身長160センチぐらいで、運動神経抜群。

 女子テニス部のエースだ。

 くりっとした目で、八重歯がチャームポイント。

 明るく、男女分け隔てなく優しい。

 これまた男子に人気の女子生徒である。


 そんなスクールカーストの上位陣2名と、なぜか僕は1年の時から仲がいい。

 2人とも高校からの付き合いだが、この学校は1年と2年はクラス替えをしない。

 だから高校に入ってから一年半くらい、この2人とは仲良くしていることになる。

 休日もたまに3人で遊びに行ったり、一人暮らしの僕の家に遊びに来たりする仲だ。


「亜美、宿題やってきたんだ。見せてくれる?」


「ジュース1本ね」


「わかったわかった」


 余分な出費は抑えたいんだけどな。

 でもこれはしょうがない。


「でもようやく金曜日だね。1週間長かったよ。ねえねえ、週末どっか行かない?」


「お、いいねぇ。俺、久々にアラウンド・ワンに行きてーな」


 亜美と智也が、なんか盛り上がってる。

 アラウンド・ワンというのはスポーツ・カラオケ・ビリヤード等、いろいろ楽しめる総合娯楽施設だ。


「あたしは土日、両方空いてるよ。翔は?」


「え? あー僕は今週はパス。予定が入ってるんだ」


「あれ? 翔、今週末はバイト入ってないって、言ってなかったか?」


 よく覚えてたな。

 でも土曜日はホームセンターだし、日曜も多分すみかさんは買い出しだろう。

 荷物持ちが必要かもしれない。

 それに食材の買い出しにも、行かないと。


「僕にも色々予定があるんだ」


「えーそーなの? もう……付き合い悪いなー」


「僕がいなくたって、2人で行って来ればいいのに」


「えっ? そ、それは……そんなのつまんないじゃん……」


「?」


「はぁー……。こりゃ亜美も大変だ」


 智也がなにか呟いたが、周りの喧騒にかき消されて聞こえなかった。


………………………………………………………………


 そして今日は土曜日。

 寝起きの悪い朝だ。


 またいつもの夢を見た。

 あの夢をみると、夜中でも起きてしまうんだよな。

 本当に、なんとかならないかな……。


 夕方には、すみかさんがやってくる。

 今日は朝から忙しいというのに。


 まず朝一で、ホームセンターへ。

 突っ張り棒とカーテンのセットを買ってくる。

 すぐにアパートに戻って、ソファーベッドを広げお客さん用の布団をセットする。


 テレビとソファーベッドを移動した後、突っ張り棒を設置する。

 案外簡単にできてびっくりした。

 二つのベッドの間に、いい感じで仕切りができた。


 簡単に部屋を掃除したあと、すぐに買い物に出た。

 駅向こうの業務スーパーへ向かう。

 歩いて20分以上かかるが、節約しなきゃ。

 大量の食材を購入して、アパートへ戻る。

 大半が冷凍食品なんだけど。


 夕方の4時過ぎ。

 食事の用意に取りかかる。

 今日のメニューは、手羽元のサムゲタンスープと豚の生姜焼きだ。

 スープに米を入れるが、一応冷凍ご飯もある。


 サムゲタンスープは炊飯器で作る。

 お釜に手羽元にキムチ、水煮ごぼうとお米を入れる。

 後は調味料入れて、スイッチを押すだけ。

 簡単だ。


 それから豚肉を調味料と一緒に、ビニール袋に入れてもみ込んでおく。

 後はすみかさんが来てから焼けばいい。


 すみかさんからLimeのメッセージ。

 5時半ぐらいに着くそうだ。

 なんだか少し落ち着かない。

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