多重人格でなければ、別の何かが潜んでいます。

 彼らが怯えていた何かより、語り部自身に興味を持ちました。
 現実逃避や鬱憤晴らしで小説を書く人はいます。とくに小説を書いている人がこの作品を読んだとき、語り部に寄り添うと思います。
 自分は『スプーキーメゾット』を書こうと思った動機や書いているときの気持ちが気になりました。
 最初は不幸に見舞われた不憫な語り部をイメージして読み進めていたのですが、医者から気味悪がられてから、「あれ? これってかわいそうな目にあう語り部を見守るストーリーではない?」と気づきました。
 「二つ目の不幸」は語り部ではなく医者側ではないかと思ったのです。語り部がどんなテンションで喋っているのかわからないので、「たぶん医者に怯えられた経緯を冷静に説明している?」と受けとりました。
 語り部がどういう状況下で、どういう面持ちで喋っているのか? 作品を読んだ人のイメージで語り部の印象がかなり変わるでしょう。