第8話 【ネタバレ注意】カムパネルラについて

 ラストは「幸追人」に「さちおいびと」というルビをつけていました。

 

 で、カタカナ語では、どうしよう、とかなり悩みました。


 最初、「ブルーバード」ってつけてました。

 つまり、「青い鳥」、チルチルミチルの、メーテルリンクのあれです。幸せの青い鳥。


 でも、青い鳥が幸せの象徴だとすると、追うのは誰だ? という違和感。

 本来的にはチルチルとミチルなんですが、元々の話が、チルチルミチル、「青い鳥」とすれ違っているし。


 あと、語感が悪い(メーテルリンクに失礼です)。


 で、ふと、幸せを探しに行くって言った人、他にもいたよね、と。


 で。出てきたのが「カムパネルラ」。


「カムパネルラ」は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出てくる主人公の友人ですね、「幸(さいわい)」を探しに行く、と語る人です。

 いや、語ったのが、銀河鉄道の汽車の中なので、もしかしたらジョバンニの心の中なのかもしれないけど。


 まあ、そういう、現実と夢想の境目にいる曖昧な存在感、というあたりも、あってるかな、と。



 そう、色々引っ掻き回してくれた希和子さん、実は一回も登場してないのです。

 すべて、誰かが語る(あるいは垣間見た)存在。

 

 いよいよ登場、というところで、声なき存在になってしまう(命は取り留めていますが)。


 カムパネルラがジョバンニの心象風景の存在だとすると、「カムパネルラ=ジョバンニ」という解釈も成り立つので、この場合、ジョバンニにあたる佐和子さんも、カムパネルラ的存在だとも言えます。


 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」は、もう、説明いらないですよね? 代表作だし。

 他の作品も、解釈が難しい話も多いですが、短編のいくつかに、この「幸せを探し求めているのに、ままならない」というテーマのものがあります。読むとせつないですが、おすすめです。

 

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