猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。

本田ゆき

第1話

 私、レイラ・ブラウンは困っていた。


 というのも、ブラウン家は割と有名な貴族一家で、勿論マナーや血統などにうるさく、典型的な貴族像を押し付けられて育った。


 そして今月で16歳になる私は、同じく貴族出身の良く分からない青年と結婚させられることになる。


「私の人生って何なのかしら?」


 最近はそんなことばかり考えるようになった。


 ただ親が敷いたレールの上を歩むだけの、何の感動も刺激もない人生。


 かと言って、それに逆らう様な理由も特になく、私も言われるがままに育ってきた。


 私はそんな考えても無駄なことを最近毎日の様に考えていた。


 そんなある日、私の元へ私より2つ歳下の妹のユーリ・ブラウンが訪ねてきた。


「お姉様、実はお願いがあるのですが……」


 そう言って彼女は瞳をうるうると潤ませながら言ってきた。


 これはまたろくでもない相談だなと直ぐに見抜く。


 というのも、このユーリは実にずる賢い女だからだ。


 今までも自分の失敗を人に擦りつけたり、他人の頑張りを横取りしたりと、サラッと他者を使って自分の評価を上げるような、そんな女だ。


 そして大体私や屋敷の一部のメイドなんかは被害者である。


 しかし、父も母もそんなことに気づいておらず、何故か妹をいたく信用している為、妹の悪行がバレることはない。


 そんな妹の頼みというのは、大体ろくな事がない。


 しかも断るとあの手この手で父と母に私の悪い話を吹聴したり、世間的な評価をがた落ちさせようとするのだからタチが悪い。


 ちょっと可愛いからってみんなコロッと騙されるなんて、といつも思っていた。


「お姉様って、婚約者のダニエル様の事本当に好きですか?」


「まあ、正直あんまり話したことないし、特に好きでもないけど」


 私は素直にそう話した。


「それなら、私にダニエル様の事をくれませんか?」


 どうやらユーリはダニエルの事を好きな様だ。


 まあ、確かに顔だけはカッコよかったと思うけれど。


「私は別にいいけど、でも父様と母様をどう説得するのよ?

それにユーリにも婚約者はいるでしょ?」


 血統を大事にする父と母は、長女の私を無理にでも貴族と結婚させようとするはずだ。


 そして私の婚約者のダニエル・ボンドは伯爵で、そしてユーリの婚約者のウィリアム・アンダーソンは男爵である。


 爵位的にはダニエルの方が上であり、長女の私を嫁がせたいと父も母も考えているだろう。


「実は、お姉様にはずっと秘密にしていたのですが、私とダニエル様は恋仲なんです」


 そう顔を赤らめながらユーリは嬉しそうに話す。


「なので、お姉様と私の立場を交換して欲しいのです」


 成る程、だから私とダニエルの結婚を阻止したいということか。


「でも立場を交換なんて、そんなの父様と母様が許す訳ないでしょ?」


 そう私が言うと、ユーリはクスリと笑った。


「私にいい考えがありますの」

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