第9話

「頼む!」そう叫んでいるのは鷹志で、幸子はスマホをこちらに向けている。3人の女子高生が慌ててこっちに走ってくる。おそらく、本屋の中ではなにか変化があり、幸子は本屋から女子高生にフォーカスを切り替え、そして僕は女子高生をどうにかしないといけない状態だ。では、どうやって? 3人を相手にしても暴力では負けるしそもそも暴力を使ってはいけないだろう。では、死んだふりをして情に訴えるか? 多分、あまりの芋っぷりに、無視して逃げるのが関の山だろう。そもそも、もうもうすれ違う間際である。では、こっちも腹が決まっていた。「ああっ! 本屋で鷹志が少女を刺した!」無論嘘である。だが、効果は抜群だった。少女達が脚を止めた。これは暗に本屋の少女と集団の少女が繋がり合っていることの証明である。また、少女たちが万引少女を気にかけているということでもあった。僕はそれを確認すると大きく頷いて、「まあ、嘘なんだけど……」と云った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る