第7話

精悍な男は鷹志といった。「羅生門って、人の業の物語だよな」書架から抜いてコートのポケットに入れようとする寸前、そう話しかけられた。「大声あげますよ」「彼女が店の前にいてさ、iPhoneで撮ってる」振り向くと、女性がこちらにスマホを向けていた。あれはメッセージを打っているのかと思ってたが、動画を撮影していたのか。「日付は手間だった。俺は、土曜日だと推測した、何故なら平日は両親の問題や宿題、予習などで難しいからだ。こればっかりは経験則というか、運だったと思う。ほら、幸の薄そうな男がいるだろう、実は先週の土曜日、一度現場を目撃しているんだ」つまり、もう一週間前にバレていたのだ。「大学生なんですよね?」「うん」「私も国文志望です。青空文庫はまさに天国でした」「うん」「ネットで簡単に読めるのに、書籍にこだわるのか、私はさっぱり判りませんでした」「動機はそれではないと思う」鷹志は落ち着いた程で呟いた。

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