俺の幼馴染がホモでTSしたようだ

百合之花

第1話

俺が小学2年生の頃だったか。


小学2年生のある日のこと、幼馴染の男の子が


「女の子じゃなくて、男の子を好きなのって変かな?」


と言い出した。


俺はそれに変じゃないと答えた。

別に同性愛者に寛容な小学生だったと言うわけではない。

単に友達としての好きだと思ったからで、女の子だろうと男の子だろうと友達なら好きになるのは普通だろう、変ではないと答えたのだ。


幼馴染はその俺の言葉にホッとしたように笑った。


その勘違いが勘違いだと分かったのは一年後の夏だったか?

家が隣で男同士というのもあり、幼い頃から一緒にお風呂に入ることがままあった俺たちの間柄に亀裂が入ることになった。


ある日から風呂に一緒に入りたくないと言い出した幼馴染。

きっかけは些細な一言。

体を見せることを恥ずかしがる幼馴染を見て、変だと俺は言ったのだ。


「へ、変じゃないよ!裸は好きな人だけに見せる物だって、お母さんが言ってた。けっこんする人だけに見せるんだって」

「はぁ?男同士で何言ってんだよ?いいから脱げよーっ」

「やだってば」

「おらおらっ、はははっ」


嫌がる幼馴染を無理矢理に剥く俺。

男同士であったし、兄弟のように育ってきた幼馴染という間柄な上、異様に嫌がる幼馴染の姿にある種の楽しさを見出した俺は、幼馴染が本気で怒るまで続いた。


「やめてったら!!」

「いってぇっ!?何すんだよ!?」


思いっきり引っ叩かれた頬を押さえて幼馴染に抗議する。

あまりの剣幕に謝ろうかなという思いが頭をよぎったが、そんなカッコ悪いところを見せたくないというのもあって、喧嘩はエスカレートしていく。


それを聞きつけた俺の母が仲裁し、何が原因かと問い詰める。


「あいつがっ!あいつが好きな人にしか裸を見せないとか男なのに言うからっ!!」


子供特有の感情が先走って要領を得ない言葉。これだけでは意味が判らなかったのだろう。

母は首を傾げ、さらに問い詰める。

そして事情をあらかた把握してしばらく考えた後、何かを思い悩む様子で幼馴染にも事情を聞いた。


頭に血が上った俺は母が幼馴染と何を話していたのか覚えていないし、聞こえていたとしても聞き流していたのだろうが、母はその時の会話で幼馴染が同性愛者であることに気付いたのだ。


そして。

母はさらに幾つかの会話をした後に、幼馴染をすることに決めたらしい。

となれば分かるだろう。

母はの服を剥ごうとした俺を叱りつけた。

俺は愕然とした。

俺は間違っていないと考えていたためにその驚きはなおのこと大きい。

その後の母は子供の俺にも分かるように、幼馴染のような人種がいることを説明しようとするも、それを聞き入れるための冷静さなどかけらも残っていない俺はふざけるなと怒り心頭。

さらには暴言まで吐く。


「男とけっこんなんてキモいこと言ってる剛太郎が悪いし!!」

「き、キモいって、なんでそんなひどいこと言うの?男の子が男の子を好きなのは変じゃないって言ったくせに!!」


母が止めようとするも、喧嘩は止まる気配を見せることなく、仕方ないとばかりに母は剛太郎を家に帰した。


それから1週間。

毎朝一緒に登校していたのをやめて、学校では絶好状態。

家に帰ってからも、今までは二人で遊んでいたのに1人で遊ぶことになる。


俺は限界だった。

小学生の俺には、子供心に男が男を好きなのは変だと言う思いはあったし、1週間経ったとしても自分が悪かったとは思えなかったが、それ以上に幼馴染の剛太郎と遊べなかったのが辛かったのである。


母からも別に男の子が男の子と結婚してもいいでしょう?

何がダメなの?

と言われて、改めて考えると別にそんな決まりは無いなと思い直した。

子供の素直さが良い方向に働いた結果である。


さらに母は言った。

剛太郎くん、いや、剛太郎ちゃんは心が女の子なの。

それは神様が決めたことで、どうにもならないことだと。


とまで言われては、俺が悪かったかなと思い始め、剛太郎の家に謝りにいく。


すると顔を合わせた瞬間、先に謝られてしまった。

泣きながら、ごめんなさい、気持ち悪くてごめんなさい、女の子を好きになれるように頑張るからこれからも一緒にいてと言われて、俺も一緒に泣きながら謝りたおす。


「今でも男が好きなの?」

「…好きじゃない」

「バレバレだ。嘘つくなよ…母ちゃんが言ってた。別に悪いことじゃないって。確かに俺もそう思う。直さなくて良いよ。キモいって言わないし、だからこれからも一緒に遊んでくれよ」

「ほんとう?」

「本当だ」

「やくそく?」

「ああ」


この事件を経て、俺たちはさらに仲良くなったのである。




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