第44話 4つの事件




それは街の端、廃墟の中でのこと。


「コレで100万だ。」


フードを被った男が顔色の悪い男に薬を渡していた。


「だが、悪栄教に入れば全てタダ。意思が固まったらここにこい。」


そう言って、男は封筒を渡し、立ち去った。


「は、麻薬か。この程度で金が貰えて、信者も増える。一石二鳥だな。」



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そして、コレは沢山の機械が並ぶ部屋でのこと。


「峯山。調子はどうだ?」


「大丈夫です。ハッカーはいません。」


「佐々木は?」


「こちらもありません。」


「テティスは?」


「問題ありません。」


「現状OK。警戒を劣らぬように。」


「「「了解。」」」


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また、これはその機関をみつめる者達の話。


「あれがターゲット?」


「そうだ。あれの破壊が今回の司令だ。」


「なら簡単だね。すぐ終わる。」


「流石だ。俺はフォローに回る。」


「そりゃあ安心ものだね!」


「ふ、お前は俺の言う通りに動けばいい。」


「まぁ、頼ってれば失敗することはないからね。今回は任せるよ。」


「ああ、任せておけ。」



あらゆる者達が動き出したのだった。



ー白斗視点ー


「今日はこの街の異変を調査したいと思う。」


「異変?そんな感じには見えないけど。」


「たしかに、裏で何かが動いている違和感はありますが。」


「お!エイトは気付いてたか!」


「これ、悪魔の力ですか?異質な感覚です。」


「…私は分かりませんでした…。」


「大丈夫よ。ニア。わからないのが普通よ。」


「それじゃあ、それぞれが事件を調べるってこと?」


「今は5人だから、ユーアとシア、エイトとニア、そして俺の3チームで調べようと思う。」


「確かに、その方が効率がいいと思うよ。」


「調べてみると【麻薬密売】【変死体】【行方不明】の3つがあるそうですね。」


「あと、ティアナード家はサイバーの中心と呼ばれる機械を保有しているの。そこも調べる方がいいと思うわ。」


「それに、行方不明は少し分かりにくいから…。」


「なら、私とエイトさんでティアナード家、ユーア様とシアさんで麻薬密売、白斗様が変死体ということですね。」


「そういうことだ。それでは調査、頼んだぞ。」


「「「「了解です!」」」」



5人が分かれた数時間後、白斗は情報を探り、路地裏に来ていた。


「話を集めると、こういうことか。」


・変死体を調べても何の異変もなく、まるで糸が切れたように死んでいた。

・行方不明者、死亡者共に無宗教者であった。

・両事件ともに、ある人物の目撃情報がある。


「推理…するまでもないが、両方とも同一犯の可能性が高いのか。」


(もしかすると、悪栄教の勧誘だとしたら…。)


その時、背後から今まで感じたことのないほどの死の恐怖、殺気を感じた。


「すいません、少しお話を伺っても宜しいですか?」


(予想通り、彼らは皆、路地裏にいた。)


「はい、なんでしょうか?」


その殺気の持ち主は男であった。


「勧誘をしていまして、お声がけした所存で御座います。」


(このフード、悪栄教の司教、第42司教、侯爵クラスか…。)


「私達は悪栄教。ここ最近、ここら辺に支部を設立したので、勧誘をしているのです。」


(なるほどね…。)


「今は、少しの方しか集まられていないのですが、少しすれば、あの三大宗教と並ぶ宗教になる予定なので,今からでも損はありませんよ。」


「勧誘された者は警戒しただろうな。」


「?警戒されるかもしれませんね。誰しも得体の知れない宗教は拒みますから。」


「違うさ。…数十年前から歴史上に伝わる邪教、悪栄教からの勧誘なんてな。」


「な!?」


「拒む要素がある者は殺す。受け入れる者は誘拐。知らなくとも警戒する者は脅す。それがお前のやり口だろ?悪栄教司教さん?」


「司教まで知っているのですか…茶髪、茶の目、その中に秘めた力…まさか、精霊を護ったという、【精護神 白斗】ですかね?」


「そうかもしれないな。少なくとも俺は白斗だ。」


「貴方が…参考までにどう暴いたのか教えてもらっても?」


「お前が起こした事件は【変死体事件】と【行方不明事件】。一見何も関係なく見えるが、【悪栄教】という言葉を入れれば、【麻薬密売】ともつながる。勧誘し、教徒となる者を選別し、連れてくる、基【誘拐】。要らぬものは殺す、【変死体】。支部設立の為の【麻薬取引】。どうせ、変死体は【死】系の能力、麻薬は金が足りないから【錯覚】の能力でも使ったんだろう。」


「正解です。まさかここまで解かれるとは…。」


「司教直々に正解が貰えたんだ。これを防衛軍に報告すれば討伐許可も下りる。そうすれば終わりだ。」


「ふ、まぁ伝えられれば、の話ですが。」


「何だと?」


「【魔司能力・死眼】」


その瞬間、何かの線が切れたように眠気が襲ってきた。


「コレは、必ず死ぬ【必殺系】の能力。いくら貴方でもこれには耐えられないでしょう?」


「これの威力を調整して、威圧を出したのか、なかなかやるな。」


「我を称賛するのは結構。だが自身の心配をする方がいいのでは?」


「は、これくらい問題ないさ。」


「地面に這いつくばりながら言われても、何の説得力もありませんよ。…そうですね、いい情報をあげましょう。我ら、悪栄教はサイバーコアを襲う。」


(サイバーコア…ティアナード家所有の世界最大のコンピュータか…。)


「それも勧誘が目的か?」


「それもありますが、他の事柄を進めやすくすることもあります。規模はこの街が崩壊するくらい、サイバーのないこの街など田舎より貧弱。すぐに崩壊するでしょう。貴方はそんな光景を見ずに済む。とてもいい話ではないですか!…それとも悪栄教の司教となり、一緒に世界を破壊しますか?」


「死んでもお断りする。」


「なら死ね。言葉通りに。」


そして、男は立ち去ろうとする。


「名前だけ教えておきましょう。第42司教カプディア・ソルタナート。それが我の名です。天に伝えておいてください。さようなら、精護神さん♪」


そして、男は立ち去った。


「今度こそは…少し…まずい…かも…知れ…ない…な……。」


そうして、その場から気配がなくなったのであった。



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次回予告

     第45話「事件の首謀者」


遂に事件の首謀者とユーア達が戦い始める!

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