第34話 海

班長に気合いをかけられ引き返して来た事もあった。海は逃げる場所が無く、どうしようもない。

グラマンだったら一撃にやられてしまう。三田尻港と言えば戦艦大和が最後の出撃を前に其の姿を現し、以後多くの人々から涙を誘った港は水漬く屍となっていた。

ある日のこと、坂口教員陣が私達にそっと話してくれた事があった。

入隊して20日間の基礎訓練も終わり検定試験が実施された。陸戦の試験も無事通過し、実弾射撃の検定となった。

初めて実弾を扱うという事で胸騒ぎを覚えたものだった。海軍。ここでは主にイ式小銃が使用されていた。銃身が少し長い事もあり飛距離は出るものの銃口が振れて的中率が悪く、上手に使用出来ない者には三八式歩兵銃が渡された。

当然だが私も、この仲間に漏れる事なく入っていて三八銃は扱い易く感じた。それでも命中せず枕木使用で、なんとか最小点で合格し班長も笑顔を見せて下さり嬉しかった。教員補が本当に心配してくれていた。

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