7 杯目 打電

SIDE 石丸いしまる 比地大ひじた


 何かしらの共闘的行動に向けた合意が図れそうだ。うどんには必ず歯応えがあるように、友人たちとのやり取りには手応えがあった。

 私が従前じゅうぜんから認識していた通り、我々は共通のものを愛するとはいえ、各々主義思想が異なる。これは親密な関係を築いてこなかった理由の一つであり、互いの意思の否定による将来の損失を招きうる不測の事態の発生を回避すべく、相互の指摘は行ってこなかった。少なくとも私の側はそう心がけてきた。今回の問題に対し相互の協調をどこまで測れるかを懸念していたのだが、反応を確認したところ、謎マナー及び当該講師に対し不快な感情を抱き、かつ何らかの対応を求める意向があるという点は皆共通していることが分かった。従って、我らが何らの共闘的行動も取ることができない状況には至らない、と判断した。


 このような状況下では、迅速な対応が重要である。個人レベルで世界に向けて情報発信ができる現代において、うどんに対する間違った知識の芽は早急に摘み取らねばならない。であれば全国の同朋との意見交換はオンラインで行うことが望ましく、急遽日程調整を進めることにした。私レベルでは全ての愛好家と連絡を取ることは到底できないが、ひとまず現状で連絡の取れる方々に声をかけることにした。いすれも羽州稲庭うしゅういなにわ大学、国際信州学院大学など、和麺の名産地にある大学の学生である。ともすれば地元の麺ばかりに目が行きがちな地元志向の我々が全国規模の問題について語り合う初の試みは、果たして上手くいくだろうか。いや、何としても前進させなければならぬ。

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