第8話 パーティー編成
パーティー編成
道すがら、ガレルさんからダンジョンのレクチャーを聞く。
「ダンジョン、最初は怖くない。でも、階層主、化物! おら、ここのダンジョン知らない。でも、サラサ、そうだった」
「それで、あなたは、その、サラサってところで、階層主を倒した事があるの?」
お嬢様が、素直に疑問をぶつける。
うん、それが最も重要だ。
「いや、逃げた。今でも思う、あれ、正解。あの時、亜人とヒューマだけ。回復役、居なかった。でも、今回、エルフ居る! お前、回復魔法使える! おらも、少しだけど、強くなった!」
なるほど。何となくだが、理解できる。
ガレルさんは、更に続ける。
「これ、サラサの話。ここと同じか、分からない。階層主、火を吐く。そして、火、効かないらしい」
ぬお?
これは聞いておいて良かった!
お嬢様のメインの攻撃魔法は火魔法。風魔法も使えるけど、若干劣るようだ。
また、光魔法は、支援系統がメインで、攻撃系統は少ないと聞く。
ちなみに、僕の使える水魔法は、今の所、攻撃系統は皆無だ。専ら、家事に使用している。
また、土魔法も同様だ。地面を盛り上げたり、穴を掘ったりできるけど、攻撃とは呼べないだろう。
その後、ダンジョンでの、最低限の準備の事を聞いたが、これは直前でいいはずだ。お嬢様の手持ちも不安だし。
そうこうしているうちに、街の門まで来た。
しかし、ここも何やら騒がしい。来る時は、いつもの衛兵が居るだけだったのに、真っ黒なローブを着た魔法兵が、杖を手に集まっている!
そして、門の外からは、担架に乗せられた、魔法兵と見られる人が数人、担ぎ込まれて来た!
「おい! 大丈夫か?! ヒール!」
「貴様らはここを死守しろ! 絶対に街に入れるな!」
「「「「「はっ!」」」」」
担ぎ込まれた人に、すかさず衛兵が回復魔法をかける!
その横では、真っ赤なローブを纏い、ハの字の髭を生やした男が、10人程の魔法兵を前に、号令をかけていた。
すると、ガレルさんが僕の背後に回り、小声で話しかける。
「あれ、ブネ伯爵。イステンド軍、司令官」
なるほど、あの人が悪評高き、ブネ伯爵と。
伯爵で、しかも、この街の軍を任されているのなら、確かに権力ありますよね~。
そんな地位なら、この街から追放とかも可能だろう。
しかし、今はそんな場合じゃないようだ。
何かあったのは間違いない!
お嬢様が、回復魔法を唱えていた、いつもの衛兵さんに声をかける。
「あの、何があったの?」
「あ、デュポワ準爵ですか。いえ、この先に、魔物が出たそうなんです」
「え? でも、この辺りの魔物なら、貴方達だけでも充分でしょ?」
「いえ、なんか、ヤバいらしいんですよ。とにかく、結界内に侵入されているそうです!」
げ!
それは不味い!
この先には、お屋敷がある!
お屋敷は、かろうじて結界内という場所なので、魔物の被害に遭っている可能性が高い!
しかも、魔法兵がやられたってことは……。
「そ、それで……」
更に、お嬢様が衛兵さんに質問しようとした時だ!
背後から声がかかる!
「お、ガレルではないか! ふむ、これは丁度いい。おい、貴様! 今から、あの魔物を倒せとまでは言わん! 足止めしてこい! さすれば、あの借金、免除してくれるわ! そして、分かっているだろうが、貴様に拒否権は無い!」
ガレルさんは、縋るように、僕達を見る。
この街の守備隊に属する魔法兵は、エルフの中でも精鋭と聞く。
それが、今や担架の上だ!
これ、死ねって言っているようなもんだろ!
「ブネ伯爵、今の言葉に嘘はありませんわね?」
なんと! お嬢様だ!
「ん? 貴様、誰だ?」
「申し遅れました。私、クロエ・ヴァン・デュポワ準爵です。ここから先で暴れている魔物を足止めすれば、そこのガレルさんの借金はチャラなのよね?!」
お嬢様は、そう言って貴族風に一礼する。
「ほほ~、デュポワのところの小娘か。勿論、伯爵たる吾輩が嘘を吐く訳なかろう」
「では、魔物の特徴を教えて頂きたいわ。相手次第では、あたし達でも勝てるかもしれないわ!」
「ふむ、貴様も…、あ~、そういう事か。フハハハハ! このままでは、あのボロ家が危ないからな! では、特徴を教えてやろう!」
伯爵の説明によると、身長が3m程の、真っ黒な人型で、頭は羊のよう。鋭い爪で、周囲を薙ぎ払うらしい。
そして、何よりも重要な事は、魔法を反射するのだそうだ!
なるほど、確かに、エルフじゃそんなの太刀打ちできない。
エルフの攻撃は、魔法だけと言っていい!
しかし、アルク・フェイブルならばどうだろう?
ガレルさんが盾で防いでくれている間に、僕が攻撃、お嬢様にガレルさんの回復を任せれば?
うん、勝機はある!
どうやら、お嬢様も、僕と同じことを考えていたようだ。
顔を見合わせ、同時に頷く!
「分かったわ! じゃあ、ガレルさん、約束しなさい! この件が終わっても、あたし達に協力すると!」
「も、勿論する! おら、嬉しい! これが仲間!」
「じゃあ、そうと決まったら、パーティー組むわよ!」
「はい!」
「んむ!」
【パーティー編成中】
パ-ティーリーダー:クロエ・ヴァン・デュポワ 冒険者 貴族
パーティーメンバー1:ナタン 奴隷
パーティーメンバー2:ガレル 盗賊
う~む、お嬢様以外は、何とも冴えない職業ばかりだが、仕方あるまい。
ちなみに、こうやってパーティーを組めるのが、冒険者職のメリットだ。
更に、このパーティー内のメンバー同士では、範囲魔法による同士討ちが無効化される。
おまけに、倒した魔物の経験値が均等割りと、いいことずくめなのだ!
僕達は、にやつくブネを尻目に、門を出る。
すると、背後で門が閉じられてしまった!
まあ、理解はできるけど、なんだかな~。
「お前、その変な弓、強いのか?」
僕達が、魔物を探してきょろきょろしていると、ガレルさんが、僕の構えているアルク・フェイブルを指さす。
あ~、そういや、まだ説明してなかったな。
「至近距離からの実験だけですけど、ちょっと厚手の木の板を貫けましたね」
きっと、今の僕は、かなりのどや顔だろう。
「そ、それ凄い! なら、お前、攻撃任せる。おら、魔物の前で踏ん張る! と言うか、それしか出来ない。クロエ、回復頼む!」
うん、ガレルさんも、僕達と同じ考えのようだ。
「ええ、任せなさい! でも、ガレルさん、あたしの事はクロエ『さん』、もしくは、デュポワ準爵よ!」
あ~、お嬢様、今、そこ、気になされますか…。
「わ、分かった、クロエ…ッサン。おらの事、ガレルでいい。ところで、お前、矢、足りてるか? そこ、なんか落ちてる」
あっ!
そういや、家を出る時に、お嬢様が一本無駄撃ちしてしまったので、残りは2本しかない!
ダンジョンに潜る前に、武器屋で買うつもりだったのだけど、見事に忘れていた!
ガレルさんが指したところには、矢筒が落ちていた!
早速拾ってみると、中には、鉄の矢が20本ほどか? ぎっしりと!
う~ん、なんか違和感があるけど、これこそ天の配剤だ!
大方、逃げて来た冒険者が落としていったのだろう。
「じゃあ、二人共、慎重に行くわよ!」
「はい!」
「んむ!」
ガレルさんを先頭に、暫く道沿いに歩くと、もうお屋敷の前だ。
ん? いやがった!
羊頭の、漆黒の巨人だ!
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