アイスクリーム


アイスクリームを

ぺろぺろと舐めて

おれは最高な気分だった

おれの最高はとことん低い

「曇りのち晴れだなあ」

それだけで勃起する

普通ではない

それだけは確かなようだった

おれは普通になんか興味無い

こっちから願い下げだよ

「普通? そんなもん核弾頭に括り付けて成層圏まで飛ばしちまえ!」

そう恫喝する

おれの趣味は恫喝

よくスーパーマーケットのレジで恫喝するのだ

「だからあっ、お惣菜が半額になる時間帯を教えてくださいよ!」

そして出禁

まあ良い

この世にスーパーマーケットは腐るほどある

いつかきっと自分にぴったり似合う店に出会えるだろう

おれはアイスクリームをぺろぺろと舐めた

舐め放題だった

また勃起しかけた

「すうぐ勃起しやがるなっ、こいつは」

下半身を睨み付けた

「めでしょっ」

だが下半身はむくむくと隆起した

「言うことを聞かないとこうですよ」と言って持っていたカッターナイフでそいつを根本から削ぎ落とした

ぼと

おれの陰茎が重力に抗えず無様に落下した

ふん

おれはアイスクリームを舐めていた

舐め続けた

そしてこれからもそれをするだろう

動機は必要無い

何故ならおれたちは大いなる洗脳下にあるのだ

晴れ渡る空の下

アイスクリームをぺろぺろし歩いていると

道に大きな穴が空いているのを発見した

おれは思った

あの穴にだけは絶対に落ちまい

そして警戒しながら注意深く穴に落ちて複雑骨折になった

人生

それは予期せぬことの連続だ

こんな筈ではなかったってあと何回、言えば気が済むんだ?

おれは穴の中でアイスクリームを舐めた

相変わらず発見はある

例えば暗闇で頬張るアイスクリームはうまいとか


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