第5話

ひなさんにさっそく連絡をしてみた。

するとすぐに返事が来て待ち合わせ場所を決め向かうことにした。

しばらく待ってみてもひなさんは現れない。


「あれ?待ち合わせ場所間違えちゃったかな?」


スマホを開き場所を確認する。

銀の鈴の場所で間違いなかった。

あたしは辺りをキョロキョロしたがそれらしい人は見つからない。

仕方がないので連絡をしてみる。

すると隣に立っていたおじさんのスマホが鳴った。

あたしは恐る恐る聞いてみる。


「あのー...。もしかして...ひなさんですか?」


あたしの返事におじさんは笑顔で反応した。


「あっ!もしかしてえいなちゃんまぢ天使さんですか?」


えいなちゃんまぢ天使...その名前はあたしのSNSネーム。

大きな声で言われ急に恥ずかしくそしてひなって名前だったので女の子かと思ったがまさかのおじさんでビックリした。

おじさんと言ってもたぶん20前半だと思うけど。


「全く気づかなかったです!ひなさんが男の方だったなんて」


あたしはおじさんに向かって言った。

するとおじさんもあたしが女の子だとは思わなかったらしい。

絶対変な男かと思ってたみたいだ。


「えぇーっと!SNSの呼び方でいいのかな?天使さん?」


ひなさんはあたしの顔見て聞いてきた。

とりあえずオッケーをし待ち合わせ場所から離れてカフェに行くことにした。


「改めて、初めまして!ひなです!えいなちゃんを好きになって一年になります!」


ひなさんはコーヒーを片手に挨拶してくれた。

あたしもそれに続き挨拶をする。


「そう言えばえいなちゃんって去年の冬にネットで話題になったんですよね?でも一年前からひなさんはファン...どういうことですか?」


ずっと疑問だったことを聞いてみた。

するとネットで話題になったのはここ最近の話で元々えいなちゃんはひっそりとコスプレをしていたらしい。


あれが初めてではなかったんだ...。


「みんな勘違いしてるみたいでネットには初めてって書いてあるけど本当の初めては一年前なんだ!」


ひなさんがそういいあたしにカメラを見せてきた。

そこに写ってたのは今よりも小さくて本当に可愛らしい女の子、えいなちゃん。


「なんですか?この可愛さ!この世のものとは思えない芸術!なんでもっと早くえいなちゃんを知らなかったんだぁー!」


写真を見てあたしは絶叫した。

今のえいなちゃんがいるのはこの頃のえいなちゃんのお陰なのか!

昔のえいなちゃん、コスプレをしてくれてありがとう。

そして今のえいなちゃん、コスプレを続けてくれてありがとう。

あたしは一人神様に感謝した。


「それより天使さんはイベント初めてなんですよね?いろいろ準備とかしてきましたか?」


本やネットなので予習はしてきた。

夏は水分補給が一番大事。

と言うことでたくさんの飲み物を買う予定だしお金もできる限り小銭に変えてきた。

もちろんグッズを買うためクリアファイルや小さくまとめられる袋も用意し準備は出来てると言った。


「あの...天使さん、一番大事なの忘れてませんか?」


ひなさんが真剣な顔で前のめりになり聞いてきた。

あたしはカバンをガサゴソし何を忘れたのか一生懸命探した。


「カメラですよ!えいなちゃんのサークルに行くのはもちろんですが生でお写真を撮れる機会なんてこのイベントでしかないのですから!」


なんてことだ!生天使えいなちゃんを拝めることに夢中になってて写真を撮るという行為を忘れていた。


「どうしましょう。カメラなんてそもそも持ってなかった」


なんて失態をしてしまったんだ。

えいなちゃんを見れるのは嬉しいがイベントが終わったあとも撮った写真を手に楽しみたいのに。

そんなあたしの様子を見てひなさんは手を取りパッとお会計をしあたしを外に連れ出した。


「ひなさんどこに行くんですか?」


あたしの言葉を無視してひなさんは歩いた。

そして着いた場所はコンビニ。


「使い捨てカメラ!」


ひなさんにお礼を言いレジへと向かった。


「本当はスマホのカメラ機能でもいいんですけどね!えいなちゃんはそういう規定とかないから撮らせてくれますがせっかくならね」


ひなさんめちゃくちゃカッコいい。

あたしはひなさんの方を見てキラキラ目を輝かせた。

それから明日の買い出しや予定を一緒に考えたりしてあたしたちはホテルに戻った。


「それにしても天使さんはお若いのによくイベント近くのホテル予約しましたね」


ひなさんはあたしの姿を見て不思議そうにしていた。


「えいなちゃんに少しでも早く逢うためにめちゃくちゃバイト頑張りました!それにひなさんもここにするって言ってたので」


それを聞いたひなさんは嬉しそうに明日楽しみだね、もし起きれなかったら起こしてあげるからねと言いあたしたちはそれぞれ自分達の部屋に行った。



※今回の推しあるある


SNSだけで今まで絡んできたからお互い顔や性別がわからないときがある


初めて会うフォロワーさんにとても緊張するがすぐに打ち解けられる


イベントに詳しい先輩フォロワーさんがいるととても頼りになる


イベントに行くと決めたらホテルに予約を前もって入れて確保する

イベント近くのホテルか、なければカプセルホテル等を探す

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