Chapter20.ユゥリーラガナル
GM:皆さんが元の世界へ戻ると、湖の小島の景色は一変しています。その島こと樹は辛うじて生きていたというのが皆さんの認識だったと思うのですが、今はそれだけではなく、雄大な生き生きとしたユグドラシルの樹が生えています。
ヴォックス:「これを丸ごとシャロウアビスが飲み込んでたのかよ!」
レド:「はっはっ!なんだそれは全く!」
ナージェンカ:あ、タビットに戻ってるなあと思って見ています。
GM:あのユグドラシルの樹こそがリーラ。そして先ほどいたドラゴンよりも2回り以上大きいレッサードラゴンがガナルです。
門番:めちゃくちゃな幼なじみたちだよ…。
GM:さて、戻ってきた皆さんを待ち受けていたのはユゥスを拘束する数体のオーガ。動揺しつつも彼女の首に刃を押し当て、皆さんを牽制しています。
オーガ(GM):「動くんじゃねえ!この女がどうなってもいいのか」
ヴォックス:もうこいつら喧嘩を売る相手間違えすぎだろ…。
GM:するとオーガの背後から声がします。
???:「ちょーっとそれじゃ遅すぎるかもだよ?」
GM:声とともにオーガ達を瞬く間に切り捨てたのは、鋼鉄の糸団のメイ・ユロイド。彼女以外の団員もいます。
ナージェンカ:あ〜〜〜。
GM:彼女たちがユゥスを解放すると、ユゥスは皆さんやバイナル、そしてガナルを見て安堵の表情を浮かべます。
ユゥス(GM):「よかった…ああ、無事で…!」とバイナルを抱きしめます。バイナルはわたわたしています。
門番:ユゥスさんこそ無事でよかったほんま…。
ヴォックス:「ああ、えっと、助かった…で、あんたらなんでこんなとこに?って聞くのは野暮か」
メイ(GM):「本当に…本当に君たちについてきて良かったかもだよ。…あんな蛮族の雑魚に襲われてるとは思わなかったけど」
メイ(GM):「それじゃあ観念してもらおうか」と言って鋼鉄の糸団は武器を構えます。
門番:「えっえっえっ!?なんで!?」
ヴォックス:「そうだよなあ…そうなっちまうよなあ…」
ナージェンカ:そっか〜〜〜。
門番:「なんでですか!?皆さんはなんの目的でここに来たんですか!?えっ!?」
GM:正しい質問ですね。彼女たちの目的、逆になんだと思いますか?
ヴォックス:2つ可能性が。ユゥリーラガナルを追ってきたか、またはガナルを追ってきたか。
GM:なるほど。
メイ(GM):「なに、それは簡単だよ。ボク達はね、フレジア森林国からの公的な依頼で来たのさ。その内容はこうだ『この国に炎のブレスを吐くドラゴンがいる、そいつを退治してほしい』この国で炎は大罪だからね」
メイ(GM):「さあ、みんな準備して。ドラゴン退治と行こう」
ナージェンカ:身を固くします。
ユゥス(GM):「なっ…!!」
バイナル(GM):「ま、待ってくれよ!ガナルは母ちゃんの…俺の大事な友達なんだ!…殺さないでくれ!」
ナージェンカ:「彼はとても聡い竜です。無闇にブレスを吐いたりなんてしません。彼とは共存できます。なにより、フレジア森林国が誇りとしているユゥリーラガナルを作れるのは、ガナルさんたちだけなんですから」
メイ(GM):「ふーん、それでボク達にあのドラゴンの命乞いをしてるってことなのかな?」答え方を間違えればあなたの首が飛ぶんじゃないかと思うほどの殺気を放ちます。
ナージェンカ:「そ、そういうことに、なるんですけど」後ろを振り返りバイナルを見ます。
レド:「信用できない、だろうか?」
メイ(GM):「そりゃあ納得できないかもだよ。ね、話を聞いただけで剣を止めてちゃあ守れるものも守れないよ。ボクたちはそいつの作り方だって知らないわけだしね」
拳闘士(GM):「なあ大将」と鋼鉄の糸団から声が上がります。
メイ(GM):「みんなは黙ってて。いいかい、ボク達はここにドラゴン退治のために何週間もかけて来たんだ。この任務が成功するかでキングスレイとフレジアの外交問題が解決する可能性だってあるんだ。そんな話だけで納得なんかできない」
門番:「あ、あのガナルさんはユグドラシルのメリアの…つまり貴族の親友なんですよ…!それを、殺してしまって良いんですか!」
メイ(GM):「ふうん、貴族ね。ボク達はこの国の元首から依頼を受けてるんだけど。それに、メリアが貴族位にあろうと、結局この国の主体はエルフにあるんだよ」
ヴォックス:「ならなおさらやめた方が良いぜ!お前らが今やろうとしてることはつまるところエルフの誇りをぶっ壊そうってお話なんだぜ!」
拳闘士(GM):「大将、こどもに泣きつかれた時点で俺らの負けだって」
メイ(GM):「うるさあい!」拳闘士をぶっ飛ばします。
メイ(GM):「ボク達はドラゴン退治に来たんだ!ともかくそんなんじゃ全然弱いんだよ!」と、メイ・ユロイドも振り上げた拳の行き先がないという態度を露わにします。
ガナル(GM):「もうよい…お前たちの話は聞くに耐えない」
ヴォックス:「いいって、なにがいいんだよ?」
ガナル(GM):「戦いたいのであれば好きにすればよい…が。それでは我が友バームを困らせてしまう」
ナージェンカ:ぶんぶんと首を縦に振ります。
ガナル(GM):「少し時間をくれないか。ユゥス、リーラ、…バイナル。4人で話がしたい」
ヴォックス:「まああんたらだってアイツをやろうと思えばいつでもやれるんだろ、ちょっと話す時間くらいやれよ」
メイ(GM):「そうは言うけどね、空を飛んで逃げられるやつを退治するってのは結構骨が折れるかもだよ?」
ヴォックス:「まあ、そりゃごもっとも」
ナージェンカ:「ごもっともなんだ…」
GM:しばらくすると、バイナル・イラドが皆さんの前にスッと立ちます。
バイナル(GM):「あの、お待たせしました。…皆さんに、俺たちの話を信じてもらうために、今からユゥリーラガナルを目の前で作って見せます」
バイナル(GM):「そして、ガナルが絶対必要だってことを皆さんが証人として森林国に説明してください。ただし…くれぐれも製法は…内密でお願いします…あなたたちが立派な冒険者だというなら!…その名に誓って」
アナジア(GM):「メイ、これはもう私達の負けではありませんか?」
拳闘士(GM):「だから子供に泣きつかれた時点で負けなんだってうちの大将は」
メイ(GM):「うるさいうるさい!ならそれを見せてもらおうじゃないか!…もしもハッタリならボクは許さないかもだよ!?」
「じゃあ、皆さんお願いします…!」バイナルがリーラに手を添えながら声をかけるとユゥスを背に乗せたガナルがゆっくりと宙に浮く。ユグドラシルの若木、リーラの葉が風もないのにさざめき出す。その音は愛しい人に呼びかけるような心地よいリズムを奏で続ける。
メイ・ユロイドはガナルが飛ぶのをただ見つめながらじっとしている。
空高く上がったところでユゥスが魔力を込めながら魔晶石を宙に撒くと、それらはガナルの口へと吸い込まれていく。
すると、ガナルの角が煌々と輝きだす。よくよく見れば彼の口からはブレスの光が漏れ出し、陽炎がゆらめいている。
彼の口内で一瞬にして輝くほどに熱された魔晶石にユゥスがカロリアの技巧を施していく。
やがて、リーラの呼びかけに応じた光と水の妖精たちがわあっと小島の周囲に集まり、俄かに大気中のマナが濃くなっていく。そして作り上げられたのは巨大な橋だった。
誰も見たことがないような、濃く大きな虹がリーラの周囲にかかる。
そのアーチを滑りおりるようにガナルが飛び、虹の麓に熱された魔晶石を静かに置くと、楽しげな妖精たちがその周りで遊び出す。その虹の粉を浴びるようにして、ついに七色に光るそれは生まれた。
この一連の光景に、その場にいた誰もが呆気に取られた。追い続けてきたものも、人族未知の知識も、満身の疲労も全てをこのいっとき忘れ——。
ただ、彼らの美しい青春がこれからも壊されることのないようにと願った。
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