Chapter8.森を抜ければ

GM:では蜂の手番です。今回の戦闘は魔物の命中や回避のダイスは振らずにデータの固定値を使って処理していきます。レドを狙うので【回避判定】をお願いします。

レド:そぉーれ、14!


GM:はい、回避失敗。命中したのである判定をします…。さらにダメージも算出します…(ころころ)。

ナージェンカ:なんじゃ…。

門番:特殊能力があるタイプの魔物?


GM:あっ…。(魔物側の)出目がいいぞ…。つまり、これとこれを足して…レドは47点ダメージを食らってください。

レド:お、おお。鎧と練技で防護点11あるので36点HP減少させます。残り31点…!半分以上が持ってかれちゃったよ!


門番:(かわいた笑い)

レド:「おい!こいつの攻撃を1度でも食らうんじゃない…!」と言っても誰も聞こえんのか…。

ヴォックス:驚くけど音が聞こえないからなにがなにやら。



 巨大な蜂の攻撃をどうにか受け止めたレドを一同は見た。

 頑強な戦士である彼をして同じ攻撃をあと何度受けられるだろうか、まして自分が標的にされれば…。そんな想像がふとよぎった。


 だが、敵の方が速度に秀でていることはすでに証明され、加えてバイナル・イラド少年を連れたままでは到底逃げ切れるはずもないこの状況。

 冒険者達は各々の武器を握る手に一層の力を込めた。


 「やるしかない!」


 誰かが、あるいは複数の者が気合のひと声を出したが、蜂の出す耳障りな音によってかき消されてしまう。


 不意に——。


 辺りを埋め尽くしていた騒音が歪にシャットダウンされた。


 冒険者達が見据えていた蜂は頭からピシッと裂け、真っ二つになり、地面にぼとりと、落ちる。蜂の体があった場所には一本の剣が弧を描いていた。


 あっ、とナージェンカが息を飲み、目をしばたたかせる。


 背後から蜂を切り捨てたのは、「鋼鉄の糸団」団長、女剣士メイ・ユロイドであった。


 「うわあ。ギリギリセーフだったかもだよ。大丈夫?」


 次第に耳鳴りとともに聴力が戻って来た冒険者達は思いだす。


 「くそっ、大丈夫じゃねえ!まだ後ろからも!」

 と、ヴォックスが指差す先からは先ほどの蜂が出していた羽音が幾重にも聴こえてくる。いったいどれだけの数がやってくるというのだろうか。

 

 「第2波来るよ!サンジェス、彼らを守って!アナジアは僕たちに強化魔法を、ケンは僕と突っ込む!最後はルーロイいつものやつで任せたよ!」

 メイ・ユロイドは仲間たちへ指示を飛ばし、誰よりも速く音がする方、蜂の群れへ向かって駆け出した。


 そこから決着までは20秒ほどもかからなかった。


 高速で接近する蜂の先鋒数体を前衛2人が薙ぎ倒し、彼らを囲むように広がった残りの一団は吹雪の妖精魔法によってあっさりと仕留められてしまった。



メイ(GM):「危なかったね」

門番:「はあああぁ…助かったぁ…」

レド:「いや…命を拾ったな」

門番:「ああ、バイナルくん無事かい?」


GM:バイナルは言葉にならない声を上げながら尻餅をついていますね。

門番:つられてアワワワワってなります。


ヴォックス:「門番お前もかよ…!ああほら…立てるかバイナル?」

バイナル(GM):「あ、あ、ああ…」

門番:「だって本当に死ぬかと思ったよ。レドさんも“ボロボロ”だし」


ナージェンカ:「レド、大丈夫…?」

レド:「大丈夫だ。まだ…“ボロ”くらいだ」

ナージェンカ:とりあえずレドを神聖魔法で回復しておこうかな。

GM:はい、どうぞ。

ナージェンカ:(ダイスを振る)ではレドさん7点回復しておいてください。

レド:ありがとう〜。


ヴォックス:「一応、礼は言っておくぜ…」

GM:そうですね、じゃあ礼を言ってください。といっても鋼鉄の糸団の面々は「まあ気にするなよ」という雰囲気ですが…。


メイ(GM):「僕たちはこのままフレジスファ原初都市に行くけど。君たちも行き先が同じなら、僕たちと一緒に来たらいいかもだよ?」


ヴォックス:「うーん、まあ確かに行き先は一緒なんだが…」この人らを完全に信用して良いものかな。

門番:でも次同じような魔物が現れたら…。


メイ(GM):「しかし…森の中をどたばた走ってる気配がしたから様子を見にきたら、君たちが蜂とやりあってたからさ。君たちってとっても運がいいかもだよ」


レド:こっちに来るように誘導したのってバイナルくんだっけか。

ナージェンカ:そういえば様子がおかしかったね。

ヴォックス:もしかしてこれってバイナルのことを探ってる?

レド:どうだろ…深読みかもしれないけど深読みって楽しいよね!

ルカカフィーネ:わかるけども(笑)


ヴォックス:「いや〜、もうすぐ都市だって言うから誰が最初に着けるか勝負してたんだけどよお!まあ、こういうのも冒険の醍醐味だよなぁ!」とりあえずメイにはバイナルのことを誤魔化しておこう。


門番:「は、はは!…おお、おかげで大変な目にあったんだから…」


メイ(GM):「ふーん…」


GM:では皆さんは誤魔化し…。誤魔化せたかはわかりませんがともかく、鋼鉄の糸団と同行してフレジスファ原初都市を目指します。



GM:密度の高い森を3日ほど歩いていくと開けた場所にたどり着きます。巨大な都市、ここがフレジスファ原初都市です。目の前に聳え立っているのは直径600m、高さ100mもある切り株。

ナージェンカ:おお。


GM:更にその上に300m程もあるささくれだった枝や細い幹のようなものが伸びている。その規格外の大樹が都市として機能しているんだね。ドワーフが山を掘り進めて巨大な棲家にしているように、この都市は活動を終えた樹をそのまま利用して作られている。これがフレジスファ原初都市の姿です。


門番:「なんだい、これ…!樹?いや、街…!?」

ヴォックス:「おいおいグフルミア村何個ぶんだこりゃ……」

レド:「ははっ、何個ぶんだろうな」

バイナル(GM):「キングスフォールと全然違う…こんな街があるのかよ…」


ナージェンカ:「すごい、すごいね」と都市とみんなを交互に見ます。

ルカカフィーネ:「そそそそうよ!どう…?こここれがエルフの御業ってわけよ!!」

レド:お前も初めて見たな!?


ヴォックス:「なんでお前が驚いてんだよ…」

ルカカフィーネ:「だって、ヤバっ、ヤバくない?」

ヴォックス:「ヤベーよ!これスゲーじゃねーか!」

ナージェンカ:「はー、絵が描けたら良かったんだけどお」


門番:「はぁ、とにかく助かったあ…ここならもう魔物、いないですよね?」

レド:「どうかなー?」

門番:「怖いこといわないでくださいよ!…ああ、帰りのこととか考えたくないな…。僕もうここに住もうかな」

ヴォックス:「これだけでかい街ならでかい家に住めそうだな」


GM:まさに圧倒されるような壮大な光景です。それでは入っていきましょう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る