第7話 手平町民大会編⑦~VS陣ライガ③~

 こんなの知らない。

 ゲームにも漫画でもアニメにも、こんな事なかった。

 有り得ない、有り得ない、有り得ない。


「うおりゃあ!!!!!! いてまえ~!!!!!!」


【みゃ~!!!!!!】


「あっ……、ムギ!! 回避!!」


 有り得ない出来事に戸惑っていたアタシはムギの一声で現実に戻ると雷を纏うライジンタイガーの拳を避ける。

 空を切った拳はバリバリと派手に音を立てながら地面にぶつかるとその衝撃でコロシアムが強く揺れた。

 もしまともに、いや小判の盾でこの攻撃を受け止めていたら場外に吹き飛ばされていたかも……。


「チッ! 上手く避けられたか……。だが、次はあらへんで!! もう一発いくで、虎徹!!」


【あいよ!!】


 また雷を纏った拳が襲い掛かる、最初の時と違って雷が小さい。

 ライジンタイガーが装備してる両手専用スキル・達人の拳は一気に攻撃力を上げる代わりに攻撃する度に攻撃力が低下するスキルだったはず。

 もしかしたら、今度は小判の盾で受け止められるかも。


「ムギ! 盾を構えて!」


【みゃっ!!】


「どっせい!!」


 ゴォン!! と鈍い音が辺りに響く。

 アタシの読み通り、威力は弱くなってるけど受け止めた瞬間、強く揺れた、頭がクラクラする。

 これは盾で受け止めるんじゃなくて避けた方が良かったかもしれない。


「・・・・・・あんさん、今、発動してるスキルがどういうもんか知ってるみたいやな。ホンマ、初めてまもないバトラーとも思えん」


「一応、バトラーとして一部のスキルを覚えてるだけよ」


 さすがに今回は何か言わないと怪しまれそうな気がして当たり障りのない返事をする。

 アタシの返事に陣ライガは「ふ~ん」と興味なさそうに返した。


「まあ、あんさんが新人でも玄人でもバトルに勝つには関係ないか。

 脚部スキル・スピードラッシュ発動!! ガンガンいくで!!!!!!」


 此処でスピードが上がれば上がるほど攻撃力を上げるスキルを!?

 本当にコイツは陣ライガなの!? 陣ライガはライジンタイガーの固有スキル・ビーストモードを過信してフリースキルを装備しない、ビーストモードで相手を倒してきた。それがアタシの知ってる陣ライガのバトルスタイルだ。

 主人公・ホノオとのバトルではビーストモード発動中に倒すことが出来ず、発動中に倒せなかった事からのショックと解除後の弱体化を補うスキルを装備してなかったせいで主人公に負ける展開になっている。


 だから、アタシは解除後を狙って攻撃した。陣ライガがフリースキルを装備していないと思っていたから。

 どうする? どうやって倒す?

 解らない、解らない、解らない!!!!!!


――――――


『ホノオ選手、先程の鮮やかな動きと打って変わって動かない!! 一体どうしたんだ~!?』


「ホノオ、どうしたのよ。あれだけ動いてたのに今は小判の盾で攻撃を防いでるだけじゃない」


「小判の盾の蓄積ダメージを貯めているという訳ではなさそうだね」


 前半、スキルを巧みに使いビーストモード時の強烈な攻撃を防いでいたが今はただ攻撃を防いでいるだけ。

 このままではコロシアムから出てしまう、そんな危機的状況だと言うのにホノオは何もしない。

 この場に居る誰もが思った。


――これは溫井ホノオが負けると。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」


「ヒバナちゃん!?」


 そんな雰囲気を感じ取ったのかヒバナは居てもたっても居られなくなったのか立ち上がるとコロシアムに向かって駆け出した。


――お姉ちゃんが負けるわけない!! だって、ヒバナと約束したから!!


 泣くのを堪えながら必死にヒバナは走る。姉の近くに行くために応援する為に。

 その途中、誰かとぶつかってしまった。


「貴方、大丈夫? 怪我は?」


 勢いよく走っていたせいで盛大に後ろに転んだヒバナを、ヒバナとぶつかった人物は優しく起こすと強く床とぶつかった場所を安心させるように撫でる。


「は、はい、大丈夫です。ぶつかってごめんさない」


「ふふ、大丈夫よ。お姉さんもコロシアムの近くに行かないと思って走ってたから」


「お姉さんもお姉ちゃんの所に?」


「お姉ちゃん? もしかして、貴方は溫井ホノオさんの妹さん?」


「はい、溫井ヒバナって・・・・・・ 「ヒバナちゃん! いきなり走って・・・・・・、貴方はマオさん!?」


 走り出したヒバナを追いかけてきたマフユがヒバナとぶつかった人物、大麓マオに驚きの声を上げる。

 そこでヒバナは自分とぶつかった人物があの入り口の騒動で勇気ユウマと一緒に居た人物だと気付いた。


「あら、マフユくんじゃない。丁度良いわ、私、この子と一緒にコロシアムの近くで溫井ホノオさんの応援をしに行こうと思ってるの、心配してる子が居たら伝えてちょうだい」


 突然の提案に今度はヒバナが「え?」と驚きの声を上げ、マオはそんなヒバナを見て良いでしょ? とウィンクをした。


「え、ええ、良いですけど。ヒバナちゃんはそれでいいのかい?」


「・・・・・・行く、ヒバナ、お姉ちゃんの応援に行きたいからお姉さんと一緒に行く」



――――――


お知らせ


テノヒラロボ解説書に登場テノヒラロボ(名前だけ登場ロボも含めて)一覧追加しました。よろしければ見て下さい!!


https://kakuyomu.jp/works/16816452219199277367

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