第3話 手平町民大会編③~勇気ユウマという男~

 金髪に蒼い目、甘いマスク、何処かの国の王子様かのような風貌の美少年、彼こそが勇気ユウマだ。

 近くに居るだけでキラキラオーラが凄い、眩しい! 目が潰れる! いや、本当にマジで輝いて見える。

 これが二年連続世界チャンピオンの力!!(そんなわけない)


「博士、遠くから態々来てくれたのだから認めてもいいのでは?」


「ユウマくん、だかね認めてしまったら・・・・・・」


「博士の言いたい事は解ります、次回の開催時に出場させろと言ってくる人が出てくるかもしれないからですよね。それならば、次回から手平町民以外の人でも参加出来る枠を人数限定で作ってしまえばいいじゃないでしょうか?」


「成る程、あらかじめ作っておけば言う人も出てこないという訳だね?」


「ええ、選出方法は博士達に任せますがそうすれば大丈夫だと思いますよ」


 お~、上手く纏めた。

 言ってくる人が居るならば最初から出場出来る枠を作れば、選出内容によっては言ってくる人は居るかもしれないけど大丈夫そうだな。

 すらっと対策を言ってしまうとは、恐るべし勇気ユウマ!!


「今回は勇気ユウマくんの招待枠として特別に参加を認めよう」


「ホンマか!? やった~!!」


「ボクは参加しませんよ、参加するのは兄さんだけでお願いします~」


「え~、参加するぐらいええやん」


「ボクは兄さんみたいに図々しくなりたくないんで・・・・・・」


「なんやと~!!」


「こらこら、喧嘩は止しなさい!!」


「ふふ、元気だね。僕達はこの辺で、行こう、マオ」


「ええ」


 参加が認められた後、喧嘩を始めた陣兄弟を尻目に勇気ユウマは大麓マオの手を取り控え室へと戻っていった。

 もう一度、言おう、

 見間違いかなと思って、二人を凝視しているとまた大麓マオと目が合う。

 あの時みたいに電流が流れるような感覚はなかった、けど、ハッキリと解ったのだ。

 彼女、大麓マオとアタシは同じ存在――転生者なのだと。


「あの二人の仲の良さにびっくりしたかい?」


「あっ、う、うん」


 呆けてたら雪野マフユに声をかけられて我に返る。

 二人の仲の良さって事は・・・・・・。


「マフユくん、あの二人、勇気ユウマさんと大麓マオさんは付き合ってるの?」


「お互いに明言はしていないけどボク達は付き合ってると思ってるよ。ユウマさんとマオさんは四六時中、一緒に居るからね」


 ハッキリと言ってないけど、常に一緒に居るって事は付き合ってる可能性はあるな。

 う~ん、ライバル関係でも男女だと恋愛関係に発展するのかな? そう考えるとアタシと雪野マフユもそうなる・・・・・・、いや、ないな、自分で考えた癖に鳥肌が、それにアタシみたいな女とは絶対、雪野マフユは付き合わないだろうし!! アッハッハッハ!!


(ホノオさんが気にしているって事は・・・・・・、ユウマさんの事を!? いや、それはない、でも、ユウマさんが帰ろうとした時、じっと見詰めていた。やはり気があるのか!?)


 アタシの隣で雪野マフユがそんな事を考えていたなんて、当時のアタシは知らなかった。


――――――


※大麓マオ視点。


「ユウマ! 痛いから、少し力を緩めて」


 ユウマに引っ張られるように控え室に向かう。

 いつもなら、直ぐにごめんと言って力を緩めるのに今回はしないって事は怒ってるな。

 そのまま、無言で控え室に向かうのかと思っていたら、急に立ち止まってぐるりと私の方を向いた。


「マオ、どうして、を置いて出て行った! おかげで俺は、あの女記者にベタベタと触られたんだぞ!!」


 怒ってる理由は控え室でユウマに取材をしていた男女の記者二人組の片割れが原因か。

 妙に色っぽい格好してると思ったらユウマを誘惑しようとしてきたって訳ね。理由は解らないけど15歳相手に何をしてるんだ、あの女は。見た目からしていい歳だと思うけど。

 今はそんな事を考えてる場合じゃないわ、不機嫌のユウマをどうにかしないと。


「全く、一緒に来ていた男性記者が止めてくれたから良かったものの不快でしょうがなかったよ。どうして控え室から出て行った!」


「それはご愁傷さま。だけど、私に出て行けと遠回しだけと言ったのは、あの女性ひとなんだけど」


 そうユウマが取材を受けている間、私はユウマの隣に座っていた。それが気に入らないらしく、ずっと睨付けられていた。

 ユウマを狙っている子によく睨付けられたりしているから慣れっこだったけど、遠くから騒ぐ声が聞こえ始めた途端。


――騒がしいわね。どうしたのかしら?


 そう言って、私をチラリと見てきたもんだから、少しムカっとして見に行ってくると控え室から出た。

 ユウマは私が出て行った理由は察しが良いから言わなくても解っているけど、ベタベタされたのもある、でも一番嫌だったのは自分に許可無く出て行った事だろう。

 昔からそうだ、ユウマは私が離れようとすると絶対に放さない、理由を言っても自分が納得しなければ放してくれない。


「そうか。今後、あの女性が居る場合のみ、彼らの取材を断るよ。名刺も貰ったし、俺の方から雑誌の編集長にその事を伝えてみよう」


「そうしてくれると助かるわ。ところで取材は?」


「さすがに俺が不機嫌なのを男性記者が察してくれてね、続きはまた後日になったよ。

 マオ、何度も言ってるけど俺の許可無く傍を離れるな、いいね?」


「・・・・・・解ったわ」


 ユウマは私の返事に満足してニコリと笑うと手を放して鼻歌を歌いながら控え室に戻る。

 私はユウマの機嫌が直ったことに安堵し息を吐くと、あの時、目が合った赤い髪の少女を思い出す。

 一回目は電流が流れるような感覚を、二回目で彼女が私と一緒だと何となくだけど解った。


 彼女、赤い髪の少女も私と同じ、前世の記憶を持っているのだと。

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