第8話

 広がる草原。

 宙に浮くメカカメ。


 ムギを通して競技用フィールドを見渡す。

 コロシアムとは全く違う雰囲気に飲まれそうになる。

 いや、飲まれちゃいけない!! 頬を少し叩いて深く息を吐いた。


「ムギ、今回はバトルじゃないよ。競技をするんだ」


『みゃ?』


「まだ解らないと思うけどやってみれば解るよ、それじゃあ、競技用スキル展開!!」


 スキルを発動するとムギの手にプライズと同じ弓が現れる、ムギはみゃっ!? と驚いた反応を見せた。

 それにしても、猫の手でどうやって弓を持ってるんだ? 不思議でしょうがないけど、今はそういう事を考えてる場合じゃない。


「ムギ、黒い的は当てちゃダメだからね。しっかり、アタシの言うことを聞いて動いて、解った?」


『みゃっ!』


 解っているのか居ないのか元気よくムギが返事をすると開始の合図が鳴った。


――――――


「ふうん、ボクと同じやり方をするって訳か・・・・・・」

 

 赤い的を狙いに絞り矢を放つ姿を見てマフユはホノオが己と同じ戦法で行く事を悟り笑う。


「ええ、そのようですね。ですが、あれでは・・・・・・。」


「ハナは解っているようだね。ああ、あのままではボクが獲ったポイント10000点の半分にも届かない」


 マフユが赤い的ばかりを狙う戦法が出来たのはマフユが使用するロボ、ブリザードドラゴンが最速を誇るスピードタイプというのもあるが、10分経過する度に増え素速くなる的を狙うことが出来たのは的のスピードについてこれるスピードでかつ正確に的を狙うというマフユの天才的な操縦も合わさって出来た戦法なのだ。

 つまり、ホノオには出来ない戦法と言っても過言では無い。

 だが、それだけではない。


 ホノオが操るネコノコバンは重量級のガードタイプ。防御は高いが重い機体であるがゆえにスピードが遅いロボだ。


「もし、彼女が、溫井さんがこの事に気づけたならもしかしたら・・・・・・。ふふ・・・・・・」


「・・・・・・溫井さん」


(でも、ボクの勘が告げている。彼女はきっとこのままでは終わらないと!!)


 心配そうにホノオを見つめるハナ、それとは対照的に期待に満ちた目で見るマフユはホノオの動向を見守るのであった。


――――――


【10分経過、スピードを上げます】


「よしきた! ムギ! これから早くなるから気をつけて!」


『みゃっ!』


「赤い的は・・・・・・、早くて狙いが定まらないな」


 的のスピードは雪野マフユがやっている時に解っていたけど、結構なスピードになっている。

 これは難しいぞ。でも、やるしかない。


「あっ! ムギ、右の方に赤い的!」


『みゃみゃ!』


 ムギが赤い的に向かって矢を放つが外れてしまう。

 スピードが速くなった分、狙っても外れやすくなってるのか!?

 だったら、スピードを速くする競技用スキルは・・・・・・あった。


「競技用足パーツスキル展開! これでスピードが上がるよ! 次は左!!」


『みゃ~!』


 今度は・・・・・・・、ダメだった。

 スピードを上げるスキルは無事に展開されてるのに、何が足りない?

 確か、雪野マフユはブリザードドラゴンのスピードを上げて的に当てやすくしていた、いや、でもアタシもムギに速くなるスキルを展開したんだから同じを事をやってる、何が違うんだ?

 アタシのムギになくて雪野マフユのブリザードドラゴンにあるもの・・・・・・。


 そうか! タイプが違うんだ!!


 元々素早さが高いスピードタイプのブリザードドラゴンなら速さに対応出来たけど元からスピードが遅いムギはスピードを上げてもブリザードドラゴンには届かない。

 だったら、どうする? どうすればいい?

 スピードがこれで限界ならプリザードドラゴンのように赤い的だけを狙うって戦法は出来ない。

 そうだ!!


「ムギ、アタシが放ってって言うまで待ってくれる?」


『みゃ?』


「待てる?」


『みゃっ!』


「うん、良い子。よし・・・・・・」


 アタシは注意深く動く的を見る。

 一瞬でも逃さないように見る。


「!! よし!! ムギ、ちょうど真ん中、的が重なる!! 放て!!」


『みゃ~!!』


 ムギが放った矢が2つの的を打ち抜く。

 的は2つとも1点しか入らない黄色の的だけど贅沢は言ってられない。


「ムギ! このまま重なる的を狙うよ!!」


『みゃっ!!』


 これで雪野マフユに勝てるどうか解らない。

 だけど、これでやるしかない。


 負けるのは嫌い、特に一番嫌なのは何もしないままで負けることだ。

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