第6話

――約束の日。


 はーい、皆さん、お元気でしょうか?

 アタシは二日間の地獄のようなトレーニングを頑張って耐え抜いて、今、魂が抜けそうです。


「お姉ちゃん? 大丈夫? 具合悪いの?」


「ヒバナ、大丈夫だよ。ちょっと走馬灯を見てただけだから」


「そーまとう?」


 疑問符を浮かべ首を傾ける妹の可愛さよ。

 その可愛さに癒されたアタシは頬を叩いて気合いを入れる。


 あと数分でアタシとは逆方向、ライトダイブエリアでニヤニヤと嗤っているヤンキーと戦う。

 始めてのロボバトル、絶対に勝たなきゃいけない。

 アタシを応援してるヒバナに寧々子さん、それにアタシを二日間鍛え上げてくれた雪野さんと江良博士を裏切れないから。


「さて、これよりバトルを始めるが・・・・・・。お互い準備はいいかな?」


「大丈夫です」


「んな事、いちいち確認すんなよ!! ジジイ!!」


「・・・・・・・・・・・・では、ダイブエリア起動!!」


 ただ確認しただけなのに暴言吐かれた、今回の対戦見届け人の江良博士は思いっきりヤンキーに向けて冷たい視線を送りながらも冷静に事を進める。

 ダイブエリアが輝くと設置台が現れ、其処にロボフォンとロボを設置すると。


『レディースエンドジェントルメン!! 今、寧々子さんのデート権を懸けて火花散る熱い戦いが始まる~!! 実況はこのジン・キョーがお送りするぜ~!!!!!!』


 ホビアニあるある? 突然の実況が始まった。


 そのせいか人がチラホラと此処に集まってくる!!

 やめて、マジでやめて!?

 コッチに注目しないで!!


「はあ~、なんで、彼が此処に。まあ、今に始まった事じゃないか」


(いや、今に始まった事じゃないよ!!)


『お二人さん? 準備はいいかな!?』


「は、はひ!!」


『レフトコーナー・溫井ホノオ選手!! ライトコーナー・阿久あくマサオ選手!! 今、両者の戦いの火蓋が切る!! レッツ!! シンクロダイブ!!』


 ジン・キョーの合図と共にシンクロダイブ、この意識が引きずり込まれる感覚はまだ慣れないなと思いながら仮想空間コックピットへ、そしてネコノコバンことムギを起動した。


「ムギ、よろしくね」


【みゃ】


 二日間のトレーニングで親好度が上がり少し喋れるようになったネコノコバンのムギ。

 ムギという名前は猫の名前ランキング一位から取った。

 名前付けの経緯は、このテノヒラロボに関して重要な部分ではあるが時間が無いので省かせてもらう。

 さて、相手は・・・・・・。


【ギャアアアアアア!!】


 咆哮を上げる機械仕掛けのティラノザウルスモチーフロボ、メカティラノ。

 強力な攻撃が売りのスピードアタッカー。


『ホノオ選手のテノヒラパートナーはネコノコバンのムギ!! 対するマサオ選手はメカティラノ!! どんな戦いを見せてくれるのか!? バトルスタート!!!!!!』


「オラッ!! 一方的にやられろ!! メカ! 噛みつけ!!」


【ギャアアアア!!】


「フリースキル全展開!! 武者セット発動!!」


【みゃ~!!】


 頭部、両手、両足が光り輝き歴史上に出てくる武者の姿になるとムギいやネコノコバンの固有スキル・小判の盾を背中から外し、メカティラノの噛みつき攻撃を防ぐ。


「はあ!? お前、初心者のくせにスキルなんて使ってんじゃねえーよ!! ふざけてんのか!?」


 何を言ってるんだコイツ? 使うよ、使わせてよ。初心者はスキル使うなって横暴だよ。

 もしかして初心者だからスキル使わないと思ったのか? だからアタシをバトルの相手に選んだ? いや、絶対にそうだ。寧々子さんにカッコイイ所、自分がバトルで勝った所を見せたい為に選んだんだ。

 確かに自分より弱い相手なら確実に勝てる。

 だけど、それをカッコイイと言えるのだろうか、きっと、このヤンキーは解ってないと思う。


「くっそムカつく!! メカ!! スクラップにするまで攻撃だ!!」


【ギャアアアアアア!!】


 メカティラノは咆哮しながら連続噛みつき攻撃を仕掛ける。

 速い!!

 此処は・・・・・・。

 

「ムギ!! 小判の盾を使いながら避けるよ!!」


【みゃっ!!】


────


『メカティラノの連続噛みつき攻撃!! 速い! 速いぞ!! ムギは防戦一方だ!!』


「凄いね、あのメカティラノ。勝つのはメカティラノの方かな」


「それはどうでしょうかね?」


「え?」


「よ~く見なさい。このますココミの助手ならテノヒラロボの知識は持っていていなくてわ」


 観客席に座る桝ココミと名乗った眼鏡の少女は隣に座る何処にでもいる普通の少年――月下つきしたカイにそう言うもカイは訳がわからないという表情をする。

 そんな彼にココミは「はぁ~」とワザと深い溜息を吐いた。


「ネコノコバンのフリースキルはシリーズものです、一個一個のスキルはただ攻撃力や防御力などを少し上げる程度ですが全て揃え全展開させる事により全ステータスをそれなりに上げる事が出来るのです」


「そうなんだ」


「全く、少しは勉強しなさい。それに、あのメカティラノ使いはネコノコバンのスキルを知らないんですかね。ワタクシだったら絶対に強力な連続攻撃しませんよ」


「それはどういう・・・・・・」


「まあ、見ていれば解りますよ」


 ココミはニヤリと笑うとコロシアムにカメラを向けて撮影を始め、カイは不思議そうにしながらもココミ同様にコロシアムに目を向けた。

 

 

 

 

 


 

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