第四話 心得

「うぅ……」


「おはよう、佐藤君」


 僕は……。


「やっぱり死んでも生き返るんだね」

「僕もその仕組みを解明して、なんとか……」


 殺されたのか。

 こいつ、相当ヤバいやつだな。

 言うとおりにしないと、殺すだなんて。

 いくら生き返るといっても、何度も死にたくない。

 それに、シャロールを助けられない。

 覚悟を決めて……。


「もう始めていいか?」


 一人で考え事をしている龍人に話しかける。


「ああ、わかった」

「ガイオンー!」


 再び入り口からガイオン……っていう人が出てくる。


 ここから再開か。


 さて、どうしようか。

 見たところ、ガイオンは武器を持っていない。

 それなら、僕も素手で……。


「うおっ!」


 急に風が吹いた。

 さっきまで無風だったのに。


「うわわっ!」


 再び風が吹く。

 強風に倒れかける。


「……え、これって……」


 ガイオンが三度拳を振るう。


「まずい!」


 なんとか避ける。

 すぐ隣をものすごい速さの風が通っていった。


 これで確信した。

 この風は、ガイオンが出している。

 拳を振ったときの風圧で。

 恐ろしいやつだ。


 ってことは、直に殴られたら……。


 背筋がゾッとした。


「仕方ない……」


 本気を出そう。


 勇者の剣よ、出てこい!


「おおっ!」


 手の中に、漆黒の剣が現れる。

 久しぶりだ。

 あのとき以来、使うことがなかったが、まさかまた使う日が来るとはな。

 しかし、この剣危ないんだよな。

 前はシャロールが止めてくれたが……。


「あ」


 そんなことを考えてる場合じゃねぇ!

 ガイオンが間近に迫っていた。

 僕はとっさに剣を構える。


 ガッキィィン!!


 ガイオンの拳が剣を打つ。

 強い衝撃が僕の体を駆け抜ける。

 おいおい、これ勇者の剣だぞ。

 それを素手で殴るなんて。

 剣は壊れてないが……。

 クソ、押されてる。

 このままじゃ……。


「佐藤、頑張って!」


 シャロールの力強い声が聞こえた。


「無駄だよ、シャロールちゃん」

「今シャロールちゃんのスキルは、使えないからね」


「頑張ってー!」


「応援するだけ無駄だよ」


 いや、そんなことはない。


「ありがとな、シャロール」


 おかげで思い出したよ。

 勇者の心得を。


 まずは情熱。


「シャロールを守りたい!」


 剣がうっすらと白い光を発し始めた。


 次に冷静。


「落ち着いて……」


 この状況を打開するには。

 そうだ、真正面から受け止めるからいけないんだ。

 タイミングを見て、横にずらせば……。


 そんなこと、できるかな。


 いやいや、最後の心得を思い出せ。

 勇者の心得、三番目。

 それは、勇気。


「やってやるー!」


 そう叫んで、力の限り剣を動かす。

 突然剣が動いたので、ガイオンはバランスを崩した。

 その隙に、剣を胸に突き刺した。


「やったか……!?」


 しかし、倒れない。

 動きは止まったが、倒れない。


「まだ、終わって……ぐわっ!」


 突然飛んできた拳に殴られた。

 僕は地面を転がる。


 な、なんて威力だ。

 めっちゃ痛い。

 いや、それよりやつはまだ生きているのか!?

 立ち上がった僕は、再び剣を構える。


「ん?」


 ガイオンは床に倒れていた。

 きっとさっきのが最後の一撃だったんだ。


「か、勝った……のか?」


「おめでとう! 佐藤君!」

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