第4話 シエラちゃん、どこ?

「シエラちゃーん! どこー!」


 空から探せばすぐ見つかるかなって思ったんだけど……。

 木がいっぱい生えてるから見えないや。


 それに、天気が悪くなってきちゃった。

 今にも雨が降りそう。


 いろんな意味で雲行きが怪しい。


「お嬢さん、見つかったかい?」


「う〜ん、わかんない」


 こんなときは、目を閉じて耳をすませる……。


「シャロール……」


「むっ!」


 今確かにシエラちゃんが私を呼んでた。


「鳥さん、ここで降ろして」


「了解、ここだな」


 鳥さんは森の中にゆっくり降りてくれた。


「俺が必要なときはいつでも呼んでくれよー!」


 そして、また空に飛び立って行った。


「わかったー!」

「バイバーイ!」


 よし!

 もう一度耳をすませてみよう。


「シャロール……」


 やっぱり小さく聞こえる。


「シエラちゃんー!」


「シャロール」


 こっちだ!

 私は声の聞こえた方に走り出す。


――――――――――――――――――――


「シエラちゃんー!」


「シャロール!」


 ここだ!

 私が茂みを抜けると……。


「シエラちゃん!!!」


「シャロール!!!」


 シエラちゃんは私を見つけると、思いっきり抱きついてきた。


「大丈夫だった!?」


「もうダメかと思ったよ〜」


 シエラちゃんはそのまま私の胸の中で泣き出しちゃった。


「安心して、私が来たから」


 私はシエラちゃんの頭を優しくなでる。


「うわ〜ん!」


 シエラちゃん、よっぽど不安だったんだ。

 全然泣き止んでくれない。


 ……そんなに泣いたら私のお洋服がビショビショになっちゃうよ。


 シエラちゃんの涙が私の頭に……。


 違う。


「雨だ!」


「ふぇ?」


「シエラちゃん、あそこの洞窟で雨宿りしよ!」


 このままじゃ、風邪引いちゃう。


「……うん」


――――――――――――――――――――


「雨、止まないねー」


 私達は洞窟の外で激しく降り続ける雨をボーッと眺める。


「グルルルル」


「シエラちゃん!?」


 なんの音!?


「ごめん、お腹すいちゃった」


 恥ずかしそうにシエラちゃんは答えた。


「な〜んだ」


 シエラちゃんのお腹の音か〜。

 びっくりしちゃった。


「早くジャウロン食べたいな〜」


「グルルルル」


「も〜そんなにお腹減ってるの〜」


 シエラちゃん、食いしん坊なんだから!


「これ、なんの音?」


「え?」


 なにって……。


「シエラちゃんのお腹の……」


「違うよ! まだ一回しか……」


「グルルルル」


「「………………」」


 私達は無言でお互いの顔を見つめ合って、ゆっくりと振り向いた。


 洞窟の奥の暗闇から徐々に姿が見えるのは……。


「トカゲ……?」


「ジャウロンだ!」


 これがジャウロン……?


「おいしそう~」


 シエラちゃんはよだれを垂らしている。

 おいしそう……かな?


「グルルルル」


 ジャウロンは私達に近づいてきている。


「……ヤバいんじゃないかな?」


「おいしそう……」


 今のシエラちゃんには何を言っても無駄みたい。


「逃げるよ!」


 私はジャウロンに背を向け、シエラちゃんの腕を掴んで土砂降りの雨の中に走り出した。


 体がすぐにずぶぬれになる。

 しかも、地面はぬかるんでいてとっても走りづらい。


「ジャウロンは……」


 後ろを見ると……。


「追ってきてる!」


 どうしよう、どうしよう!


「お腹がすいて、動けない〜」


 シエラちゃんはヘロヘロだ。

 そんなシエラちゃんを引っ張って走っていた私は……。


「あ!」


 泥で足を滑らせて、転んでしまった。


 泥だらけになった私達は、おそるおそる振り返ってジャウロンを見た。


 もう私達に追いついて、口から長い舌を出し入れして、今にも私達を食べようとしている。


「サミュエル〜!」


 シエラちゃんは大きな声で泣き叫んだ。


「うぅ……佐藤……」


 私も助けを求めて佐藤の名前を口に出した。


「佐藤〜!」


 ……佐藤はここにはいないのに。


 もう……ダ。


「サンダーボルト!!!」


 ドカーン!!


 謎の叫びが聞こえて、雷がジャウロンに落ちた。


「待たせたな、シャロール!」


「え?」

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