6.


駆け戻る主人公が螺旋階段の手すりに飛び登ると、上へ上へと落ちるように流れ滑っていく。


主人公は自分の左肘を見つめながら貴方に語りかける。


「読み飛ばしたのか?」

「まあいい、俺が消さなければならない奴はここにいるはずだ」


主人公の左肘に、床に散っている澄んだ色が集まっていく。

淡く緩やかに主人公が白くあせはじめる。


長く短い螺旋階段を滑り終わると、主人公は足元にある地面の水たまりを見つめた。


どうやら水たまりから小さな粒が産まれて、上の虚空へと落ちていく姿に見入っているようだ。



「おやおやおやおや、また会ったね主人公」


「お前は10の地点へ向かったはずじゃないのか?」


シオリはどうやってか主人公の先回りをしていたようだが様子がおかしい。


シオリが主人公から離れるように巻き戻っている。

それも普通の速度ではない、両者全力疾走している。


シオリは無数の棘を巧に使い、石が転がっていくように走る。


それを後ろ向きに巻き戻って全力疾走している主人公が追いかけている。


「お前が失敗作を生み出した親なのかシオリ?」


「失敗作……なんのことだい?」


「あの物語の結末を辿ったなら全てわかる事だろう」


「内容なんて全くと言っていいほど覚えてないよ」


主人公は突然、屈み始めそのまま寝転び、勢いよく転がる。


ぐんぐんと転がる速度が加速していく。


主人公がシオリの棘に飛び掛かるように巻き戻り、棘に左肘が張り付いた。


「何をしているんだ君は⁉」


「俺じゃない!」


シオリが勢いよく棘を引き抜くと同時に、足元に転がっていた左腕が左肘に吸い寄せられるようにくっつく。


辺りに散乱している澄んだ色が、主人公の左腕を修復するように一片も残さずに集まった。


主人公は完全に白へと色づいた。





「大丈夫かい主人公?痛くないのかい?」


「逆だ、痛みがこの地点に来てから徐々に産まれ、今完全に消えた所だ」


「それは良かったって事でいいのかな?」


「ああ」


立ち止まっていた主人公は巻きもどりはじめ、シオリを通り過ぎる。


「もう行くのかい?私はこの世界の真実を追ってみるよ、君はどうするんだい?」


「俺はこの世界を辿り続ける」


辿り続ける主人公の眼前の雨が上がると、虚空の雲は澄み渡った。

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