妖精女王と交渉決裂

 次の日魔王城から妖精族の元へ行くことになった。そのまま馬車を使っている。


 というか…魔王様と王妃様も伴い魔族の行列ができている!!これから戦争でもしにいくような武装!酔っ払いの兄王子達は二日酔いでうなされ城に残るという。


 フーベルト王子に聞いたら…


「ごめんなギルベルト…何か王妃様がご協力なさってくれるらしいが…交渉がうまくいくは判らない…。何せめっちゃくちゃ仲が悪いんだ」


「そ、そんなにですか?一体何が…」


「そもそも王妃様の口を聞けなくしたのが妖精女王ティターニア様とか聞いた」

 ええええ!大丈夫かよそれ!!


 王妃様が嫌いな筈だわ。ますます判らないが何故そんな事になったのか。


「女の喧嘩は一つしかないよ。ギルベルト…。男だ」


「えっ!?」


「昔…俺が産まれる遥前の事…まぁ俺は側室の子だし知らないがどうもスザンネ様には恋人が居たようだ。しかしティターニア様がその人を拐かして…媚薬を盛り関係を持たれたことにより激怒なさったスザンネ様が妖精族の里に呪いをかけた。


 怒ったティターニアはスザンネ様の口を聞けなくしてなんとか呪いを解いたんだけどそれでもう二人は険悪なんだよ。スザンネ様は恋人が正気に戻っても媚薬なんかで操られた情けない恋人とは別れて魔王様…父上の求婚を受けたとか」


「基本…ティターニア様は気に入った男となら誰とでも浮気し自分のものにするハーレム的な思考の持ち主というか今もそうらしいけどほんと媚薬を使いまくるからなぁ。ギルベルトも気を付けた方がいいぜ?」

 と言う。

 なんて恐ろしい女王だ。

 そう思うとスザンネ王妃様は何も悪くない気がするが呪いを里全体にかけたのは怖い。

 女の嫉妬は怖いと言うが。


「だから今回…一応交渉には行くけど…ティターニア様が納得なさらない場合が多い。そうなるともう力ずくで扉を開けるために戦争になるだろう。なんとかその隙にタカエを返してやることしか出来ない…」

 とフーベルト王子はタカエを見て、静かに聞いていたタカエは俺の手をギュッと握った。


「もうすぐお別れだぞギルベルト…。俺は他の馬車に移るというか…まだ里までは時間もあるし婚約者とイチャついてくるか!じゃっ!頑張って!」

 と馬車から降り叔母さんの所に行ってしまうフーベルト王子。俺とタカエは再び二人になる。


 何を話そう。もう直ぐお別れ…。ともかく戦争になる可能性が高く、俺はその隙に扉を開けてタカエとお別れしなければならない。


「ギルベルトさん…」

 タカエは心配そうな顔だ。


「タカエならきっと帰れる」


「………」

 タカエはボロリと泣いた。


「俺はタカエのことを好きになって良かった…。何というかいろいろありがとうと先に言っておくよ」

 タカエは涙を拭いて


「うん、ギルベルトさんも私が居なくなったらちゃんとお嫁さんを貰ってね…」


「ああ、タカエも向こうに帰ったらきっと恋人ができるさ。こんなに可愛いから」

 と俺とタカエは笑いお互いに深くキスをした。


「タカエ……ごめん」

 と謝ったがタカエは笑った。

 そして俺たちはたった一度だけ泣きながら愛し合う。


 **


 妖精族の里に到着した頃はお互い無言で降りた。


 夜の妖精の里は相変わらずキラキラしていた。

 武装して恐ろしい俺たちを見て妖精達は慌てて逃げた!!


 そして女王の側近であるパックと言う妖精が現れて


「魔族よ!何用か!?ここはティターニア様の城であらせられるぞ!しかも真夜中に訪問とは!朝に出直せ!」

 と言うが魔王様が


「生憎朝まで待てぬ魔族がいてな!話し合いにきたのだ!急ぎ女王に伝えよ!例の扉を開いて欲しい。異世界から来た人間の女を返したいのだ!」

 と魔王様が鋭い眼光で睨みつけてパックは怯えて飛んで行きしばらく待ったら妖精女王ティターニア様が悩ましげなネグリジェを着て現れた。


「おのれ!このような夜中に!無礼な魔族どもめ!ん?若くて綺麗な魔族もいるではないか?」

 と俺を見てニヤついた。

 見た目こそ恐ろしく綺麗な女王だが、スザンネ様よりもババアなことを俺は知っている。


「俺には媚薬の類は効きませんよ?吸血鬼の一族ですから…」

 と念を押しておくとチッと小さく舌打ちが聞こえた。


「扉に関してじゃったな!その女が異世界から来た人間か?」


「そうだ!この者を元の世界に返して欲しい」

 と魔王様が言うとティターニアは鼻で笑い、スザンネを見ると


「いいわよいいわよ?スザンネがここで全裸になり舞を踊ってくれると言うならね?ふふふ」

 と笑ったのでスザンネ王妃が扇子をバキンと折り、折ったものをティターニア様の額にぶっ刺して額から血がドバリと出たティターニア様。


「ぎゃーーー!痛い!!何すんじゃ!このクソ魔女女!!」

 とティターニア様が激怒したがスザンネ王妃様もにこにこしながら物凄い威圧と魔力を解放して空中に魔法陣をいくつも生み出して今直ぐにでも攻撃する体制になった!


「やはり!攻めてきよったのだ!妖精軍よ!迎え撃て!!」

 と指揮を始めた!何とか間に入る俺。


「待ってくださいいいいい!本当にただ扉を開けて欲しいだけです!お願いします!なんでもしますから穏便に!!タカエを返して欲しいのです!!」

 と頼み込むと


「ふむ!やはり好みじゃな、その顔!顔に免じて…お前が死ぬまで妾のハーレム軍団に加わると言うなら扉を開けてやってもいい。なんでもするのじゃろう?」

 とババアが笑いながら言う。この女王が気に入った男を自分のものにするというのは本当らしい。


「そうだ!魔王にその王子達も一緒にハーレム軍団に入れてやっても良い!魔王は顔が怖いから奴隷枠じゃな!給仕でもしてもらうか!」

 と言うとスザンネ王妃様は瞬間移動の魔法を使い消えて女王の背後に周り背中を思い切り蹴り上げ天井に穴を開けた!!!


 ガラガラと崩れる瓦礫からタカエを抱き抱え飛び退いた。


「おのれぇ!妾になんてことを!!スザンネ貴様!殺してくれる!!」

 魔王が通訳で


「スザンネはこう言っておる。このクソ女王。お前みたいな男好きのババアが里を支配しているなんてもう堪忍ならない!引退してもらう!


 全面戦争を開始します!とな」

 ひいいいい!か、開戦した!!


 王妃様がトゲトゲの武器を手に持ちニコニコしている。殺る気だ!!

 交渉は見事に決裂し、ついに戦いが始まった!魔族の軍勢と妖精の軍勢がぶつかりあい激しい戦いになり、俺や家族達は必死に隠れた。


 このままでは朝になる!

 ともかく下へ降りたのだ。地下には木の根がびっしりだ。

 そのうちの根が襲いかかってくるのを俺たち家族は何とか避けたり砕いたりして先に進んだ!そして一際綺麗な扉が光っていた。扉の前に妖精の兵士がいた。


 そいつらを霧になって油断させ殴りつけ一人に聞いた。


「この扉はなんだ!?異世界に通じる部屋か?」


「…ここはっ!女王様と秘密の地下温泉浴場の部屋です!」

 と言った。中を開くと確かに温泉が沸きエミ叔母さんが


「あら、素敵。入ってく?」

 とお祖母様も


「最近腰痛が酷くてね…」

 と少女の姿で言うな!!


「二人ともダメです!タカエをちゃんと帰すんだから!」

 とバンと扉を閉めて今度は兵士に場所を催眠で案内させた。


 少し広い洞窟の奥へ連れられて行き止まりに古い扉を発見し側に強い魔力を感じた。なんと骨が落ちていていた。


「…400年前の魔族の骨です。その向こうのが異世界へ通じる…扉…」

 と言い、兵士は倒れ気絶した。


 骨が立ち上がり異様なオーラを放って変形し、巨大な魔物の思念になり俺たち家族に襲いかかってきた!!

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