夢の中の偽物のタカエ

 最近俺は朝まで起きてタカエの顔を見て眠るので寝不足気味になった。

 タカエが心配する。

 いつも食料調達に行くのでフランツが今日は代わりに行ってくれた。


「早めに休んだ方がいいぞ?ギルベルト」

 と父上も少し心配した。


「判ってますよ父上」


「そうよ?朝なんて待っていたら私は恐ろしくて堪らないわ。もし何か勇者が攻撃してきて屋敷が壊されたら…ああ、ファビアン!怖い!」

 とイチャつく両親。


 タカエも心配した。今はまだタカエの起きていられる時間だからタカエも心配そうにしてくれた。


「大丈夫ですか?確かに顔色が少し悪いような」


「いや大丈夫だ!いつもタカエの血を貰ってるし元気だし!寝不足くらい大したことない!」


「でも朝食なら私一人で作れますから!どうせ私一人分だし!」

 と強めに言われる。タカエが俺を心配してくれている!それに感動しているとフランツが戻ってきてなんとあの…売り子の悪魔女を連れてきた!!



「入口狭あー!!玄関フェイクって!!あ!!ギルベルト様ーーん♡」

 と俺に悪魔の羽を出して飛びかかってきたので思い切り避けたら壁に激突した。


 悪魔女はだらしない格好で肩まで出した服と無理矢理胸を強調したような谷間の見えそうな格好で足はなんと太腿まで出しており品がない。


「痛い!なんで避けるのよ!」

 と頭をさすりながら起き上がりタカエを見ると驚く!


「ぎゃっ!!こ、こいつ人間だ!何!?餌なの?」

 と興奮した。俺はタカエの前に立つと


「餌じゃない!か、飼っている」


「あー…血をあげてるのね。殺しちゃ仕方ないのかあんたら一族は…」


「何しに来たんだ!帰れ!二度と来るな!」

 と言うと悪魔女は


「酷い!弟くんにギルベルト様が寝不足と聞いたからあたしの出番だと思ってすっ飛んで来たのに!」

 俺はフランツを睨んだ。フランツはびくりとした。


「だって事実だもん!僕嘘は嫌だもん!」

 と言い訳をする。タカエのことは秘密にしておきたいのに!この野郎!


「まぁまぁ!夢の中でギルベルト様のタイプの女に化けていい事してあげるから♡さぁ!寝ましょう!」

 とくっ付いて来ようとするから


「俺は一人で眠る!」

 と言うと悪魔女は膨れて


「仕方ないわ!遠隔で夢に入り込んでやるわ!ふふっ!眠ったらこっちのものよね!」


「ふん!まだ朝まで時間あるからな!タカエは眠っていていいぞ!この女は追い出すからな!」

 と言うとタカエは


「じゃあギルベルトさんの安眠を助けてあげてくださいね!最近ほんとに寝不足で辛そうだから!」

 とあろうことかタカエは頭を下げた。

 ええ!?地味になんか嫌だ!!


 タカエは時間になると部屋に入り眠ったようだ。


「あの子寝ちゃったわね」

 と夢魔である悪魔女が言う。人の眠りを感知できるらしい。


「夜だから人間は寝るさ…」

 と俺は相手にせずにいる。

 悪魔女はその様子を見て


「何?ギルベルト様はもしやあの人間に恋してるとか?」

 と言うから驚く。何言ってんだこいつは?


 その時フランツや家族が


「おいおい。ははは!タカエはペットだよ!?」

 と父上が笑い、母上も


「そうよぉ!タカエはペットよ?勘違いしないでほしいわ」


「ともかくタカエはペットだよ!」

 とフランツも言い誤魔化した。魔族が人間に恋をしているというのは馬鹿にされる対象なのだ。


「そうそう、タカエはペットに過ぎない!判ったらさっさと帰るんだな!悪魔女!」

 と言うと悪魔女は


「あたしはリコ!まぁ夢の中を除いたら判るか!」

 と頭にニョキと触覚が生え俺に謎の光線を放ち俺はそれを浴びると恐ろしい眠気が襲いバタンとソファーに倒れた!!


「ギル坊!おのれ!何をしたんだい!可愛い孫に!!」


「お義母様落ち着いて!眠らせただけですわ!」

 とコルネリアが言いスゥスゥと眠る長男を見る。リコは


「じゃあギルベルト様の夢の中に入り込んでいい事してくるううう!」

 とバタンと自分も床に倒れた。家族はその隙にリコを縛り上げておいた。


 *

 あれ?俺は…。

 白いもやの中立ち上がる。

 ん?湯気か?

 誰だ?こんな金のかかる設備を…

 と思ってるとモヤの中から布を1枚巻き付けた魅惑的なタカエが姿を表して俺は驚く!!


「あれー?やっぱり!!やっぱりあの人間が好きなんだ!!あ、あたしはリコよ?夢魔は夢の中でその男性の好きな子に化けれていい事できるの!」

 とタカエの姿で妖艶に笑った。


「ふざけんな!タカエはそんなはしたない格好はしない!」

 と目を背けると後ろから抱きつかれた。


「やめんかい!」

 と投げ飛ばそうとするが姿はタカエで戸惑って投げれない!


「あらどうしたの?ぶん投げたい?ベッドにぶん投げたい?」

 タカエリコがパチンと指を鳴らすと趣味の悪い金のベッドが現れた。


「おい、なんだこのベッドは!金ピカじゃないか!ふざけるな!!こんなの必要ない!売ってこい!金が勿体無い!」

 と言うと呆れたタカエリコ。


「ええー?普通上等なベッドでやりたいけどギルベルト様はもしやギシギシ鳴るボロイベッドのが好きなの?」


「そう言う問題じゃない!帰れ!俺を目覚めさせろ!!」

 しかしタカエリコはにこりとして


「ギルベルト様はこの子が好きなんでしょう?夢の中だから何してもバレやしないわよ?うふふ!さぁ!あたしと一緒に…」

 と手を伸ばすが俺は


「う、うるさい!近寄るな偽物!タカエはそんなことはしないと言っただろ!もっと淑やかで大人しくいい子なんだ!変なイメージを作るな!」


「ふん!そんなこと言ってさ、男なんて女の身体を見せれば一発よ!」

 と布を落とす。

 ひっ!!俺はタカエリコから逃げた!


「ええっ!?嘘!?ま、待ってよーー!」

 と全裸で追いかけてくるタカエリコ。


「ふ、フランツーーー!!だ、誰かーーー!」

 と俺は必死で叫んだ。

 するとタカリコが霞み出した!


「げげっ!嘘っ!?くそー!もう少しだったのにいいいい!」

 タカエは元のリコの姿に戻り消えていく。



 しばらくして汗かいて俺は目覚める。


「兄上大丈夫!?うなされて助けてくれって聞こえたからとりあえずリコを蹴って起こしたんだ!」

 と見るとリコは縛られて頬をぶたれて赤くなり腫れ上がっていた。


「痛い!仮にも女になんてことすんのよ!このバカ力一族!!」

 するとお祖母様が


「孫に手を出そうとしたね?例え夢でも許さないよ?その血を全部啜られたくなかったらさっさとこの家から消えな!小娘!!」

 とお祖母様は赤い目を光らせリコを催眠にかけた。

 リコは立ち上がり術にかかりフラフラと外へ出て飛んで戻って行った。


「大丈夫?ギルちゃん」

 と母上。エミ叔母さんは


「ギル!良かったね!あんたは浮気なんかしないって信じてたよ!流石私の甥っ子だ!偉い!!」

 と何か褒められた。


「夢魔の誘惑に耐えるとは流石だよ。兄上!」

 とフランツもにこりとした。


「だが、夢の中で夢魔が変身したのはやっぱりタカエか?お前寝言で叫んでたぞ。タカエはそんなはしたない格好しないとか!」

 と父が笑い。全員ニヤニヤし出したから俺は初めて赤くなり照れた!


「ちちちちちが、そそ、そんなバカな!!お、俺は俺は別にタカエのことなんかそんなええと!」


「私がなんですか?」

 とタカエが眠そうに起きてきたから心臓が止まりかけた!



「ぎゃーーーーっ!!た、タカエ!!な、何故起きて!?はっ!まさかまた夢魔が化けて!?」


「ええ?お手洗いに起きただけですよぅ…お客さんはお帰りに?」

 と言う。

 フランツはにこりとして


「うん!もう帰ったよ!安心してねタカエ!」

 と言うとタカエは


「??よく判らないけど…ふわぁ…まぁまたお休みなさい」


「「「「お休みタカエ!!!」」」」

 と全員声をかけタカエはまた部屋に戻ったのだった。

 俺はようやく自覚した。

 全員ニヤニヤしやがって!!


「こっち見んじゃねーべ!!こら!!はっ倒すどー!」

 と怒るとフランツが


「うわぁ…兄上の言葉遣いがお金以外で変になった!!!あはは」

 と笑ったのでフランツをぶっ飛ばしておいた。

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